第31話
間違いの部分を訂正させていただきました。
ご指摘ありがとうございました。
「木刀持つとさ・・・昔のこと思い出すんだよね・・・・・・・とか思ってない?輝」
「アホか・・・それに持たせたのおまえだろ」
新撰組の衣装を着て、なぜか俺だけ翔から木刀を持つことを命令されていた
今日は文化祭1日目
この日、学校もいつも以上ににぎやかになる
とくに俺らの教室は。
俺らの教室の前には開店前にも関わらず早くも行列ができており、それを並べる作業を俺と翔がしていた
女には翔、男には俺、と分担しているのだが翔のほうは、ひと言女の子に言うとその子はキャッキャはしゃいで翔は苦労をしていた
一方、俺のほうは、列を乱している奴がいて近くに行こうとすると慌てたように列に並ぶ
楽なのはいいのだが、なんだか悲しくなる
開店時間も近づいてきて、俺と翔はいったん教室の中に入り、「もう開けていいか」と確認して教室のドアを開ける
すると、人が一気に教室の中に入りパニックになってしまった
パニック状態になっている教室内を落ち着かせるために俺は木刀で黒板を思いっきり叩く
するとさっきまでパニックになっていた教室はピタッと治まる
「すみません。中に入れる人の人数は決まっているので、呼ぶまで待っててくれませんか?」
できるだけ笑顔で言って、外に誘導して出てもらう
「やっぱり持たせてよかったよ」
「これを持たせた意味やっとわかったよ・・・」
翔は計画通りになって、ニコニコしながら外で待っている客を呼んだ
売れ行きは好調、むしろ好調すぎるぐらいだった
開店してから人の流れは途切れることがなかった
翔と葵のツーショット写真は明日からなので今は予約を取っている
今のところ100人の予約が入っている
一枚200円なので、これだけで2万の売上
まさにあの二人は金なる木だな。
昼も過ぎて、教室前行列は無くなったが、教室の中はまだ人でいっぱいだった
「バカ売れね〜 輝ちゃん」
「あっおばさん。いらっしゃい」
ちょっとお化粧した葵のおばさんが来てくれた
「大変ね〜それにしてもなんて言うの?輝ちゃん、萌え〜って感じね」
「どこで覚えたんですか?その言葉・・・」
「葵が持ってる漫画に書いてあったのよ」
「何、娘の部屋漁ってんですか・・・」
「えへっ」
「えへっじゃないでしょ・・・注文何します?って言ってもお茶菓子しかないけど」
これ以上おばさんのペースには合わせない
合わせてはいけない
「そうね〜・・・お茶菓子」
「了解です」
「あっ待って」
おばさんは俺の手を掴んで俺を止めた
「もう一つ頼みたいものあるの」
「なんですか?」
「輝ちゃん」
「はい?なんでしょう?」
「だから〜輝ちゃん」
「はい?」
おばさんはなんで俺の名前をさっきから言っているのかわからなかったが、次第におばさんの考えていることがわかってきた
「それは無理です。お客様」
「えーなんでよ。衣装作ったのにそれは無いんじゃない?」
おばさんはニヤニヤしながら切り札の言葉を言ってきた
「まぁまぁ。それじゃ輝とおばさん、こっち向いて〜ハイチーズ」
「うわっ!」
急にどこからか湧いてきた翔に押され、おばさんに抱きつかれた。そしてその状態のまま写真を取られる
「いい感じで撮れましたよ。これはサービスです。お姉さん」
そう言って翔はさっき撮った写真をおばさんに渡して消えていく
もちろん顔は笑っていた
「さすが翔君ね。話が早い」
「それはもういいですけど・・・おばさん離してください」
「え?なんで?」
「なんでって仕事できないですから・・・」
「もーしょうがないなぁ」
やっと抱きつかれた状態から解放され、逃げるようにおばさんのところから離れた
「注文!茶菓子。料金はつけといて」
「輝、何それ?」
ちょうど厨房にいた葵が聞いてくる
「VIPだ。丁重に扱え。あとは頼む」
俺は休憩に行きたいと言って了解を得て、教室から出た
他のクラスのところを見ても、さすが学校が積極的に盛り上げるようにしてくれているだけあって、ものすごく活気がある
その分、人がいっぱいるため、新撰組の衣装が目立ってすごく見られていた
校門のところまで行くと、人はあまりいないが、人が出たり入ったりを繰り返していた
「つかれた・・・」
ちょうど椅子が置いてあったのでそこに座って休憩をする
しばらくして、聞き覚えのある車の音がしてくる
「空か・・・」
「おう!輝、なんだその格好は。あははははー」
空は俺に会った瞬間笑い出す
空の後ろに取り巻きみたいな形で怖い人がいるが、その人たちは苦笑いだ
「なんで来るんだよ・・・」
「なんでって、そりゃ輝の青春をつぶしにだな。」
「この不良め!成敗してやる!」
俺は持っていた木刀を抜いて、時代劇のまねをする
すると、周りの人はビックリして止まったが、俺の見た目は新撰組スタイル、相手の見た目は空は普通なのだが取り巻きが不良なのでまとめて不良スタイル
ここで俺がやった行動を後悔する
周りの人たちは、「劇」だと思ったのだろう。一気に人が集まってきた
「え?いきなり劇なの。すごーい新撰組だ」
「2−2って劇もやってんのかよ。すごいなぁ」
「がんばれー新撰組の子」
そんな声が聞こえる
そして、その騒ぎはさらに人を呼ぶ
そこにさっきまで教室にいた葵が休憩をもらったのか、人ごみの中にいた
それに気がついた空は葵にスッと近づいて悪ノリをする
