第47話
「・・・きろー・・・おきろー!!!」
「うわっ!な、なんだよ!」
耳元で大声を出されて、ビックリしながら起きる
横には葵が笑っていた
「いてぃ・・・耳がキンキンする・・・」
「輝、もうお昼すぎだよ」
「嘘・・・また食べられなかった・・・」
俺は確認するように時計を見ると、1時になっていた
また御飯が食べられなかった・・・
葵は俺を朝・昼ともに起こそうとしていたらしいが、俺がまったく起きる気配がなくて諦めたと言っていた
俺は起きて、服を着替える
「そういや、翔は?」
「すぐにスキーしにいったよ」
「逃げられたか・・・葵はどうすんの?」
「私はいいや。どうせコケるから、輝行ってきていいよ」
「俺もいいや。今から行っても少しだけしか滑れないし」
「そっか。それより寝癖直した方がいいよ」
俺は洗面台に行って鏡を見るとすごく爆発した頭をしていた
ここまで来たらもはやアートの域だ
俺は少しその頭を鑑賞してから寝癖を直していった
何分かの戦いを寝癖として見事勝利をし、葵のところに戻る
「これからどうすんの?葵」
「ん〜どうしよう。近くを散歩しようかなぁ」
「俺それについていっていい?暇だし」
「ん〜いいけど・・・」
「それじゃいこっか」
俺と葵はホテルから出てその辺をウロウロする
人がよく歩く道にはあまり雪は無いが少し人が歩かない所になると積もっていた
時々葵はコケそうになったり、雪だるまを作りながらの散歩はなかなか面白かった
しばらく歩いていると上に上がる階段を見つけた
「輝、行こうよ。何かあるかも」
「りょーかい」
まるで子供のような好奇心いっぱいの目で楽しそうに階段を早足で上がっていく
長い階段を上がり終わるとそこは公園みたいになっていた
「うわっすげぇなぁ・・・」
「うん・・・」
そこからの景色は今まで歩いてきたところが見え、そして辺り一面が雪で白かった
その白さ、そして太陽の光が反射して少し輝いている
あまりの景色のよさに俺たちは言葉を失い、そこに立ってしばらくは景色を見ているだけだった
どのぐらい時間が経ったか分からないが、太陽が傾き始めた頃やっと俺たちは景色から目を離した
「葵、そろそろ帰ろうか。晩御飯食えなくなる」
「あはは、そうだね。輝は今日も食べてないもんね」
俺たちはゆっくりと公園から出る。
そして階段を下りる前に俺はさっき見た景色を再び見た
「輝〜早く帰ろ〜」
「ああ」
先に下りていた葵が立ち止っていた俺に声をかけて、俺も階段を下りて行った
俺たちはそこから歩いてきた道を戻っていって、行く時に作った雪だるまのところで写真を撮ったりしながらホテルに帰る
「葵、さっきの公園さ、夜に行ってみない?」
「いいけど・・・なんで?」
「今日、満月だと思うから綺麗だと思うんだよね。見てみたい」
「んーでも抜け出せるかな?」
「大丈夫、大丈夫。コンビニ行くとか適当に言えば出れるよ」
「んーわかった。それじゃ行こ」
ホテルに着く前にそんな約束をして、俺たちはホテルに帰る
そして、帰ったあとは待ちに待ちかねた晩御飯にあり付く
ホテルのご飯と言えば、バイキング形式だとばっかり思っていた
だけど、今日の晩御飯はなぜか鍋
しかも、カニ鍋
いろんな意味でビックリさせられた
もちろん、味の方は抜群のうまさ
特にカニは恐ろしい美味さで泣きそうになった
食事が終ると俺は部屋に戻り翔に、昨日のことを問いだたす
「翔、昨日はよくもやってくれたな」
「なんのこと?分からない」
「先生まで仲間に入れて完璧な作戦を立てといて、よくもそんなことが言えるな」
「すごいだろ?どうだった?葵との一夜は」
「どうもしねぇよ」
「なんだ・・・まぁすでに何回か一緒に寝てるもんね」
「黙れ・・・とにかく!これは高くつくからな!」
「はいは〜い。了解しました〜」
「あっ待て!」
翔はわかったのかわかってないのか、よくわからないが笑いながら部屋から逃げていった
それからは、あの公園に行くためにマフラーを持ってロビーまで行く
俺がロビーにつくと、葵はまだ来ていなくて椅子に座って待っていたところに先生が来た
「北谷、昨日はどうだった?」
「あんな悪ふざけに何参加してんですか・・・」
「いやぁ教職員全員、面白がっていたぞ」
「ダメでしょ・・・それ」
「いいんだよ。俺らのときなんて女子のところに侵入してたぐらいだったんだから、今のガキは大人し過ぎるんだ」
「そんな力説されても・・・」
「まぁどうせ何もなかったんだろ?お前らだから許可したんだしさ。まっ良い思い出になったじゃないか」
先生はそう言って、外に煙草を吸いに行った
「俺たちだから許可をした」と言われても別にうれしくもない・・・
それから数分後、葵がロビーに来た
「おまたせ」
「ああ。んじゃ行こうか」
「うん」
俺と葵はホテルから出て、コンビニとは逆方向に歩いていく
昼間に歩いた道とはいえ、ここらへんは電灯がなかった
でも予想通りの満月でその光だけでも十分明るい
「月の明かりってすごいね」
「だなぁ。一応、懐中電灯もってきたんだけど要らなかったかもなぁ」
そんな会話をしながら公園に向かって歩いていく
しばらく歩いて、公園に続く階段を上っていく
そして、上り終わると昼とはまた違う景色が出てきた
「「はぁ〜・・・」」
ため息と同時に白い息が出て、俺たちは景色の虜にされる
昼は太陽の光で輝いていたが、今はなんというか神秘的な言葉では言えないような感じだ
「来てよかったな・・・」
「うん・・・」
そんな少ない言葉しか出ない
そのぐらいすごい景色の場所だった
そして、俺は葵をここに呼んだ目的を果たすために心の中で覚悟を決めた