第34話
「はぁ・・・・キャンプファイヤーってホントにやってるんだ・・・」
俺は1人で学校の屋上にあがって上からキャンプファイヤーを見ていた
そして、その周りにはフォークダンスをしている生徒、見たこともない踊りをしている生徒たちが自由に踊っていた
「はぁ・・・・・」
普通なら俺もキャンプファイヤーを近くで見てるのだが、数時間前からそんな気分じゃない
ベストカップルを決めるイベントに出て、俺と葵がベストカップルに選ばれたあと新聞部みたいなやつらに質問攻めにあってしまった
葵は間を抜けて走っていったが、俺は完全に捕まって逃げられなかった
そして、その質問が終わったあと次に待っていたのはおばさんと翔と優美だった
「輝ちゃん!!なんであそこで!!」
「そうだよ!輝!なんで!」
「まぁまぁ落ち着いて、優美におばさんも」
二人の今までにない怒りに迫られて俺は話すこともできずになっていたときに翔が助けてくれたが、すぐに聞きたいことを聞いてくる
「なんで輝は葵にキスをしなかったんだ?」
「・・・」
「はぁ・・・」
俺はあのとき、イベントの最後にキスをさせられたのだが結局、キスできずに抱きつきその場を乗り切ってしまった
そう、俺は逃げたのだ
それに怒って優美たちが俺のところに来た
「輝!女の子はね!どれだけキスをすることに勇気使うか知ってんの?!」
「輝ちゃん!優美ちゃんの言う通りだよ!それも葵は初めてのキスだったんだよ!!きっかけはあんなだったけど自分から言い出して!あの子がどれだけの勇気使ったと思ってるの!?それを輝ちゃんは裏切ったのよ!」
「輝、葵はイベントとはいえ、好きでもない男にあんなこと言わないぞ?」
「わかってるよ・・・」
「「わかってない!!」」
再び優美とおばさんの怒りが俺にぶつけられる
「二人ともちょっと落ち着いて」
翔が2人と俺の間に入って2人を抑える
そして、2人が落ち着きを取り戻すと翔は俺のほうを向いた
「輝は、葵のことどう思ってるだ?」
「は?いきなりなんだよ」
「いいから!ちゃんと答える!」
さっきまでの真剣さとは違う。ちゃんと答えないといけないような雰囲気を出した翔の表情に、これは逃げられないと悟って今の俺の気持ちを素直に話す
「どうって・・・好きだよ・・・でも、それが幼馴染で妹みたいな葵のことなのか。それとも同じ学年の同じクラスの異性としての葵のことなのかは自分でもわからない。ただ言えるのは俺にとって葵は大切な存在だってこと。だからあんな形でキスするのは俺が許せない」
自分の気持ちを言うのはこの3人だから。
他のやつなら、たぶん俺は無理やり逃げていた
でもこの3人は信頼できるし、信じれる
だから自分の気持ちをちゃんと言う
「・・・・そうか」
翔はしばらく考えて、納得してくれた
ほかの2人は俺の言葉を聞いて、納得したのかさっきの怒りモードは無くなっていた
「それじゃ俺たちはこれからキャンプファイヤーの準備だから先に行くな」
「私もそろそろ帰るわ、じゃあね輝ちゃん」
3人は俺を置いてその場所から離れていく
そして、その背中を見ながら、俺はあの3人に嘘をついたことに少し心を痛んだ
『それが幼馴染で妹みたいな葵のことなのか。それとも同じ学年の同じクラスの異性としての葵のことなのかは自分でもわからない』じゃない
本当は『前までは幼馴染で妹みたいな葵のことが好きだった。でも、少しずつだけど同じ学年の同じクラスの異性の葵のことが好きになってきている』だ。
だけど、その変わり目に俺自身、戸惑っているのと、“あのこと”があったから俺はそういうことから逃げている。
だから後者のほうを心の奥にしまいこんでいる
「俺はどうしたらいいんだよ・・・なぁ・・・教えてくれ。涼・・・」
気がついたときには空は赤く染まっていた。そして誰もいない場所で雲に向かって俺はつぶやいた
それから俺は何もすることもなく、学校の屋上にいる
そして、キャンプファイヤーをベンチに座りながら見てた
しかし、俺の頭の中は翔、優美、おばさんのことでグチャグチャにかき回されていた
すると突然、屋上のドアが開いた
「やっと見つけた」
「空か・・・」
屋上に来たのは空だった。
空はそのまま俺の隣に座る
「お前、なんであの子にキスしなかったんだ?」
「はぁ・・・お前もか・・・」
「やっぱりまだ引きずってんのか?涼香のこと」
「・・・・」
「はぁ・・・まぁいいけど。あいつも満足したと思うよ。笑ってたんだから」
「でもさ・・・やっぱり俺さ・・・ちゃんと気がついてればさ・・・」
「そうやって自分責めるのはいいけど、涼香が最後に残した言葉は忘れるなよ。絶対に!それにあの子になら涼香のこと話してもいいと思うし、涼香もそれを望んでいると思うぜ。もちろんお前次第だけど・・・んじゃよく考えとけよ、俺は帰る」
空は俺に言いたいことだけ言って屋上からいなくなった
そして、また俺は1人屋上に残って空の言葉でさらにグチャグチャにかき回された頭で考える
空が屋上からいなくなってからしばらく経って次に屋上に来たのは葵だった
「あっ・・・ごめん」
「ちょ、ちょっと待て!葵」
慌てて帰ろうとする葵を止める
「ちょっと隣に来て・・・」
葵は少し迷った感じだったがうなづいて俺の横に座ってくれた
「あのさ・・・長くなるんだけど、話聞いてもらっていい?俺の昔話」
「・・・うん」
葵の返事を聞いて、俺は昔のことを話し出す
次から輝の過去に入っていきます