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第36話

 

 中学2年の冬になり、吐く息が白くなっていた

 そして、相変わらず俺は喧嘩を売られたりするが、なるべく逃げた。

 それでも逃げられないとやっぱり喧嘩をしてしまう生活がいつも通りあった

 

「輝っちってさ、なんで喧嘩ばっかするの?」

「涼香、それは輝が人の仮面をかぶった死神だからだ」

「おい、何言ってんだよ。そもそもこんな生活になったキッカケはお前だろ」

「感謝してるよ。あれで俺も更生したしね」

 

 

 

 俺が中学1年で涼と空に知り合って仲良くしていた頃、今と違って空は喧嘩をしまくって荒れていた。

 ある時、空が1人でその地区で四天王と言われる不良高校生4人に喧嘩を売られ、それを買って大げんかになったときがあった。

 さすがの空でも1対4でその相手が強いとあっては勝てなかったらしい

 空はその4人にボコボコにされてしまっていた

 

 そしてその時に俺がちょうど涼と帰りにその姿を見つけ、俺はすぐにそこに走っていき不良高校生4人の1人を殴ってしまったらしい

 俺はそこらへんの記憶があまり無く、ただあとから涼に詳しく聞くと内容はこうだった

 

 俺は高校生の1人を殴ってそのままその相手は気を失った。

 そして、それに気がついた残りの3人は一斉に迫ってきたが、数分のうちに全員をここでは言えないような形で戦闘不能させたらしい

 

 結局 空の親の力で、このことはねじ伏せられ学校にはバレなかった、というよりは学校側が触れたくなかっただけかもしれないが、(おおやけ)にはされなかった。

 しかし、噂までは消すことができず、学校中に噂が流れ、今までの友達に避けられ、結局最後まで一緒にいてくれたのは涼と空だけだった

 

 

 

「それにしてもさ、あの時の輝っちは怖かったよね〜」

「だな。俺をボコボコにした相手4人を瞬殺だもんな〜俺あんとき、こいつだけは喧嘩を売らないようにしようって心で誓ったもん」

「いやいや、おまえ今俺に喧嘩売ってるし・・・」

「気にするな。ほら俺の下僕やるから」

 

 空は涼を俺のほうに寄せ、その頭に俺の手を乗せた

 そして、空は走って逃げる

 

「待て!空!ちょっと涼、俺の手、離してくれない?」

 

 追いかけようとすると涼は俺の手の上に手を乗せ、“空のことは、ほっといて早く撫でろ”と言うような目でこっちを見てくる

 俺はその目に負け、空を追うのをあきらめ涼の頭を撫でた

 

「輝っち・・・この前言ったこと覚えてる?」

「ん?何?」

「私が・・・死んだらどうするかってやつ」

「あ〜そういや言ってたな」

「あれから考えてくれた?」

 

 涼はこっちを見ずに俯いたまま、話しかけてきた

 

「やっぱり分かんないよ。涼が今すぐ死ぬなんて俺には思えないし、それにこれからも俺と涼とで一緒に楽しく過ごすことしか思い浮かばない」

「・・・そっか。そうだね。うん」

「どうかしたのか?涼」

「どうして?」

「だって最近寝不足なのか知らないけど顔色悪いし、そんなこと言ってくるしさ」

 

 涼は最近になって目の下に(くま)ができたり、少し痩せてきている

 しかし理由を聞こうとしても「ダイエット中なの」と言うだけで、俺はそれ以上聞かない

 

「ん〜まぁ色々あるの。女の子には」

「ふ〜ん」

 

 俺と涼はそのまま歩いて帰り、涼の家についた

 

「んじゃまた明日な」

「あっ待って」

「ん?なに?」

「あ、あのね・・・キスして」

「どうしたの?いつもならそんなこと言わずにしようとしてくるのに」

「・・・・・・だってそうだとしてくれないんだもん」

 

 涼はいつもと違い、顔を赤くして俯いている

 そして、いつもの俺ならここでそのまま帰っていただろうが、いつもと違う雰囲気をまとう涼に戸惑い、俺は涼の前に行き、高さを合わせてキスをした

 

「えへへ、初めてだね。キスしてくれたの」

「っ!今日だけな」

「えへへへ〜初めてのチューだね」

「そーだな」

 

 俺は顔から火が出そうなぐらい熱くなっていて、涼もさっきより赤くなっていた

 

「もう一回して?最後だからさ・・・」

「はぁ?嫌だ。また今度な」

「ダメだよ。今!」

 

 涼はそういうと背伸びをして俺の唇を奪った

 

「私身長伸びてるんだからね。もう届くんだよ、えへへ〜」

「お前なぁ・・・はぁ・・・まぁいいや。んじゃまたな」

「・・・・ばいばい」

 

 涼は笑顔で元気よく手を振っていた

 そして、これが俺が見た 涼の最後の元気な姿になるなんて、この時は思いもしなかった


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