第40話
電車に乗ってから約2時間少し
俺は空と涼と過ごした町に着いた
「ふぅ・・・ここは変わらないな」
少しも変わっていないこの町に涼との思い出が思い起こしてきた
今までなら、泣きそうになっていたけど今は違う
自然に笑っていられる。これも葵のおかげかもしれない
俺はさっそくバスに乗ってある場所に向かった
バスから見る町の風景に懐かしく思いながらバスに運ばれていく
バスに乗って約1時間
やっとの思いである場所についた
途中で花を買って長い階段を上り、涼が眠っているお墓の前に立った
「また来たよ。涼」
俺はお墓の掃除をして、花を入れ替えて一通りの作業をする
そして終わるとしゃがんで話かける
「涼は雲の上から見ててもう知ってると思うけど、やっと5つ目の約束ができそうだよ・・・俺はあの手紙を読んでからもう5つ目の約束はできないと思ってた。でもやっとできるかもしれない。涼以上に愛せるか分かんないけど、涼と同じぐらい好きな女の子に出会った。再会って言ったほうがいいのかな・・・けど、あと1歩が踏み出せないんだ・・・俺の中でまだ涼がいる。そしてそれを忘れられない俺がいて、また涼みたいになると怖いんだ・・・だから涼は忘れてって言ったのかもな。 あはは、おまえの書いてた通りになってるよ・・俺。・・・・でも人間そんな器用じゃないよ、辛い思い出と楽しい思い出は忘れにくいよ・・・どうしたらいいのかな?俺・・・」
俺がお墓の前で悩んでいると、12月とは思えない温かい風がスッと吹いた
そして、俺は涼の声で「がんばって。輝っち」と聞こえた気がする
もちろん幻聴かもしれないけど、それでも涼が俺の後ろで微笑んでくれている。
そして、背中をトンっと押された気がして、俺が戸惑っていたあと1歩を出させてくれた
「うん・・・そうだよな。涼ありがとうな。やっと踏み出せた。それじゃ雲の上で落ちないように見ててくれよ。今度来る時は2人で来るから。それじゃまた」
俺は涼に別れを言ってそこから離れる。
今までこんなに良い気持ちで涼のお墓を離れることはなかった。それに涼もなんだか雲の上から笑って見てくれている気がする
だから、俺は雲に向かって今できる最高の笑顔を見せた
バス停まで歩いて向かっていると、空がいた
「どうだった?ちゃんと答えてくれたか?涼香は」
「ああ。最高のアドバイスをくれた。やっぱり涼のこと好きになってよかったよ」
「そっか。んじゃ送ってやるよ」
「ああ」
俺は空の車に乗って、シートベルトを締めて車は走り出した
しばらく走っていると空から話かけてきた
「俺な、お前に涼香の手紙渡しただろ。あのあとまた涼香の部屋漁ったんだ。そしたら俺宛にも手紙があって、そこに“輝が私のことで悩んでたら助けてあげてほしい”って書いてあったんだ」
「そっか」
「それに俺宛に書いてること全部、輝についてだった。喧嘩をさせないようにしろ、とか色々な。せめてさ、“お兄ちゃん今までありがとう”とか書いてほしかったよ」
「あはは。俺の手紙見なかったのか?」
「ああ。見ちゃいけないような気がしてな」
「俺の手紙に書いてたぞ。今までありがとうって」
「・・・・・・・そっか」
空は唇を噛んで、目頭を押さえながら泣くのを我慢していた
「空、ちょっとそこのコンビニ寄ってくれ。のど乾いたし、あとトイレ」
「ああ」
ちょうど近くにあったコンビニに寄ってもらって空を車に置いていく
空のことだから、人の前じゃなかなか泣かない
だから俺は少しの間だけでも空を1人にしてあげたかった