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第60話

今回は長いです

たぶん今までで一番・・・

すみません(笑)

 次の朝朝ごはんの匂いがして起きると目の前におばさんの顔があった

 

「・・・・・・」

「もう少し起きるの遅かったら襲ってたわよ?」

「・・・・とりあえず離れてくれませんか?」

 

 おばさんの顔は数センチ近くしか離れておらず、目が何かを狙っている感じがしていた

 

「何してるのぉ?お母さんと輝・・・」

 

 声の方を見てみると葵が寝癖で髪が跳ねまくっている頭、まだ眠たそうな顔でこっちを見ていた

 

「輝ちゃんが・・・私を襲ってきたのよ・・・うるる〜」

「何言ってんですか・・・冗談言うならもっと面白い冗談言ってください」

「あ〜ひどい!お嫁さんのお母さまにそんなこと言うんだ、輝ちゃんは!」

「彼女、彼女です!お嫁さんじゃないです」

「何言ってるの?輝とお母さん?」

「気にするな、葵。それよりご飯食べましょうよ、冷めます」

「そうね、そうしましょう。その前に葵、いくら輝ちゃんが彼氏になったからってそんな髪の毛が跳ねたところ見せたら飽きられるわよ」

「ふぇ?・・・・・わ!」

 

 葵はようやく頭が冴えてきて、扉のガラスに映った自分のすごい頭を見て顔を真っ赤にし、走って洗面台に向かった

 そんな葵を見ながら俺はテーブルの椅子に座る

 

「ねぇ輝ちゃん」

「なんですか?」

「さっきの葵、可愛かったでしょ?もうあの場で押し倒したくなるぐらい可愛かったでしょ」

「可愛いのは認めますけど、押し倒したくなるとは思ってませんよ」

「まぁいいけど・・・それより考えた?あの事」

 

 少し不満そうな顔をしたがすぐに母親の顔になった

 “あの事”とは昨日言われた、俺と葵が結婚するということだろう

 俺は話を聞かされたあとよく考えた

 

「俺の中ではもうまとまりましたよ。あとは葵と話すだけです」

「そ。それじゃ話していいのね?」

「はい。お願いします」

 

 おばさんは朝ごはんをテーブルに並べながら嬉しそうな顔をした

 そして扉の方に顔だけ出してこっちを見ている葵をテーブルに座らせる

 葵は椅子に座ってこっちをチラチラと見て、顔を赤めながら話しかけてきた

 

「その・・・さっきは寝ボケてて・・・だから、えっと・・・普段はあんなんじゃないんだよ・・・」

 

 俺はどんな顔をしていたのだろう?

 こいつは何を言っているのだろうという顔でもしていたのだろうか?

 おばさんの方に顔を向けるとキッと睨まれた

 

「えっと・・・可愛かったよ。あんな葵も好きだよ」

 

 特に思いつくこともなかったので、笑顔で素直に思ったことを言った

 すると、ボンッ!という音が聞こえたような聞こえなかったようなよくわからないが、ただ前の葵は首から上がさっき以上に真っ赤になり、そして頭から煙が出ているような感じだった

 

「・・・・きゃーー何々?輝ちゃん!今のは反則よ!葵じゃなくても顔が赤くなるわ!」

「うるさいですよ、早く食べましょうよ」

 

 そのあとの朝ごはんは前でまだ真っ赤な顔をした葵とその横でさっきのことをテンション高く俺をからかってくるおばさんで静かな朝ごはんはできなかった

 朝ごはんが終わるとおばさんは昨日の夜に俺にした話を葵にする

 話を聞いた葵は少し悩んで俺に話しかけてきた

 

「・・・・輝は聞いてるの?」

「ああ。昨日、葵が寝た後聞いた」

「そっか・・・どう思った?」

「それは・・・・」

「輝ちゃんに葵、ここじゃなくて葵の部屋で話せば?私いたら話やりずらいでしょ?私は2人の意見がまとまったら話してくれればいいから」

 

 俺が少しつまっているとおばさんが言ってくれ、俺たちは葵の部屋に向かった

 そして、少しするとおばさんがジュースを持ってきてくれて、すぐに部屋から出ていった

 

「・・・・輝はどう思うの?」

「俺は昨日話してもらったから考えはまとまってるよ。葵はどう思った?」

「私は・・・」

「いいよ、思ったこと言ってもらっても」

「私は・・・したいと思った。輝の誕生日に輝と結婚するのいいと思った」

「そっか」

 

