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第59話

 俺と葵は少し長い階段を下りる

 その間俺たちは無言だったが、手は繋いでいた

 

 階段を下り終わり少し歩くと、この前と同じように空が待っていた

 

「今日は2人で来たんだな」

「わかってたくせに」

「まぁな。どうだった?」

「うん。笑ってた」

「そうか」

 

 空は自分の車の後ろ扉を開け、俺たちを入れる

 

「葵ちゃんだっけ?ありがとうね、ちびすけに手合わせてもらって」

「あ、いえ、私も会ってみたかったですし」

「そっか、あと俺の彼女から“あの時はごめんね、謝って済む問題じゃないけど、とりあえずごめん”だってさ」

「・・・?」

「あれ?輝言ってないの?」

「あ〜言うの忘れてた」

 

 葵に昔嫌がらせをしてきた女の子は空の彼女になったと説明した

 葵は思い出したのか少し落ち込んでしまった

 

「そっか・・・私、輝を死なしそうになったんだよね・・・」

「そんな落ち込むなって、それにあれだけじゃないだろ。お前の料理食べたときも死にそうになってる」

「ひどい!頑張って作ったのに!そりゃ確かに味付けはひどかったかもしれないけど、最近はちゃんとした味になるんだからね!」

「でも、食えたもんじゃないだろ」

「ひどい!絶対びっくりさせてやるんだから!」

「ぷっ・・・あはははは〜」

 

 前で運転している空が我慢できなくなったのが爆笑し、葵は顔が真っ赤になった

 それから葵は拗ねてしまい、家に着くまで外の景色を見て俺が話しかけても反応しなかった

 

 

 

「送ってもらってありがとうございました」

「いいよ。それじゃ輝じゃあな」

「じゃ」

 

 葵の家の前で下してもらって空の車は去っていった

 俺はまだカギを返してなかったので、葵と中に入る

 

「ただいま〜」

「おかえり〜って輝ちゃんもどうしたの?」

「カギ返しにきました」

「そうなの。それじゃご飯食べて行きなさい。お父さんももうすぐ帰ってくるから」

「そうさせてもらいます。おじゃまします〜」

 

 ちょうどお腹も減っていたのでおばさんの言葉に甘えてリビングに向かう時に、後ろから小さな声がした

 

「私のご飯は食べられないのにお母さんのご飯は食べるんだ」

 

 まだ葵は根に持っていたらしい。

 これはあとで何かしないとずっと根に持っていそうだ・・・

 

 

 俺はとりあえずリビングに上がり夕食ができるのを待った

 数十分後におじさんも帰ってきて、夕食を食べる

 

 食べている間、葵は俺の方をじーっと見ていて何か不気味だった

 

「なんだよ・・・葵、こっちじーっと見て」

「なんだ?輝くん、葵と喧嘩したのかい?」

「いやしてないですよ」

「まぁ喧嘩するほど仲がいいっていうしな」

「いやだから、してないですって」

 

 おじさんはビールを飲みながらご飯を食べる

 俺の話は聞く気がないみたいだった

 俺は野菜炒めを食べる

 

「輝・・・今食べてるのおいしい?」

「これか?うん、おいしいよ」

「ほんと?」

「ああ。さすがおばさんって感じだよ」

「ほんとに?」

「ほんとに」

「ほんとにほんと?」

「しつこいな・・・おいしいよ」

 

 そういうと葵は嬉しそうにおばさんと手を叩いた

 

「え、何?これ葵が作ったの?」

「えへへ〜すごいでしょ〜」

「葵、輝ちゃんにトイレ行かれてからすっごく努力したんだよ」

「輝くんはいい嫁をもらうな〜」

 

 信じられなかった

 今まで普通に食べていた野菜炒めの他にもみそ汁なども葵が作ったという

 味はよく味わってみるとおばさんには劣るがおいしかった

 

 よく話を聞くと俺が吐いてから味付けを1人で研究していたらしい

 どのぐらいの調味料を入れれば普通の食べられる味になるのかを測ったりして、それはもう研究という言葉が合う感じだったらしい

 

 

 夕食も終え、皆でコーヒーを飲んで話をする

 時々、お風呂に入ったりと人が抜けるが深夜辺りまで話していた

 そして、葵が眠たいので寝ると言って自分の部屋に行った

 

「俺もそろそろ帰りますね」

「あ!忘れてたわ。輝ちゃんちょっと待って」

「なんですか?」

 

 おばさんは手を叩いて嬉しそうにカバンの中から封筒を出してきた

 

「じゃじゃーん」

「なんですか、それ?」

「あ〜それか」

 

 おじさんは何かわかっているらしく笑顔になりおばさんとアイコンタクトをしている

 

「これはね〜はい、どうぞ」

 

 おばさんから封筒を渡され、その中を見ると俺は言葉を失った

 

「・・・・・・」

「驚いてるね〜」

「だな。ビックリ作戦大成功だ」

「そうだね〜」

「い、いやいやいや、なんですかこれ?」

「何って・・・婚姻届だよ?」

「それはわかってますよ。なんで?」

「なんで?ってそりゃね〜」

「ああ。輝くんだって承諾したし」

 

 おばさんとおじさんはニヤニヤしながら俺の表情を見ている

 

「あっわかった!。今日エイプリルフールだからこんな嘘ついてるんですね」

「何言ってるの?もう4月2日だよ」

 

 さっきまでニヤニヤしていたおばさんにまじめな顔で答えられた

 

「でも、俺まだ17ですし・・・」

「輝ちゃんが18になった日に出せばいいんだよ。もしかして葵と結婚する気ないとか?」

「い、いやそれは・・・けど、まだ学生だし」

「私たちだって大学生で結婚したわよ?」

「そうだったなぁ」

「いや、世間的に・・・」

「やっぱり葵と結婚する気ないの?」

「いや!だから・・・まだ俺も葵も学生の身で結婚とかいう話は世間的に珍しいから色んな目で見られると思うんですよ。だからもうちょっと真剣に・・・」

 

 大学生で結婚は聞いたことはあるが高校生で結婚はあまり聞いたことがない

 いくら付き合っているからと言ってまだ高校生の身で結婚は世間的にどうかと思う

 

 するとおじさんが珍しく真剣な顔をして俺に話しかけてきた

 

「輝くん、確かに高校生で結婚はおかしいよ、でもそれは世間一般的にだ。お互いが結婚してお互いこれから死ぬまでずっと支え合えると思えて法律で決められた年齢を超えていれば結婚してもいいんじゃないか?それに輝くんと葵は少し離れたけどもう10年近く一緒にいるじゃないか」

「そうですけど・・・俺まだ就職する気無いですよ」

「そりゃそうだろ。そんなことは頼まないよ、私たちは葵が幸せになってくれればそれでいいよ」

「・・・・・・」

「輝ちゃん、そんな悩まなくていいわよ。これは私たちとあなたの両親が勝手に決めたこと。だから最終決定権はあなた達にあるわ。だから葵にもこのことを明日言うよ、それで2人で話し合えばいい。何年先とかそういうのをね」

 

 おばさんとおじさんは俺に笑いながら言ってきたが、その眼には俺にどうしてほしい、何してほしいとか色々な意味が隠せずに出ていた

 

「・・・・そんなこと言われたら何も言い返せないです」

「そうかしら?まぁ明日葵話せばいいわ。今日はもう遅いし家に泊まっていきなさい」

「・・・そうさせてもらいます」

 

 

 そう言って俺はお風呂を借りて、リビングのソファをベッド代わりに寝かせてもらった

 

 

 


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