「この新撰組め!この女の命が欲しければ、ここから去れ!」
「えっ!!ひ、ひぃ!!」
「なっ!!」
葵の服装も着替えてなかったので、和服を着ている
葵は何が起こったか分からないのか怖がっている。本気で
ただ周りにはそれは演技と思われた。
正直、俺的にはここから逃げ出したいと思っているのだが周りには人、人、人
完全に囲まれた形で逃げられない
ただでさえ厄介な状況はある人達が入って、さらに加速する
「助けてください。新撰組のお方!私の娘をお助けになって!」
葵のおばさん乱入
「おばさま大丈夫よ!この方が助けてくださるわ!」
優美乱入
「待たせたな!輝!俺も助太刀するよ!」
翔(新撰組の格好+なぜか木刀持ち)乱入
周りの人はその光景を見て、これからの展開にわくわくしている感じだ
そして、この劇が始まった張本人(決して俺ではない) 空は悪役の笑い方で完全な悪ノリ
「がっはっは。新撰組が何人集まろうと俺の手下には敵わぬわ!行け!」
急に命令された取り巻きの不良は一瞬困った顔をしたが、空の命令は絶対なのか俺たちに襲いかかる
それも、見た目は本気に見えるように攻めてくるが、観客には見えないところで隙ができ、いかにも当ててくださいっと言っている攻め方だ
「ぐわぁぁー」
「うわっ」
空の下の人も大変だなぁ・・・とか、こんな茶番につき合わせてものすごく悪い、と思いながら当てるふりをしていく
そして取り巻きの不良さんたちを倒して空が1人になると葵を解放する
「この新撰組め!俺に勝てると思うなよ!」
空は翔に襲いかかる
そして、翔はある程度抵抗はするが、途中で木刀を奪われ、それで切られた
「うわぁーくそぅ・・・あとはたの・・・む・・・」
「はっはっは。俺に勝とうなんてバカなやつだ」
翔は迫真の演技でバタッと倒れる
なんの打ち合わせもなしに、空と翔は完璧な演技をしていることにビックリした
こいつらはバカなのか天才なのか、俺にはよくわからない
「あとは1人だな」
空は木刀を構えてジリジリと寄ってくる
俺は周りの人を見ると、みんなキラキラした目で見てくる
「隙あり!」
そう言って空が切りかかってきた
なんとか俺はそれを止めたが、さっきまでとはすべての行動のスピードが違う
再び空が切りかかってくるのを止めて間合いを詰め、お互い木刀を振れないようにして小声で空に話しかける
「空ぁ、お前なんで本気なんだよ。なんか恨みでもあんのか」
「いやだってさ、盛り上がってるじゃん。それに昔殴られた分のお返ししてないこと思い出したし、さ!!」
俺の腹を本当に蹴って俺と距離をとった
「いってぇ」
「ほら!ほら!ほら!」
この隙に何度も何度も本気で切りかかってくる空
それをなんとか全部ガードする俺
周りから見れば演技にか見えないだろうが、こっちは本気だ
「がんばれー新撰組ー」
「いけー!」
「いいぞ〜」
演技としてしか見られていない分、周りの人は迫真の演技で熱くなっている
「空!早く切らせろ!」
「黙れ!このやろ!」
俺たちは違う意味で熱くなる
「そ、空さん、そろそろ時間やばいです」
さっきまで死んだふりをしてくれていた不良さんが小さな声で空に伝える
すると、さっきまで隙一つ見せなかった空がほんの少し隙を見せる
俺はそこを見逃さずに切る。遠慮なく。
「うえっ・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
「・・・っ!くそっ、ここは引くぞ!」
さっきまで死んでいた不良さんたちが立ちあがって、乗ってきた車に乗って走っていった
「うぉーすげー」
「ブラボー」
無事?劇が終わったと思った観客が拍手をし出す
そしてさっきまで死んでいた翔がムクッと立ち上がり
「ありがとうございました。2−2の劇でした。私たち2−2は和風喫茶をしてますので来ていただくをうれしいです。場所は2−2の教室です。それと、私たちとのツーショット写真が明日あります。もちろん衣装はこのままです。それも教室内で予約ができますのでどうぞ。それではありがとうございました〜」
見事な宣伝です。翔くん・・・
周りにいた客は次々の学校の中に入っていき、2−2へ向かう階段を上っていくのが見えた
「宣伝上手だな 翔…」
「だろ?さぁ忙しくなるぞ。行こう優美」
「うん」
「おい。どこ行くんだ・・・」
翔と優美は満足した顔で教室とは全く別方向の方へ歩いていった
空が起こした劇も無事に終わり、翔の宣伝も終わって俺は今頃大騒ぎになっている教室に戻ろうとした時、後ろから俺を呼ぶ声がした
「てぇるぅ〜」
「あ。大丈夫か?」
「私の事忘れてたでしょ・・・」
「い、いやそんなわけないじゃんか。立てるか?」
ペタンと座り込んでいる葵に手を差し伸べて、引っ張って立たせた
「私、何に巻き込まれてたの?」
「んー・・・1人の青年の悪ノリかな」
葵は?が頭の上に出るような顔をしてこっちを見てきた
「まぁ気にするな。俺は今から教室に戻るけど葵はどうする?」
「んー私も戻る」
「そっか。んじゃ一緒に行こう」
「うん」
俺たちが、教室に戻るとそこには翔のせいで戦場と化されていた
朝の教室前行列が今再び復活し、軽くパニック状態となっていた
「北谷くんに中村さん!早く手伝って!!!」
俺たちの目の前にバッと現れ、クラスメイトが叫ぶ
「わかった。わかった。やるか、葵」
「だね」
俺は顔を叩いて気合を入れ、注文を受けにいった