 葵は顔を赤くしながら、でも俺の目をしっかりと見て言った

 そして次は俺が正直に自分の考えを言う番だ

 

「俺は今するのは嫌だ。それは葵のことが嫌いとかじゃなくて、ただ世間一般的に考えて高校3年生同士が結婚するなんてどうかと思うし、それにこれから俺も葵も他の人を好きになる可能性だって捨てられない。

 その時に結婚っていう縛りがあったらお互い苦しい想いをすると思う」

 

 自分のまとめた考えとはいえ葵に直接言うのは辛かった

 俺が、葵が他の人を好きになるというのはあり得ないことだと思いたいけど、可能性としては捨てられない

 俺が涼を失って、涼以外の人を好きになるはずがないと思っていた俺が葵のことを好きになって付き合うというように可能性がある

 

 話を聞いている時の葵はしっかりと俺に見て、しっかり俺の話を聞いていた

 

「だから俺は今、俺の誕生日に婚姻届を出すのは反対。せめて区切り、じゃなくて・・・俺たちがこれから進むべき場所が決まって高校を卒業した時まで俺はこの話は置いておきたい」

「・・・・うん。そうだよね」

 

 葵は少し考えてから頷いてくれた

 

「いいのか?葵」

「うん。輝が一晩考えて出した結果でしょ?私はそれでいいよ」

「そっか、信用されてるのかな?俺は」

「してるよ、だって私の好きな人だもん」

 

 葵は俺の方を見ながら笑いかけてきて、それは今までとは違う大人な感じの笑い方で俺はドキッとして、顔が赤くなっていくのがわかって葵に気づかれないように葵の頭を自分の胸に寄せた

 最初は葵もビクっとしたがすぐに後ろに手を回してきた

 

「それにしても急だよなぁ・・・」

「だね」

「お互い困った親を持ったなぁ」

「あはは、そうだね。でも私はよかったよ。お母さんとお父さんの間に生まれて。

 だって輝と出会えたし、それにお母さんとお父さん居なかったら今頃私はどうなってたか分からないもん」

 

 葵は顔だけ俺の方を向いて、どこか懐かしむような顔をしていた

 

「輝がここから引っ越した日覚えてる?」

「ああ〜そういや葵、来てなかったよな、見送り。おばさんは風邪で寝込んでるって言ってたっけ?」

「私ね、あの時本当はこの部屋のベッドの中で泣いてたんだ」

「そうなのか?」

「輝は気付いてなかったけど、私は・・・ううん、あのときから好きだったんだよ」

「あのときって?」

「5〜6歳の時、私の家族と輝の家族で花火大会行ったの覚えてる?」

「5〜6歳・・・ん〜」

 

 なんとなく覚えている

 確かその頃の葵はいつも俺の後ろについてくるような子だった

 花火大会のときもいつも俺の後ろについてきて、いろんな出店に回ったのを覚えている

 

「あの時、私迷子になったの覚えてる?

 人ごみの中で輝の後ろ姿を追いかけてたらいつの間にかその後ろ姿が無くなってて必死で探したんだよ。

 そしたらたぶんあの人はボランティアだったんだろうね、その人に声かけられて私凄く怖くなったの。どこかに連れて行かれるってさ。

 だから捕まらないように一生懸命走ってて気がつくと、店が並んでいる場所から離れちゃってて、そこは真っ暗で・・・私泣いてたんだ。もうお母さんにもお父さんにも輝にも会えないって思って・・・」

 

 俺はどんどんあの時のことを思い出してきた

 あの時、出店を回っているといつも後ろにいた葵が居なかった

 俺と俺の両親、葵の両親がパニクッてすぐに本部に走っていき、葵を探してくれと親たちが係員の人に迫っていた

 そして俺は気がつくと人ごみの中を走って葵を探していた

 

「あの時は本当に私、輝たちにもう会えないと思ったんだよ。

 今思えば、出店の方に行けばよかったんだろうけどさ・・・怖かったし立てなかった。

 本当の時間は少しだったかもしれないけど私には本当に長く感じたんだ。

 だけど・・・輝が来てくれた、私を見つけてくれたとき輝が私に言った言葉覚えてる?」

「いや・・・覚えてないな」

 

