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第39話

 あの夜から、俺たちは翔たちにバレないようにいつも通りの生活をした

 そして時々、俺が雲を見ていると葵も見ている時があり、それを見て少し笑ってしまう

 涼は葵のことをどう思っているのか分からないけど、笑って応援してくれているような気がする。

 あと少し怒っているのかな、「なんであそこまで言って付き合わないの!」ってさ

 

 

 

 

 

 文化祭が終わって一カ月とちょっと経つと季節は12月下旬。

 俺たちは修学旅行に行く一週間前になる

 

「輝〜 ついに一週間だよ!」

「葵 うるさい・・・わかってる」

「輝は嬉しくないの?私は嬉しいよ 北海道だよ?」

 

 そういえば、このテンション海外に行ったときもあったなぁ・・・

 

 このテンションのことをおじさんに聞くと

 

「それは俺が忙しいから家族で遠くに行くことがないんだよ。でもあんなにテンションが上がる葵も可愛いだろ?あれがいつか輝くんの物になるんだよ。あっなんか言ってたら悲しくなってきた・・・昔はお父さんのお嫁さんになる!って言ってたのにな・・・分かる?この気持ち・・・でもさ・・・」

 

 と言っていた。

 これからあと1時間以上付き合わされたうえに酒を飲まされつぶされた

 

 でも、葵はお金持ちなんだし1人で行けばいいのに・・・

 

 

「輝、北海道ってやっぱり寒いよね?」

「そうだろうなぁ・・・この季節は雪だらけだろうなぁ」

「だよね やっぱりそうだよね!んじゃこれから服買いに行こう!」

「は?これからって今からか?」

「うん ほらっ!行くよ」

 

 学校からの帰り道から逸れて、デパートまで連れて行かれる

 

「あの〜葵?俺お金持ってきてないんだけど・・・」

「ん?それじゃ私が貸してあげるよ」

「いや、それは悪い気が・・・」

「大丈夫だよ。それとも・・・私と買い物嫌なの・・・・?」

 

 葵・・・それは反則だよ

 葵が上目づかいでこっちを見てくる

 なんか涼のことを葵に話してから葵が少しずつ涼に似てきている気がする

 

 

「う・・・わかったよ 貸してもらうよ」

「うん!行こ〜」

 

 

  ・・・・・・ 

 

 

「輝、輝。どっちがいいと思う?」

「んーどっちもいいと思うよ」

「どっち?」

「んじゃ右手に持ってるの」

「えーでもなぁ・・・」

 

 女の子ってなんでこんなにも買い物がめんどくさいんだろ・・・

 さっきから同じことばっかりしている

 

「葵〜そろそろ決めろよ〜カゴの意味ねぇよ・・・」

 

 一時間半近く同じ服屋にいるのに、俺が持っているカゴの中にはまだ3着しかない

 

「だってぇ・・・あっ、これ可愛いなぁ」

「はぁ・・・・」

 

 また葵は服を見て鏡のところに行っては、俺のところに戻ってきて「これ可愛いと思う?」

「これとこれどっちがいい?」などと問いかけてくる

 まぁ葵は楽しそうだからいいけどさ・・・

 

 

「あれ?輝じゃん。なんでここにいるの?」

「ん?あー優美か・・・葵と服買いにきた」

「そっか。んじゃ私もここで探すかな〜」

 

 優美は葵のところに行って、キャキャと騒いでいる

 

「翔・・・おつかれさま・・・」

「お前も・・・すぐにこうなる・・・」

 

 翔は両手に袋を持って疲れたような顔をしている

 

 そして、翔の予言。つまり『俺も翔と同じ状況になる』と言う予言はすぐに当たった

 葵は優美が来てから、服を買う決断のスピードがあがり会計をして、次の服屋へ・・・

 

 そして、また優美とはしゃいで服を買う

 その買った物は俺が強制的に持つことになる

 

 それが、3時間近く続いた

 

「あ、ありえない・・・」

「輝・・・葵はすごいな・・・買う量が・・・」

 

 いつの間にか翔の持っている袋の数より俺の持っている袋の数が多くなっていた

 たぶん葵は服だけで数万は軽く使っている

 

 俺はさすがに危ないと感じ葵のおばさんに電話をする

 

「あ、あのおばさん?葵が服屋で暴走してます」

「え?どんな風に?」

「ありえないぐらい服買ってますよ もう6〜7万近く」

「別にいいんじゃない?ちゃんと考えて買ってるわよ。それに普段あの子欲しいもの漫画くらいしか無いから服に使ってるのよ。まっ男は黙って付き合っときなさい!んじゃ輝ちゃんバイバイ」

「ちょ!ちょっと・・・」

 

 切れた・・・忘れてたけどそういや葵は金持ちの子だったな・・・そういや会計のときカード使ってるし・・・

 普段はケチなのに服には遠慮がないのか・・・

 

 でもそろそろ止めさせないと帰るのが遅くなる

 

 

「葵〜そろそろ帰ろうぜ〜 俺もう持てねーよ」

「優美もそろそろ帰ろうよ」

「えー・・・んーまぁ輝が言うなら・・・」

「ダメ!まだ居るの!」

 

 あっ、翔が泣きそうになってる・・・

 

「なんで同じ女の子なのにこんなに違うんだ・・・」

「知らん・・・でも優美好きなんだろ?」

「ああ。そりゃもう。あんな風に甘えた後はちゃんとその分お返ししてもらえる」

「アー ソウデスカ ソリャウラヤマシイデスネー」

 

