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第55話




 今年も今日で終わりだ

 

 俺は別にやることがなく、コタツの中に入りながらテレビを見ていた

 テレビでは、あと何時間で○○年も終わりです。などと言って盛り上がっている

 

 正直、年が明けようが明けまいがどうでもいい

 どうせその時が過ぎて、3日も経てば去年と同じいつも通りの生活が続くだけだ

 

 12時が過ぎて昼ごはんも食べる気がせず、俺はコタツに入りながらゴロゴロしていると家のドアが開いた

 そして、葵が入ってくる

 

「あれ?カギかかってなかった?」

「忘れたの?輝、私に合鍵くれたでしょ?」

「あ〜そういやそうだったな。どうしたの?」

 

 そういばこの前、クリスマスプレゼントで“ほしいものは何か?”と聞いたときに葵は「輝の部屋の合鍵がほしい」と言って腕時計と合鍵をプレゼントした

 

「えっと、あの・・・なんかお母さんが、しばらく輝の家でイチャイチャしてきなさいって言って追い出されたの」

「ふ〜ん。またなんか企んでるんだ・・・おばさん。まっとりあえずコタツ入れば?」

「うん」

 

 葵は俺の横に座ってコタツの中に入り、持ってきたカバンの中からライトノベルを取りだし読みだした

 

「それ、おもしろい?」

「うん。読んでみる?」

「ん〜今はいいや。まだ借りた本読み終わってないし」

「そっか・・・」

 

 葵は本のページをめくり、次の文を読む

 俺はその横でテレビを見ながら時間をつぶした

 

 

 

 次に気がついた時にはもう外が真っ暗になっていた

 そして横には葵がライトノベルをまだ読んでいた

 しかし、読んでいる本はシリーズ系なのかタイトルが少しだけ違う

 

 俺は洗濯物を取り込んで、畳む

 すると携帯がピカピカと光ってメールを受信していることを教えてくれていた

 

 メールは3通あってその相手は翔と優美、そして葵のおばさんだった

 翔と優美の内容まったく同じで

 

 −明けましておめでとう。明けたすぐにはどうせ届かないから先に言っておく

 葵と仲良くね〜−

 

 だった

 

 そして、おばさんのメールの内容は今すぐ家に来いという物だった

 

 しかしそのメールが来てからすでに2時間以上経っていた

 

「葵、携帯にメール来てないか?」

「・・・・・」

「葵〜」

「・・・・・」

 

 葵の集中力がすごいのか、それともそれほど面白い本なのか分からないが完全に小説の世界にのめり込んでおり反応がない

 俺はしょうがなく、葵の耳を掴む

 最近気がついたんだが葵は耳が弱いらしい

 葵はビクっと跳ねて顔を真っ赤にしながらこっちに振り向いた

 

「な、な、なに?」

「メール来てないか?おばさんから」

「メール?あっ優美達からも来てる。お母さんからは・・・輝と帰って来いだって」

「それじゃ行こうか」

「うん」

 

 俺は葵に手を差し出し立たせ家を出る

 葵の家までは手を繋いで歩き、そのまま家の中に入っていく

 

「ただいま〜」

「おじゃまします」

「「「「おかえり〜」」」」

 

 俺と葵が家の中に入ると4人の声がした

 そして俺は驚く

 2人は葵のおばさん、おじさんだったが、あとの2人は俺の親だったから

 

 今年は海外に行かないと言って、会わないつもりだったうえに今年は忙しいと言っていた父がそこにいたからだ

 

「なんでここにいるのさ」

「そりゃ輝と葵ちゃんが付き合ったって聞いて帰ってきたんだよ。いや〜嬉しいね〜早く孫の顔が見たいわ」

「ホントホント、早く作ってほしいわね〜」

「孫かぁいいなぁ・・・早く作れ輝」

「そうだぞ。輝くん頑張ってくれ」

 

 4人はすでに酒を飲んでいるのかいつもよりテンションが高い

 

 

「輝行くよ!!」

 

 俺と葵は俺の手を引いて、玄関から逃げるようにリビングに向かう

 

 

 それからは6人で楽しく話し合いながら夕食を食べて、年明けまで俺は父とおじさんにお酒を飲まされ、葵は母とおばさんに何か話していた

 

 そして、年明けまであと30分となる頃には、久々に会った父とおじさんは話が意気投合しお酒のペースが速くなったのかベロベロに酔い、母とおばさんはまだ葵と話していた

 

 俺はリビングから父親たちにバレないようにコートを持って、家の庭に出て置いてある長椅子に座り月を見ていた

 すると家の中から「ハッピーニューイヤー」という叫び声がして年が明けたことがわかった

 

「輝、横いい?」

「ん、ああ」

 

 上を見ていたせいで気付かなかったが、いつの間にか葵が横にいた

 俺の返事を聞くと俺の横に座り、一緒に月を見上げる

 

「月綺麗だね」

「そうだなぁ」

「・・・・・」

「・・・・・」

 

 しばらく空を葵と見ていると、葵が寒そうに体を震わせた

 

「寒いのか?」

「ううん。大丈夫」

「パジャマだけじゃ寒いだろ、ほら」

「わっ」

 

 外の温度はたぶん5度、もう少しあるかもしれないが風が少しあるので寒く感じる

 そんな外なのに葵の格好は冬用のパジャマだけで下は裸足にサンダルだった

 だから俺は着ていたコートを葵に渡した

 

「あったかい・・・」

「さっきまでの格好が寒すぎるんだろ」

「だって気がついたら輝いなかったんだもん」

「あのままじゃ潰されかねなかったからな」

「あはは・・・・輝、寒くない?」

「寒い・・・カッコつけたけどかなり寒い」

 

 俺はコート以外もってきてなかったので今の状態はコートを着ていなかった葵とほぼ同じ上下スウェット

 だから、すごく寒かった

 

「中入ろう、このままじゃ俺凍え死ぬよ」

「うん」

「あ、葵。ちょっとタンマ」

「何?」

 

 俺と葵はこっちを向いたときに、長めのキスをした

 最初は葵もびっくりしたような顔をしたけど、すぐに目を瞑る

 

 

「・・・今年初めてのキスだね」

「だな。今年もよろしく」

「うん。よろしくね」

 

 お互い笑いながら手を繋いで家の中に戻ろうとするとドアの隙間からニヤニヤしている2つの顔がこっちを見ていた

 

「見ました?」

「ええ。見ました」

「キスしてましたよ」

「してましたね」

「もう結婚ですね」

「ええ。輝をよろしくですわ」

「いえいえ。葵もよろしくですわ」

 

 2人はいつもと違う口調でドアの隙間から顔が消えた

 そしてすぐに笑い声が聞こえ、今後はどうするか?など話し合いだした

 

 もちろんこの後、俺たちが大人たちのおもちゃにされたのは言うまでもない

 

 

 

 

 


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