第61話
「・・・そっか。わかりました。お父さんと輝ちゃんのご両親には私から言っておきます」
昼ご飯を食べたあと、俺と葵はおばさんと向かい合わせに座り、自分たちが相談して決めたことを話した
おばさんは静かに俺らの話していることを聞いて、聞き終わるとどこか嬉しそうな顔をして俺たちの方を見ていた
「それじゃ輝ちゃんと葵、これから大学受験、もしくは就職があると思うけど頑張ってね。もし悩んだりしたら2人で支え合っていきなさい」
「「はい」」
「それっじゃ!この話は終わりにして買い物行きましょ!私がなんでもおごっちゃう」
おばさんは自分の財布からプラチナカードを出し、それを上に掲げた
そして、俺は久しぶりに葵の家はお金持ちということを思い出した
俺は外に出る身支度をしに一旦家に戻り、おばさんと葵の身支度が終わるのを待ちながら葵の家を見ていた
この辺の家よりは大きい家なのだが、漫画で見るような豪邸という大きさではない
だけど、普通の家には見えない
豪邸とは言えないけど普通の家とも言えない中途半端な家って感じだ
しかし、葵の家は明らかに金持ち
そんなことを考えていると身支度が終わった2人が出てきて、俺たちは車に乗って買い物に向かった
「輝、さっきなんで家見てたの?」
「いや、葵は本当にお金持ちの子だなぁって」
「そうなのかな〜」
「あら?何言ってるの?輝ちゃんのところもお金持ちよ?」
「何言ってんですか、おばさん。俺の家は普通です」
そういうとおばさんはびっくりしたような顔をして、笑い出した
「もしかして、輝ちゃん自分がお金持ちだと思ったことないの?」
「だって昔ここに住んでたときも普通の家でしたし、父も普通のサラリーマンって言ってますよ」
「あははは、輝ちゃんのお父さんらしいね〜」
おばさんは運転しながら笑い、俺と葵は分からないという顔をする
「輝ちゃん、普通のサラリーマンで息子の1人暮らしにあのマンションは高すぎるよ」
「まぁ確かに広すぎるとは思いましたよ。けど・・・」
「それに毎月私に渡されてる輝ちゃん用お金は多いわよ」
「いくらぐらいですか?」
「な・い・しょ」
おばさんは片目を閉じて少し俺のほうを見るとすぐに前を向いて運転に専念した
それから何度かお金のことを聞いてみたが「輝ちゃんのお父さんにも内緒にしてくれって言われてるからダメ」と言ってこの話は終わり、デパートに向かった
そのあとデパートではやっぱり予想していた通り、俺は荷物持ちとなり修学旅行前のときより女性が1人多い上にお金の使い方が葵とほぼ変わらないという感じで俺が持つ荷物が多くなっていった
「輝ちゃん力持ちね〜」
「前が見えないんですけど・・・」
「輝、私少し持つよ?」
「いや、いいよ」
「もぉ〜ラブラブ見せつけちゃうわね〜」
おばさんはニヤニヤしながら俺と葵のやり取りを見ていて、葵は恥ずかしくなったのかピョンと飛ぶように離れた
「ち、違うよ!お母さん何言ってんの!」
葵は顔を赤くしながら叫ぶと周りの人は何が起きたのかと興味を持ち、俺たちの方を見てくる
「あ、葵・・・目立つからやめてくれ・・・」
「・・・うっ・・・うぅ〜」
見る見るうちに葵の顔はさっき以上に赤くなっていき、周りの人の目から避けるように俺の後ろに隠れた
「うわっ!ちょっと葵、くっ付くなって!バランスが!」
「うぅ〜・・・」
「あら、これはまたラブラブな」
「おばさん!これ以上葵を刺激しないでください!荷物落ちちゃいます!」
「照れ屋さんだね〜輝ちゃんは。しょうがない、もうお昼だし近くのファミレスでご飯にしよっか」
おばさんと俺と俺の後ろにくっついている葵は近くにあったファミレスの中に入って禁煙席に座る
店員さんが来ると俺はスタミナ丼、葵はドリア、おばさんはカルボナーラを頼んだ
「で、いつまで俺の後ろに隠れてるんだ?葵」
「だ、だって・・・」
「もう大丈夫だって。時々子供っぽくなるよな、葵って」
「子供っぽくないもん!ふん!」
「それが子供なんだよ・・・」
「またラブラブしてるの?」
「違う!」
「だから・・・叫ぶなって・・・」
ファミレスの中にいる人は俺たちの方を見ると、葵はまた俺の後ろに隠れた
そして、前ではおばさんが笑いを堪えようと必死だったけど肩がすごく揺れている
「あ、あの・・・カルボナーラの方・・・」
「あ、すみません。ありがとうございます」
店員さんはカルボナーラを持って申し訳なさそうな顔をしながらおばさんの前に置く
そして、俺と葵の頼んだものも無事目の前に置かれて各自食べ始めた
俺のスタミナ丼が半分ぐらい減った頃、横でドリアを食べていた葵が俺の方をチラチラ見始めた
「・・・・食べたいのか?」
「うん。こっちあげる」
「うん」
俺と葵は食べていたものを変えて、それを食べようとすると前にいたおばさんがまたニヤニヤしている
「・・・」
「・・・ふう」
「夫婦みたいとか言ったら荷物持ちませんよ」
何を言おうかわかったため、言われる前に言うとおばさんは驚いたような顔になり、ごまかす
「ふ、ふぅ・・・食べた食べた。あとは輝ちゃん食べてね」
「食べてって・・・あとちょっとじゃないですか・・・」
「私はチョコレートパフェを食べるから、これ以上はダメなのよ。葵も食べる?」
「うん」
「やっぱり食べるなら一番大きいのよね〜」
おばさんと葵は食べているものを俺に回して、2人で仲良くデカいチョコレートパフェを食べる。
結局そのチョコレートパフェも2人は食べられないと言って俺に回してきて、それも食べるとさっき腹の中に入れたカルボナーラとチョコが合体して気持ち悪くなり、家に帰らせてもらった