第37話
涼とキスをした夜、俺はそれを思い出しては顔が熱くなってご飯さえまともに食えなかった
そして、俺の両親はいつもと違う俺に気がついて、興味を持ちしつこく聞いてくるから俺は部屋にこもる
そしていつの間にか夜は明けて、朝になっていた
俺はいつも通り制服を着て、学校に向かう
しかし、いつもなら空と涼と俺で行くのだがいつもの場所に2人とも居らず1人で学校に向かっていた
すると俺の携帯が鳴る。
その相手は空だった
「お前なんでいつもの場所に居ないんだよ。学校休むなよ」
「・・・・・・・・・・」
「お〜い聞いてんのか?空」
「・・・・・・・・・輝」
「ん?」
「涼香が死んだ・・・・・・」
「は?何言ってんの?お前そんな冗談やめろ」
「・・・・・・・」
「聞いてんのか〜」
「じょ・・・じゃない・・・」
「なんて?」
「冗談じゃない!!今すぐ病院に来い」
空はそれだけ言って一方的に電話を切った
いつもと違う空に俺は違和感を感じて、制服のまま病院へ走っていく
今までにこれ以上走ったことがないくらい全速力で病院に行き、入り口に空がいた
「空!!」
「・・・・ついて来い・・・」
空には生気が無く、死んでいるような顔をしていた
そして、その姿を見てさっきまで走って火照った体から一気に熱が無くなった
病院の裏口から入り、薄暗い廊下を歩き、空についていくと病室ではなく、霊安室の前で空が立ち止った
そしてその前には、空の両親がいて、その姿も生気が感じられなかった
「入れ・・・」
空は霊安室のドアを開けて俺を入れさせた
中に入ると、ベッドが一つ置いてあり、そこに1人寝ていた
空はその近くに行って、顔にかぶせてあった布を取る
「え?・・・あ・・・あ・・・」
俺はその顔を見て、体全身から力が抜けていくような気がした
そして、俺は寝ている涼の横に行き、手を持つ
しかし、いつもの涼の温かさはなく、冷たかった
「涼・・・いつまで・・・・寝てんだ?・・・学校いくぞ・・」
現実を受け入れられない俺はそんなことを言うが、もちろん涼は答えてくれない
しかし、俺はひたすら涼に話しかける
「なぁ・・・早く起きろよ・・・お前のせいで、遅刻するだろ・・・なぁ涼・・・起きたらお前の言うことなんでもしてやるから・・・なぁ」
「輝・・・もう・・・涼香は起きてくれないぞ・・・」
「なぁ・・・起きてくれ・・・涼・・・」
「輝・・・もうやめろ・・・輝!」
空は俺を涼から引き離して、そのまま霊安室から連れ出された
「輝・・・お前はもう帰れ・・・このままじゃダメだ」
空はそれだけ言って俺を病院の外に追い出した
それから俺はどうやって家まで戻ったのかは覚えていない
涼が死んでからは俺は部屋に籠り、布団をかぶって現実から逃げていた
数日間ずっと部屋に籠り続け、現実から逃げていると携帯にメールが受信され、内容を見て返信し、俺は布団をかぶって再び現実から逃げる
しかし、神様は現実から逃げることは絶対に許さない
部屋に籠っていると部屋のドアが蹴り破られた
「輝!!!いい加減にしろよ!!」
「空・・・勝手に入ってくんな」
「お前、涼香の葬式に来ないってふざけんな!いいから来い!」
空は喪服を着ていて、上下スウェットの俺をそのまま無理やり引っ張って歩いていく
「離せよ!!」
「うっせぇ!!現実から逃げんな!!」
家の前に車が止められてあり、その中に無理やり入れられ、空の家に向かう
それでも俺は逃げようとしたから空は本気で俺を殴った
「いい加減にしろよ!涼香の彼氏だろ!!最後に顔合わせなくてどうするんだ!お前が後悔するのはいいんだよ。でも・・・でもな!最後ぐらい涼香にお前の顔見してやれよ!そうじゃないと涼香が悲しむだろ!」
空は叫び、泣きそうになるのを耐えていた
そして、その姿を見て俺は逃げることはやめ、黙って空の家に着くまで待つ
空の家に着くと、すでに葬式は始まっており涼の友達がたくさん居て泣いていた
俺と空がその塊に近づくとみんながこっちを見てきて2つに分かれ、真ん中に道ができた
その道を通っていき、棺桶の前まで行くと、中には綺麗に化粧された涼が入っていた
「ほら、最後になんか言え」
空に促され俺は今まで涼に言えなかったことを空しか聞こえない程度の声で涼に話しかけた
「涼・・・ごめん・・・遅れた・・・俺さ、面向かってお前のこと好きって言えなかったけど好きだったよ、すごく。
いつもキスとかしたかったけど、やっぱり空の前じゃ恥ずかしかったし、涼がいつも迫ってくるし、なんか俺にキスして欲しいんじゃなくて、誰でもいいのかなって思ったりしちゃったんだ・・・。笑っちゃうよ・・・自分でも。
でもさ、涼が家の前でキスしてほしいって言った時は”あぁ涼も涼なりに悩んでたんだ。誰でもよかったわけじゃない”って思えてキスできたんだ。