 俺は人をかき分けて葵を探していた

 知らない人に聞いたり、出店のおじさんに聞いたりと小さな俺なりに必死だった

 そして、人ごみの中を走って葵を探していると葵の呼ぶ声が聞こえた気がしたのを思い出した

 絶対聞こえるわけがない葵の声を信じて俺はその声が聞こえた方向に走った

 

「“やっと見つけた、ごめんね葵。これからは僕がいつも横にいるからそんなに泣かないで。ほらっ行こうよ、今度はちゃんと手を繋いでおこうね”って言ったんだよ」

「なんか恥ずかしいな・・・小さい時の俺」

「ううん。私は凄い嬉しかったよ、輝が王子様に見えたんだから。

 その時、小さいながらも私は輝の事が好きだったんだと思う。ただその気持ちが恋って気がついてなかったけどね。

 だけど、輝が引っ越す日になった時、花火大会からずっと横にいてくれていた輝が居なくなるって思うと心臓がキュッって締め付けられるような感じがして初めて輝のことが幼馴染として好きだったのが異性として好きだって気がついたの。

 近すぎて気がつけなかったのかな、あはは。」

「そうなんだ・・・それからはどうだったんだ?」

「それからは学校行っても面白くなかったし、家に帰ってもベッドで泣いたりしてひどかったね。翔は心配してたよ・・・それに気がついてたんだと思う、私が輝のこと好きだって。

 だから翔、私の前では輝の話は絶対しなかったなぁ。

 それで私は輝の事を忘れるために勉強を頑張ったの、勉強している間は集中できたし、輝のこと思い出さずにすんだから」

 

 だから葵は今みたいな優等生になっていった

 それは俺のことを忘れるために。

 俺はその頃、空たちと出会い、そして涼と出会い涼に恋をして付き合って、そして涼を失って心のどこかに大きな穴を感じていた

 

 

「輝がこっちに帰ってきたことをお母さんから聞いた時はビックリしたよ。それに嬉しい気持ちとやっと諦めがつきそうだったのにって思った。

 だからすぐ会いに行きたくなかったんだよ。だけど次の日には輝から話しかけてきて、それに同じクラスになって・・・でも輝はすぐに私だって気がついてなかったけどね〜」

「うっ・・・あれは・・・その・・・ごめん」

「あはは、翔のことは覚えてたのに私のこと忘れるってどういうことよ!って怒ってたんだからね。」

 

 葵は俺の胸を何度か叩いてきたがすぐやめて、再び後ろに手を回して顔だけこっちに向けてきた

 

「・・・でも嬉しかった、また輝に会えたって泣きそうになった」

「そっか・・・ごめんな、すぐ葵って気付いてやれなくてさ」

「ううん。それに輝は私をまた暗い所から助けてくれたしね、あの時は本当に悲しかったし自分のことが嫌で嫌で仕方なかったよ」

「・・・嫌がらせのときか?」

「うん・・・でも輝が来てくれた、私に泣いていいって助けてやるって言ってくれたときは本当に輝のこと好きでよかったって思ったんだよ」

「そっか。よかった、泣かせておいて」

「・・・バカ・・」

 

 冗談ぽく言ってみると葵は顔を赤らめて可愛く一言言ってから顔をそらした

 しかし、すぐこっちに向いて笑いかけてくる

 

「これからもよろしくね、輝」

「ああ。こちらこそよろしく、葵」

 

 俺が涼のことで悩んでいたとき、葵は俺のことで悩んでいた

 どっちが長く悩んでいたなんて関係ない

 俺も葵もどっちも深刻な問題だった

 だけど俺たちは立ち直った

 俺は涼の約束と空の存在があったから、葵は勉強と翔・優美の存在があったから

 そして、俺と葵は再会し翔たちには言えない涼のことも葵は静かに聞いてくれ、俺が泣いているときもそばにいてくれた

 いつから葵のことが好きになったなんて分からない、だけど今は涼と同じくもしくはそれ以上に葵のことが好きだ

 

 だから大切にしたい

 もちろん今すぐ結婚したいとは思うけど、やっぱり人と違う道にはそれなりの困難がある

 その困難に立ち向かうにはまず高校生の仕事をやり終えてからだと俺は思う

 だから俺と葵は高校を卒業するまで婚姻届のことは置いておくという決断をした

 

 

 

 

 

 


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