第57話
新しい季節
冬のような寒い感じでもなく、夏のように熱いわけでもない
寒い季節からようやく出て、桜が咲こうとしていた
「今日って4月1日だっけ?」
「そうだよ」
「そっか。俺らももう3年だなぁ」
「そうだね。高校もあと1年居られないんだね」
「だなぁ・・・」
俺と葵は2人で町を歩いていた
今日は俺の我が儘で少し遠くまで行くために駅まで歩いていた
「今日はどこに行くの?」
「内緒。俺についてきたらわかるよ」
葵にはまだ行き場所を教えず、駅で切符を買って電車に乗る
「でも珍しいね。輝から誘うなんて」
「そうか?」
「そうだよ。だってクリスマスのときだって私から誘ったでしょ?」
「あれは・・・まぁそうだな」
クリスマスのときは誘ったというより、偶然お互いが相手をびっくりさせるためにクリスマスプレゼントを買いに町まで行ったらバッタリ遭遇してそのままデートに発展していったと言ったほうがいい
俺は葵が誘ったことにしておいて、俺たちは電車の中で話を続けた。・・・が1時間もすると、葵は眠ってしまった
「葵、下りるぞ」
「ん・・・うん・・」
目的の駅について横で寝ていた葵を起こし、外に出る
「輝・・・ここどこ?」
「ん〜俺の思い出の場所」
「思い出の場所?」
「そ。とりあえずなんか買っていこう」
俺と葵は少し歩いてデパートに入る
「何買うの?」
「とりあえず・・・甘いものと花」
「甘いものと花?誰かに会いにいくの?」
「まぁそんなところ」
葵は意味がわからないっと顔に書いてあるような顔で俺の後をついてくる
俺はデパートの中で、おはぎとビン牛乳と花を買う
「おはぎとビン牛乳?なんか合いそうで合わなさそうな・・・」
「あはは、俺もそう思う。ほら、行くぞ〜葵」
「待ってよ」
デパートから出て次にバスに乗って一番後ろの席に座った
バスの中は俺たち以外お客は乗っていなかった
「ホントにどこまで行くの?」
「内緒だって。あと59分もすれば着くから」
「59分って1時間もここからかかるの?」
「遠いからな。寝ててもいいよ」
「さっき寝たからいいよ」
葵は窓から外の景色を見ながら、時々思いついたように俺に話しかけてきた
俺はそれに答えながら、春らしい空を見ていた
その間、俺たちを乗せたバスは俺たちが目指す場所へと運んでくれていた