それでさ、そのあともう一回してほしいって言ってたよな。・・・あれ・・・俺からしとけば、よかったな・・・ちょっと後悔してるよ。
あと涼が、私が死んだ時どうするって聞いてたけど、やっぱり耐えられないよ・・・涼がいない世界は・・・ごめんな・・・あのとき気づいてやれなくて・・・ほんとごめん・・・そして、俺と付き合ってくれて・・・あ・・・ありが・・とう・・・・」
俺はがんばって泣かないようにしたが、少し涙が出てしまった
俺は言い終わると涼から離れる
それからは後ろのほうで、葬式の展開を上を見ながら葬式が終わるのを待つ。
人に泣くところを見られないように・・・
そして葬式が終わると火葬場に向かった
涼の体が奥に入れられるときも、周りは泣いている人ばかりだったが、俺は泣かなかった
骨の状態までになるまで時間がかかるため、用意された部屋に入り時間を立つのを待つ
「輝、ちょっと来い」
「あぁ」
空は俺を連れて、外に出て煙草に火をつける
「空・・・たばこはやめとけ」
「ん・・・あぁ今はいいの・・・」
空は涼によって禁煙させられていた。
空は煙草を少し吸ってから上に挙げ、風で白い煙が飛んでいく
おそらく、空なりの涼への送り火なのだろう
「輝、これ涼香の部屋から出てきたんだ。お前宛の手紙。たぶん涼香は自分が死ぬことわかってたんじゃないかな・・・」
空から白い封筒を受け取る
表には、「輝っちへ」と書いてあった
−輝っちがこれを読んでるってことはたぶん空が私の机漁ったんだろうね。許せないなぁ・・・まぁいいや。
私、輝っちの事大好きだよ。今までキスしてって言っても全然してくれなくて、ちょっと疑ったりしたんだよね。本当に輝っちは私の事好きなのかな?って(笑)
だめだよね。私、輝っちの彼女失格かも。でも今日、家の前でキスしてくれたとき、すごく嬉しかった。それも2回もキスしてね。あ〜でも2回目は私が奪ったんだよね(笑)
でね、私なんでこれ書いたかというと、たぶん死んじゃう。なんとなくなんだけどさ、わかるんだよ。だから「私が死んだらどうする?」って聞いたの。
輝っちは「これからも俺と涼とで一緒に楽しく過ごすことしか思い浮かばない」って言ってくれたよね。
あのとき私プロポーズされたと思っちゃったよ(笑)
たぶん輝っちはそんなこと思ってなくて言ったんだろうけどさ。
でも私は最後にあんなこと言ってもらえて嬉しかったよ。
今までありがとうね。私の彼氏で居てくれて、私色々わがままなこと言ったり甘えたりして迷惑かけたけど、輝っちは顔に出さずに接してくれて嬉しかった。
本当に輝っちが私の彼氏でよかったよ
それでね、もしこれを読んでいる頃に私が死んでいたら5つ約束してほしいことがあるの
1つ目は、私のことを忘れてほしい
2つ目は、私の事で現実から逃げないでほしい
3つ目は、泣かずに笑っていてほしい
4つ目は、もう喧嘩をしないでほしい
5つ目は、輝っちが今後好きな子ができたらその子を愛してあげて、私以上に
できるかな?輝っち
本当は私の事忘れないでほしいんだけど、でも輝っちのことだから覚えてると今後引きずると思うんだよね。恋に臆病になるというか・・・・そんな感じかな。
だから忘れて。
あと特に守ってほしいのは3つ目と5つ目
3つ目は、なんで泣かずに笑っていてほしいかと言うと、私、輝っちが泣いた顔よりも笑った時の顔が大好きだから
どんな悩みでも真剣に聞いてくれて、真剣に考えてくれて、最後にはあの優しい笑顔で迎えてくれる。だからあの笑顔が大好き
でも、私的には3つ目より5つ目のほうが守ってほしいんだ。
もし、好きな子できたら私以上に愛してあげてね。絶対だよ。
大丈夫、輝っちならできるよ。私は雲の上に乗ってコッソリ見てるね。
あっこれだとストーカーになっちゃうか?まぁ気にしないで。見つからないようにするから(笑)
それじゃこの手紙はこれでおしまい
最後に言っておくね。
輝っちは最高の彼氏だった。大好きだよ。元気でね
PS.輝が5つ目の約束を守れたときに、空に言ってほしいことがあるの
今までありがとう。って言っといて−
という内容だった
所々涙のあとがあり、涼は泣きながら書いていたのがわかる
そして、紙を持っている手に涙が落ちて初めて俺は泣いていることがわかった
一度流れ出した涙は自分で止められなくて、流し続ける
「その手紙、お前が持っとけ」
「・・・あぁ」
空はそう言って、たばこを踏み消して、中に入っていった
「涼・・・見えてるか?俺1つ目は守れないけど他は絶対に守るよ。だから見守っててくれ」
俺は青い空に浮かぶ雲を見て、今できる限りの笑顔をしながら今まで我慢してきた涙を流した




