第32話
「人は過ちを犯して、初めてその重さを知る。By俺」
「何それ?」
「今考えた」
俺と葵はひと騒ぎが終わって夕焼けに染まった教室の中でぼーっとしていた
「人は過ちを犯して、初めてその重さを知るってなんか名言っぽいね」
「だろ?俺の名言だな」
「もっといい名言教えてあげよっか?」
「何?」
葵はさっきまで外を見ていたのに、俺の目を見てくる
「敬遠は一度覚えるとクセになりそうで。」
「・・・・・・・・はぁ・・・俺野球してないし・・・」
「わかってないなぁ。敬遠=逃げるって意味だよ。だからこれは逃げることを知るとクセになりそうってことだよ」
葵は俺の肩に手を置いて揺さぶりながら熱く語ってくる
「だから、この言葉はそんな簡単な言葉じゃないんだよ!輝!わかってる?ちゃんと読んだの?ねぇ!」
「わ、わかったから。そんな熱くなるな」
やっぱり親子だ。
あの親にして、この子
何かに熱くなると他は見えなくなる
「そろそろ帰ろうぜ。明日また大変なんだからさ」
「そだね」
「“敬遠は一度覚えるとクセになる”か・・・そうだろうな・・・」
「ん?なんか言った?輝」
「何も言ってないよ。ほら行くぞ」
俺たちは最後に教室から出るので鍵を閉めて、職員室に持っていく
「カギ持ってきたんですけど〜」
「おぉ北谷か。ちょっと来い」
俺たちの担任が呼んでくるのでそこまで行くと何やら名前がビッシリ入った紙を見せられた
一番上の欄に「瀬川 翔」「中村 葵」と書かれている
「なんですか?この紙」
「それ、明日のツーショット写真の予約表」
「へ〜さすが翔と葵ですね。二人合わせて300ぐらい入ってるじゃないですか」
若干だが翔より葵のほうが多い
「2枚目を見てみろ」
先生に言われた通り2枚目の紙を見るとそこには「北谷 輝」と書かれていた
「は?・・・」
「すごいな。お前、瀬川や中村の比じゃないくらい入ってるよ」
2枚目の紙には俺の名前しか書いてないが、ビッシリと名前が書いてある
「これ・・・俺とツーショットのやつですか?」
「そうだ。さっき数えたんだが、100はあるな。何したんだ?」
「さぁ・・・わかんないですけど・・・」
翔たち以上の予約数にビックリして嬉しいというより困惑が出てきた
「まぁ明日がんばれや。。んじゃさっさと帰れよ」
俺は職員室から出て、靴を履き替え校門で待っている葵のところに向かった
「どうしたの?遅かった」
「いや、ツーショットの予約の奴見せてもらったんだけどさ・・・」
「あ〜明日だね。まっがんばろうよ」
「え、知ってんの?」
「うん。休憩から帰ってきてから、急に増えたんだよ 輝とのツーショットの予約」
「そうなんだ・・・」
そういえば空との劇をしたあとに翔が言っていたことを思い出した
「はぁ・・・嫌だなぁ・・・あの格好が写真として残るのは・・・」
「それは私も同じだよ・・・でもがんばろうよ。お互いさ」
「そうだな」
俺と葵は赤く染まった空の中、家に向かって歩いていった
あだち充さんの漫画好きです(笑)