第50話
ホテルの近くまで来ると葵は下してくれと言ってきて、背中から下し手を繋いでホテルに向かった
そして、そのまま俺たちは自分たちの部屋に戻っていく
「それじゃ、また明日」
「うん。またね」
なんとなく自分から部屋に帰るのは嫌だったから、葵が行くのを見てから帰ろうとしたのだが、葵はなかなか自分の部屋に帰ろうとしない
むしろ、考えていることが同じなのか、向こうも不思議そうな顔をしていた
「あ〜ぁ、冬の北海道なのに熱いね〜」
「もう40度ぐらい出てるんじゃない?熱すぎだよ〜」
今もっとも見つかりたくない2人に見つかってしまった・・・
その2人はニヤニヤしながらこっちに近づいてくる
「お熱いよ〜翔〜。ここの暖房おかしくなっちゃったのかな?」
「そうかもな〜。あっでもここだけ熱いのかも」
「あれ?なんかこの人たちに近づくと熱くなっていくよ?」
「ホントだなぁ。もう熱すぎるな〜」
「うっせぇよ。お前ら」
すぐそばまで来た翔と優美はムカつくような顔で笑っている
「葵、先生がなんか呼んでたよ」
「そうなの?」
「うん。体調のことだと思う。行ってきたら?」
「うん。わかった、ありがとう優美。それじゃ輝またね」
葵は手を振ってから、足早に先生たちの部屋へ行った
そして、俺はそれを見届けて自分の部屋に帰る
「はい!ちょっとこっちまでついてきてくださ〜い」
「んだよ!離せ!」
部屋に戻ろうとすると、翔と優美は俺の両脇に立って腕を掴み、そのままロビーから少し離れた椅子に座らされた
「なんだよ!部屋に帰らせろよ」
「いやいや、これは聞きたいことがあるからね〜。葵の親友としてさ」
「そうそう。葵の幼馴染としても」
翔と優美は俺の前の席に座って、身を乗り出して優美が小声で話を進める
「それで?2人でどこいってたの?それに何?あのラブラブな雰囲気」
「一気に質問するなよ・・・」
「話をそらすな」
優美はなんとか話を変えていけば避けれると思ったのだが、翔はそういうわけにはいかない
「わかったよ・・・言えばいいんだろ・・・」
俺は諦めがついて、さっきのことを話す
もちろん、キスのことは言わずに
「へ〜、まぁなんとなくわかってたけど、輝が告白ね〜」
「いいんじゃないか?お似合いだろうし」
「そりゃどうも」
翔と優美は嬉しそうに話を聞いてくれていたが、少し時間が経つと優美が真剣な顔した
「でもね、輝。これからがシンドイと思うよ」
「なんで?」
「相手が人気者。ましてや学校のアイドルでファンクラブまで持ってる子だからね」
優美が真剣な顔で俺に話しかけてくる間、翔は少しだが辛そうな顔をしてる
「私も翔と付き合い始めはいろんな嫌がらせをされたよ・・・まぁ輝は私たちとは違ってもうベストカップルとして言われているけど、それでも悪質な嫌がらせは来るよ。きっとね」
「・・・・」
「それに私たちとは違って、葵の方に行く可能性が高いと思う」
「ちょ、ちょっと待て!なんで俺にじゃないんだよ、ファンクラブもってるの葵の方だろ?」
「だって輝はもう最強とか言われてるし、そんな人に嫌がらせなんてしたらお返しが怖いじゃん。お返しする・しないにかかわらず。それに輝のファンクラブのほうがヤバいもん」
「・・・・俺にファンクラブなんてあったのか?」
最初の方はなんとなくわかる気がする。
クラスメイト以外の男子にはちょっと避けられてるって感じがしてたから
でも、俺にファンクラブがあったのは初耳だった
「まぁ知らないだろうな。たしか、文化祭ちょっと前のときぐらいからあったんだよ。な、優美」
「うん。人数は少ないし、隠れてるからね〜」
「知らなかった・・・」
「まぁ今はそのことが問題なんだけどね」
「どういうことだ?」
優美は翔のほうを見ると翔が説明して出した
そして、その内容は
俺の少人数のファンクラブのトップは、昔葵に対して嫌がらせをしていた“岡村由美”らしい
あの事件以降、隠れていたらしいが、俺の熱狂的ファン?を集めてファンクラブを創立
だから、俺と葵が付き合ったってことを知れば、それをネタに葵を嫌がらせし岡村由美は俺に復讐するつもりだろう
という話だった
岡村由美が俺への復讐をしようが別にどうだっていい
だけど、それに葵が関わってくるとなると問題だ
「まぁ時間が経てば俺たちみたいになるよ。それまで俺たちもサポートしていくからさ」
「うんうん。なんかあったら私たちに話してよ」
「ああ。そうさせてもらう」
俺は席を立って2人に礼を言ってから部屋に帰る。
こいつらが友達でよかったと思いながらも、俺は葵が嫌がらせをされるかもしれないことに恐怖と怒りを感じた