 なんか嬉しそうな翔の顔を見ると無性に腹が立った

 向こうでは葵と優美が会計をしていた

 

「ごめんね?輝 いっぱい持たせて」

「いや、別にいいよ それよりこんなに買って金大丈夫なのか?」

「うん 大丈夫 ちゃんと計算しながら買った」

「そっか。んじゃ帰るか」

「輝の服は買わないの?」

「い、いやもう金使えないでしょ?俺は今度買いに来るから」

「大丈夫だよ。貸してあげるなら。それに私だけ買ったらなんか輝に悪いよ。よし行こう〜」

 

 葵は1人歩き出した

 もちろん行き先は俺の服が買えるところ

 

「おい ちょっと待てって・・・もう9時だよ?」

「大丈夫!ここ11時まで開いてるし」

「でも、俺らまだ制服だよ?」

「気にしちゃダメ 行くよ〜」

 

 葵は再び歩き出した

 いつもの葵じゃない・・・やっぱり涼に似てきている気がする・・・

 

 

 

 

 あれから何時間経っただろう・・・

 俺はどのぐらい葵の着せ替え人形になってたんだろ・・・

 そして、カゴの中には服がいっぱい入っている

 

「あ、あの〜葵さん?」

「ん〜何〜」

 

 葵は服を見ながら返事をしてくる

 

「俺こんなに買えないよ?お金無いし」

「別にいいよ。ちょっとは私がおごってあげる・・・・あっこれ良い!」

 

 再び俺は葵の着せ替え人形状態になってしまった

 

 

 

「ふぅ〜・・・・いっぱい買ったね〜」

「あ、ああ・・・そうだな・・・」

 

 デパートの閉まる時間ギリギリまで結局居てしまった

『両手に花』という言葉があるけど、今の俺の状態は『両手に袋』って感じ

 

「結局、葵はいくらぐらい使ったんだ?」

「んーっとね 輝の分入れると10万ちょいかな?」

「ふ〜ん・・・・って、はぁ??」

「ちょっと買いすぎちゃった。テヘッ」

「いやいや、そんな可愛くテヘッとかされても・・・」

 

 葵は自分の頭をコツンと叩いて、舌を少し出して可愛く誤魔化そうとしたが、いくらなんでも買いすぎだ

 

「んとね、輝の分が2万ぐらいなの。私の分が8万ぐらい」

「お前そんなに使って大丈夫なのか?お金」

「なんとかなるよ。私、服と漫画くらいしかお金あんまり使わないし、それにお母さんだって『趣味には金を使え』って言ってるよ」

「そ、そうか・・・それならいいけど・・・」

 

 

 時間はもう11時を回っていたから、迎えに来てくれるらしい

 迎えの車が来るまで、俺たちは何故か無口だった

 とくに話すこともなかったのもあったけど、なんとなく話ずらいって感じがしたから

 

 しばらくして、すごい音をした車が俺たちの前に止まった

 これが時々爆音を鳴らしているおばさん達の愛車・・・

 

「輝ちゃん ごめんね〜」

「いえ、別にいいですよ」

「そう?それにしてもいっぱい買ったわね。葵」

「うん。久しぶりだったからね」

「ふ〜ん。でもいつもより多いわね」

「あ、これ俺の分もあるんですよ」

「そうなの?まぁいいわ。帰りましょ」

 

 おばさんが乗ってきた車に俺らは乗りこんで、家まで帰る

 

 

「そっか〜修学旅行かぁ・・・懐かしいなぁ」

「おばさんのときはどこに行ったんですか?」

「私?えーっと北海道だったかしら」

「私たちと同じだね」

「そうなの?いいわね〜。お父さんと付き合い始めたのよね〜あのときから・・・うふふ」

 

 おばさんは何かを思い出して1人で笑っていた

 

「お母さん、お父さんとどんな風に付き合ったの?」

「ん?私が告白されたのよ。お父さんに」

「どんな風に?」

「えーっと『俺のそばにいてくれないか?』ってね」

「それってもうプロポーズじゃないですか?」

「そうよね〜 私も思わず『はい』って答えたけど、まさか本当に結婚までするとは思わなかったわ」

「いいなぁ」

「あら?輝ちゃんがいるじゃない。葵には」

「お、お母さん!何言ってんの!」

 

 顔を真っ赤にしておばさんを揺らしているが、運転しているから危ない

 

「あ、葵落ち着け おばさん運転してるから」

「あ・・・」

 

 冷静さを取り戻したのか、葵はうつむいてしまった

 

「おばさんもそんなこと言っちゃダメですよ」

「あら?言っとくけど2人は! うふふ」

「何笑ってんですか・・・気持ち悪い・・・」

「えへへ」

「可愛くしても・・・」

 

 

 そんな話をしていると、俺の家の前に着いた

 

「おばさん送ってくれてありがとうです。それじゃ葵お金また今度返すから おやすみ」

「うん おやすみ〜」

「あっ 輝ちゃんちょっと・・・」

 

 おばさんが車から出て、俺のところまで来た

 

「なんですか?」

「輝ちゃん、さっさと決心しなさい。見てるこっちが何か痒くなっちゃうわ それじゃ」

 

 そう一方的に言って車に乗り、帰っていった

 

 俺はベッドの中で考える

 もちろん葵に涼のことを話してから整理していた

 そしてもう整理ができていた

 でもあと1歩が出ない。

 

 だから学校を休んで、その1歩を踏みだす勇気をもらうためにある場所に行こうと思っていた

 

 

 


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