第35話
やっと輝の過去編です
中学2年でそろそろ秋も終わろうとしていたある日
俺は小さな女の子と空と3人で楽しく話している
女の子は目がクリクリとした可愛らしい顔で中学の制服がとっても似合っているが小さくて小学生にも見える
だが、そんな子がいるにも関わらず、俺たちの周りに他の人はいない
みんな俺たちを避けているのだ
「相変わらず輝っちは怖がられてるね〜」
「ほんと、ほんと」
「お前が言うな 空」
「あっそんなこと言っていいのか?お前の唯一の弱点の俺の下僕が怒るぞ?」
空は小さな女の子の頭に手を乗せた
「なんで私が空の下僕なのさ。生まれるの早かっただけじゃん」
「早くても遅くても俺の下僕だろ?涼香は」
「違うよ!」
小さな女の子の名前は『桜井 涼香』
みんなからは『涼』と呼ばれている
そして、空の妹だ
「輝っち〜空のあほが私をいじめる〜」
「よしよし」
飛びついてきた涼の頭を撫でる
「あ〜あ、ラブラブですね〜兄貴の前でさ〜」
「えへへへへ〜。妬いてんの?」
「アホ。んなわけねぇだろ。ちびすけ」
俺は涼の頭を撫でながら、歩く
するとさっきまで撫でていた頭が急にどこかに行った
下を見ると涼が頭に手を当てながらしゃがんでいた
「大丈夫か?涼」
「うん。大丈夫。ちょっとズキンってしただけだから」
「そっか。なんか最近多いな、そういうの」
「なんでだろうね。輝っちの愛情が足りてないからかな?ねぇキスしてよ。そしたら治るから」
涼は唇を尖がらせて、つま先立ちで俺にキスをしてこようとするが、身長の差であと数cm届いていない
しばらく涼は俺にキスをしようと頑張っていたが、数分頑張ってやめた
すると、ウルウルした目でこっちを見てくる
「・・・はぁ」
俺は鈴の視線に負け、デコにキスをする
「口じゃないの?いつもみたいに」
「いつもみたいって・・・したことないだろ・・・」
「お〜い 輝に下僕〜 早く帰るぞ〜」
前のほうで空が手を振ってこっちに言ってきた
「下僕じゃないよ!空のあほ〜」
「んだと!このちびすけ」
「やめろ〜頭揺らすな〜」
鈴は空に捕らえられ、頭を揺すられている
あの二人は本当に仲がいい
見ている俺が自然に笑ってしまうぐらい
「そうだ。輝っち明日空いてる?」
「なんで?」
さっきまで揺すられていた鈴が俺に聞いてきた
「あのね・・・えっとね・・・」
「早く言えよ・・・輝と明日デートしたいってさ。毎回なんで緊張するかなぁ」
「あーなんで言うのよ〜」
「ウダウダしてるからだろ。せっかく人が親切にしてやったのに」
「有難迷惑だよ〜。で空いてる?」
「ああ。いいよ」
「ほんと!やった!」
涼は飛びついてきた
それを受け止め、手をつないで再び歩く
明日の予定などを計画しながら家に帰っていく
俺はまだ中学2年だった
周りからは恐れられ、時には喧嘩を売られていた頃だったけど涼と空のおかげで楽しかった
その次の日、涼とのデートはいつも通りの映画館→ショッピング→そして学校の屋上で楽しく喋りをして終了のはずだった
「ね〜輝っち」
「ん?」
「もし、私が人に囚われて人質にされたらどうする?」
「ん〜、その犯人を数発ぶん殴って警察に渡す」
「そっか・・・」
いつもと違う涼に少し戸惑ったが、本当にそんなことが起きれば俺は何をするかわからなくなるだろう。
もしかするとその犯人を・・・ってこともあり得る
「じゃあさ・・・私が死んだらどうする?」
「・・・・ん〜・・・てかなんでそんなこと聞くんだ?」
「いいから答えて」
「んー、急だしそんなことわからないよ」
「・・・・そっか」
結局あいまいに答えると涼は少し悲しそうな顔をした
そして、その顔は何かを隠しているときの顔だったが、それが何かは俺には分からなかった。
もし、ここで俺が涼の隠していたことをわかっていて、そしてこの後、来る未来の事さえもわかっていれば、俺は真剣に考えて、何かの行動をしていただろう
でも、人間にはそんな能力はない。
だから未来に希望を持って生きていく
その未来に何があったとしても・・・・