第33話
文化祭2日目
相変わらずの人気ぶりで早くも品切れが出そうな2-2の教室
そして、その横ではツーショット写真を撮りまくっている
「はい。次の方〜」
「よ、よろしくおねがいします」
「はい〜・・・」
「北谷くん、やる気出して!」
カメラを構えている委員長に怒られて、さらにだるくなったがお金を出してまで俺と写真を撮ってくれる人に悪い写真は渡せないので、プロ根性ならぬ学生根性で明るくする
「んじゃよろしくです」
「はい」
「ハイ、チーズ!・・・ありがとうございました〜。写真出来上がるまで少々お待ちください」
写真は、その場でプリントアウトして渡す仕組みになっている
その間に、次のお客さんを入れて写真の準備をして、撮ったらプリントアウトの繰り返し
それを朝から何回も繰り返している
「はい。すみません。ちょっと休憩入れますので、10分ほどお待ちください〜」
委員長が教室の外でツーショット待ちのお客さんに言って俺たちは休憩に入った
「それにしてもさ・・・なんか葵と翔には時々違う制服の学生が来るのはなんでだ?」
写真を撮っているとき、俺はここの制服を着た学生がほとんどだ
しかし、翔と葵には3割近くが制服の違う学生
「それは中学のころ同じだった奴がいるからだよ。それがここに来てくれてる」
「そうそう。私も見たことある顔の人とかいるよ」
「すごいなぁ・・・お前ら二人は・・・」
翔と葵のモテ度に感服しながらお茶を飲もうとすると、休憩終了の合図が出された
しばらくさっきと同じことを繰り返しをしていると、予定よりも早くツーショットの予約をしてくれた人はすべて撮り終えた
そして十分稼げたので、終了しようと片付けようとすると、知らない人(男A)が入ってきた
「あ、あの!瀬川くんと中村さんと北谷くん借りていい?」
「あーこっちはいいけど本人に確認取ってね」
委員長の知り合いなのか、その人は俺たちのところにきて話しかけてくる
「あの、俺たちのやってることで、3人に出てほしいんだけどいいかな?」
「いいよ。3人とも出る」
翔が勝手に言って俺と葵は手を引っ張られ何も分からないまま体育館のほうへ連れていかれ、そして裏まで来てやっと説明された
「あの、今学校一のベストカップルを決めてるんですけど、今2組まで決まっててその2組が、瀬川・奥ペア、北谷・中村ペアなんですよ。だから最後はその2組で舞台に出てもらって、その2組の中で投票が多かったペアがベストカップルの栄冠をあげたいということなんです」
委員長の知り合い(これからは男A)は息を切らしながら一気に言って、俺たちをさっさと舞台の上に押し出した
すると体育館は「おぉー」と歓声があがり盛り上がる
横を見ると翔と優美がいて、優美はピースなどをして体育館を盛り上げている
「あっ、奥って優美のことか・・・」
「今気がついたの?」
「忘れてたよ。優美の苗字」
やっと奥と言う人がわかってスッキリして体育館内を見回した
人はいっぱいでいろんな視線を浴びせられる
特に男からは“死ね”という感じの視線を感じる
そして最前列には葵のおばさんがニコニコしながらこっちをカメラで捉えていた
「さぁ〜て!今このスクール オブ ベストカップルが決まるときが来ました!この2組の中から投票が多かった組がベストカップルです!皆様にはあらかじめ入り口で2枚の赤、青の色をした紙をお配りしています!今係員のものが箱を持って近くに行きますので2組の後ろにある色を見て、これぞベストカップル!という組の色をした紙を、瀬川・奥ペアなら赤色を、北谷・中村ペアだと思うなら青色を箱の中に入れてください!それでは係員さんおねがい!」
男Aがそう言うと、体育館内をうろうろする学生が出てきた
ちなみに俺たちの色は青色、翔たちの色は赤色
ここから見てる限りではみんなが何色を入れたかわからないが、どうせ翔たちだろう
「なぁ葵、なんで俺たち選ばれたのかな?」
「・・・・・・・」
「葵?」
「・・・・・・」
何の応答もないから葵のほうを見ると俯いていた
葵の耳は真っ赤っかになっていて、横顔から見ても赤い
普段、葵はあまり人前に出ることは好きじゃないからこういうのは苦手なんだろう
というか、さっきまで普通だったのに、今赤くなったってことは気がつくの遅すぎるだろ・・・
