第53話
「はぁ・・・寝れない・・・」
飛行機が大雪で止まってしまって空港内で泊まることになった
空港側からは毛布が配布されて、俺と葵はそれをもらって寝ようとしていたのだが、場所が場所なので俺は寝れずにいた
「んん・・・どうしたの?」
「あ、ごめん。起こした?」
「ううん。寝れないの?」
「ああ。なんかなぁ」
なんで寝れないのかは自分でもわからない。ただ頭が冴えてしまっている
「ふぁぁ〜」
「寝ていいよ。俺のこと気にするな」
葵は小さなあくびをして目が眠たそうだが、俺のために頑張ってくれているみたいだった
「ううん・・・大丈夫・・・」
「そうか。まぁ眠くなったら気にせず寝て」
「うん」
それから数分すると葵は再びぐっすりと眠り、俺はその横で窓から見える景色を見ながらその夜を更かしていった
そのうち、窓から見える景色が少しずつ明るくなっていくのがわかり、それがまた綺麗だった
そして、ようやく空が明るくなり出した頃に睡魔が襲ってきて俺は寝ることができたのだが・・・
1時間少し経ったかそのぐらいに起こされ、頭がちゃんと動かないうちに飛行機に乗せられ、俺たちの修学旅行が終わりを告げた
1週間ぶりの学校に戻ってくる頃には俺もしっかりと頭が働いていて、たった1週間いなかっただけなのにすごい懐かしさを感じた
「それじゃ冬休み明けるまで元気でな」
「そっちもな」
「ばいば〜い」
俺たちは翔たちと別れを告げて家に向かって歩き出す
その間も俺と葵は手を繋ぎながら歩くのだが、人が見えると葵は手を離してしまう
そして、人が見当たらなくなると再び手を繋ぐ
付き合ったとしても、まだ人の前でも手を繋ぐのは恥ずかしいのだろう
そんなことを考えながら葵と歩いていると俺の家に着いた
「それじゃまたな〜」
「………」
「どうかしたのか?葵」
「ううん。何でもない。バイバイ」
「・・・・家来るか?」
「うん!」
なんとなく雰囲気に任せて聞いてみると、葵はびっくりしたような顔をして嬉しそうに頷いた
そして、家の中へ一緒に入り適当に修学旅行のことを話していると外は暗くなっていた
「うわ、もう7時じゃんか。おばさん心配してるんじゃないか?」
「ホントだ。帰らなきゃね」
「おぅ。んじゃまたな」
「うん。ばいばい」
葵を玄関まで送り、扉を開け廊下に出たときに俺は葵を呼び止め、振り向き様にキスをした
「・・・・その・・・なんだ・・・ごめん」
「ううん。・・・もう一回・・・」
俺は葵の言う通りにもう一回して葵は家に帰っていった