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第49話

 告白をした帰り道、俺は葵と2人で手を繋ぎながら帰る

 時々、手を繋いだりしていたが、今回は「恋人」という関係で手を繋いでいる

 これは涼のとき以来だ。

 やっぱり好きな人と手を繋ぐのはいいのかもしれない

 

 少し手に力を入れると葵も手に力が入れてくれ、ちゃんと繋いでいるという安心感があり、そして手を繋いでいるだけでお互いが通じ合っているという感じになる

 

 俺と葵は会話というものはしなかったが、別にやらなくてもよかった

 手を繋いでいるだけで十分だった

 

 しかし、しばらく歩いていると急に葵が腕に飛びついて来た

 

「うわっ。な、なんだよ。ビックリしたじゃんか」

「だ、だって・・・なんか人影が見えたんだもん・・・」

「何言ってんだよ・・・はぁ・・・」

「う、嘘じゃないよ・・・ほら、あそこ」

 

 葵の指した方向を見ると、確かに何か見える

 

「い、いやいやいやいや・・・季節はずれだろ」

「で、でもぉ・・・うぅ〜・・」

「大丈夫だって、なんかの見間違いだって」

「でも、こんな時間にこんな所で人いるのおかしいよ・・・」

 

 葵の言うこともわかる。

 確かにもう夜だし、周りに人の気配がしない

 

「うぅ〜・・・あっ今動いた・・・やっぱり・・・」

「だから、無いってそれは・・・確かめて来てやるよ」

 

 俺は葵を離して、人影らしきもののところに行こうとした

 が、葵は再び飛びついてきて、歩けなくなる

 

「だ、だめだよ・・・置いていかないでよぉ・・・」

「わ、わかったから、ちょっと抱きつきすぎだって・・・それに・・・・」

 

 ギュッっと抱きつかれていて歩くこともできない

 それに、肘辺りに柔らかい感触も感じる

 

「あ、う・・・うぅ〜」

 

 葵はそのことに気がついたのか顔が赤くなっていく

 

「ほらっゆっくり行くぞ」

 

 俺は葵を離れさせてから、手を繋ぐ

 そして、目的の物を確認するために恐る恐る近づいていった

 

「うぅ〜やっぱりやめようよ・・・憑かれるかも・・・」

「怖いこと言うな。それにここ通らないと帰れない」

 

 俺と葵はゆっくりとだが、近づいていくと俺はあることに気がついた

 だけど、葵は目をつぶっていてそのことには気がついておらず、俺に手を引かれながら歩いている

 その姿が面白く、ちょっとビックリさせようと葵にイタズラをした

 

「う、うわ〜葵見るな!見ちゃダメだ!絶対に!」

「えっ!な、なに!きゃーーーーー」

 

 俺は“見るなと言われた者はどうしても見てしまう”という人の心理を利用して、葵に目を開けさせ、そして目を開けると下から懐中電灯で照らされた俺の顔が出てくるというイタズラをした

 

 俺のイタズラに見事引っかかった葵はその場に崩れる

 

「あははは〜。ってお、おい!大丈夫か?葵」

「・・・・・・」

 

 葵は俯いたまま、じっとしてい少し体が震えていた

 

「葵、大丈夫か?ごめんな。ちょっとだけ驚かそうとしただけなんだ」

「・・・ひ・・ひっく・・・う・・・うぅぅ・・・」

「ちょ、ちょっと泣くなって。ごめん、ごめんって」

 

 思った以上に驚かせてしまって、それも泣いたことに俺が驚く

 そして、ただひたすら葵に謝った

 

「ほんとにごめん。だからな?泣くなって」

「うぅぅ・・・ひっく・・・ひっく・・・」 

「ごめんな。立てるか?」

 

 葵に手を差し出し、起こそうとするが葵は俯いたまんまだった

 

「葵?」

 

 もう一回名前を呼ぶと葵は首を横に振る

 そして、小さな声で言ってくる

 

「立てない・・・腰ぬけちゃった・・・」

「・・・・マジか・・・ホントごめん」

 

 本当にやりすぎたことを後悔して、葵の前に背中を向けてしゃがむ

 

「ごめんな。ほらっ乗って」

「・・・うん」

 

 葵を背中に乗せて歩き出す

 そして葵を背負ったまま、葵が怖がっていた物へと歩いていく

 

「ダメだよ・・・憑かれる・・・」

「大丈夫だって、ほら」

 

 葵が怖がっていた者の横に来ると俺の肩に顔を乗せていた葵はポカーンとした顔になっていた

 そりゃそうだろう。さっきまで怖がっていたものは俺たちが昼間に作った“雪だるま”だったんだから

 

「葵が怖がってたやつはこれだよ」

「え、嘘だよ・・・だって動いたもん」

「それはたぶんこの枝だろ」

 

 手の代わりに付けた枝が風か何かで動いたのを葵はこの雪だるま自体が動いたように見えたのだろう

 

「な?怖いと思うからそんな想像しちゃうんだって。怖くないと思えば勘違いなんてなくなるよ」

「・・・だよね・・・うん」

 

 俺は背中にいる葵を落ち着かせるために言って、歩き出した

 背中ではコソコソ何やら「いない。うん」みたいに自己暗示をしようと必死だったが、邪魔するとまた大変なことになると思ったので俺は我慢していた

   

 

 

 

 

 


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