「葵、観客の顔はジャガイモだと思えば大丈夫だよ」
俺はこっそり葵に伝えると、少しうなずいて顔をあげたがすぐに俯いた
そして小さな声で言い返してきた
「思えないよ・・・それに一番前にお母さんいる・・・」
「あ〜あの人は神出鬼没だな・・・」
俺たちの視線に気がついたのか、カメラで撮りまくっているおばさんはグッと親指を立てて満足そうな顔をしていた
しばらく経って、体育館内を歩き回っていた学生が舞台の上にあがってきて箱を一か所に集める
「さぁ!ここに今年のベストカップルを決める運命の紙がすべて集められました。この箱を開け、赤が多ければ!今はもう“学校公認となっているベストカップルな瀬川・奥ペア”!青が多ければ、“我らのアイドル中村さんとその相方 北谷くん”のペア!」
男Aはそう言うと箱を開けて色を分け始めた
「なぁ俺の紹介って葵のおまけっぽくない?」
「あはははー」
「優美!笑いすぎだぞ!」
「あはははははー」
優美は俺の紹介がツボに入ったのか注意をしても笑い続けている
その一方で、葵はさっきからずっとうつむいたままだ
「大丈夫か?葵」
「・・・うん」
「そっか」
なんとかがんばってるみたいだ
そうしている間に集計が終わったのか男Aが真ん中に立った
「さぁさぁお待ちかね!集計が終わりました!結果を知っているのは集計をした人だけ!さぁ!今年のスクール オブ ベストカップルの栄冠に輝いたのは・・・・・・・」
男Aが手を挙げると体育館内は暗くなって、スポットライトがつけられる
そして、俺たちと翔たちを交互に照らす
「輝いたのはぁぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・北谷・中村ペア!!!!!!」
「わぁぁぁぁぁぁ」
男Aが言った瞬間俺たちにスポットライトが当てられ、体育館内はドッと盛り上がり、体育館自体が揺れる
おばさんは席を立って舞台手前まで来て、カメラを撮りまくっている
そしてさっき男から感じた視線はますます濃くなり呪われそうなぐらいの視線を感じる
「どうですか?学校公認のベストカップルを破って、今年のスクール オブ ベストカップルの座に座った感じは?」
「ん・・・あーうれしいです」
「そうですか〜。では中村さんはどうですか?」
「・・・・・・・・」
「おっと感動のあまり言葉が出ないみたいですね」
どこをどう見ればそう解釈できるのだろうか・・・葵はただ恥ずかしすぎて声が出ていないだけだ
それを証明するかのように時々俺に向けて“早くここから離れたい”というヘルプアイを出してくる
だが、この状況を抜け出すことは不可能なので、目で“無理、我慢しろ”と送ると葵はわかったのか再び俯いた
「さぁてこのイベントも終盤!最後にアレをしてもらいましょう!さぁ北谷くん、中村さん!キスをしてください!!!私たちに見せつけてください!!!」
「はぁぁ!?」
「え!?」
男Aの突然の発言に俺たちはびっくりして、その声のほうを見るがそこにはもう男Aは居ない
そして、横のバカップルが体育館内をあおり始める
「キ〜ス!キ〜ス!キ〜ス!チューしろ〜」
「キ〜ス!キ〜ス!キ〜ス!キ〜ス!」
バカップルのほうを見ると、してやった!みたい顔でこっちを見てくる
「さぁキスするまで終わりませんよ。お願いします!」
男Aは期待と怨みの入った声で俺たちを急かす
そして舞台手前まできているおばさんはその瞬間を逃すまいと、いつでもシャッターを切れる体制に入っていた
「て、輝・・・は、早くやって・・・・おわらそうよ・・・これ以上いたら・・・死ん・・・じゃう・・・」
「え、あ・・・あ〜・・・」
葵は顔から火が噴くぐらい赤くなっていて俺のほうを向いて目をつぶった
そして、小刻みに震えていた
俺はもう逃げられなくなり、俺も顔から火が噴くぐらい赤くなっている
その間も体育館内は盛り上がり続け、キ〜ス!と何回も言っている
「い、いくぞ・・・葵」
「う・・・ん・・・」
俺は覚悟を決めて、葵の肩に手を置く
横目で体育館内を見るとおばさんはすでに何回もシャッターを切るのが見えて、さらに顔が赤くなる気がした
そして、俺の顔を葵の顔を近づけていった