表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/87

第26話

 気がつくと俺は自分の部屋にいた

 昨日のことを思い出そうとすると、頭がガンガンする

 辛うじて思い出せたのは、おじさんの勝ち誇った顔

 

 ガンガンする頭で体を起こして、時計を見ると、もうすぐ昼になる頃だった

 

「はぁ・・・・だりぃ・・・」

 

 今更急ぐこともせず、水を飲んでガンガンする頭を少し和らげ、制服を着て外に出た

 なんとなく、学校に行く前に葵の家に行く

 ちゃんと葵は行っているか見るためだが、たぶん行っているだろう

 

「あら?輝ちゃん今起きたの?」

「はい。あなたの夫に飲まされたせいで」

「も〜あの人に勝とうなんて無茶なのよ。だって私が愛した人よ?」

 

 完全に嫌味で言ったのに、ほめられたと思っている・・・

 さすがだよ・・・この人は。

 

「葵、ちゃんと学校行きました?」

 

 おばさんにペースを合わすとまた『学校に行かなくていいから愚痴を聞いて』とか言い出すので先に要件を話す

 

「葵?いいえ行ってないわ。 葵〜輝ちゃん来たわよ〜」

「はい?」

 

 おばさんは家の中に大声で言った

 するとバタバタと葵が下りてくる

 

「やっと来た・・・行こっ輝」

「あ、ああ」

「いってらっしゃい 二人とも」

 

 俺は話の流れについていけず、手をひっぱられて、葵の家を出た

 

 

 

 学校の通学路を葵と2人で歩く

 葵はやっぱり1人で行くのは抵抗があったらしく、昨日のうちに俺と行くことを決めていたらしい

 

 

 俺たちは学校の前まで来たが、葵が立ち止まった

 

「葵?やっぱ今日やめとくか?」

「ううん 行く・・・・でもちょっと待って」

 

 葵は気合を入れて、一歩を踏み出した

 

 

 

 

「先生〜今来ました〜」

 

 先に俺が教室に入る

 

「北谷・・・もう昼だぞ・・・・怒る気にもなれん・・・」

「んなこと言われたって・・・寝坊したんですもん」

「もういい 座れ・・・おぉ中村も来たのか、熱は下がったのか?」

「はい」

「無理はするなよ」

 

 葵が休んでいる理由は熱だったのか・・・

 まぁ本当は違うんだけどさ・・・

 

 その後、葵はクラスメイトに囲まれて「大丈夫だった?」とか聞かれまくってた

 てゆうか、あいつら俺のときと全然反応違うくね?

 

 

 俺が席に座り、授業の準備をする

 

 

「輝、まだ犯人わかってないんだけど、候補はできたよ」

「そっか。だれ?」

「輝が事故る前に告白してきた子いただろ?岡村って子」

「あぁ〜あいつか・・・」

「輝。これは候補だからな。まだ決定していないけど、その子には関わるな」

 

 いつになく真剣な顔で翔は話してくる

 

「なんで?」

「なんかその子の後ろに暴力グループがあるらしい。だから関わるな」

「そっか。忠告サンキュ」

 

 俺と翔はそのまま授業を聞く体勢になり、その話は終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

 葵が学校に来れるようになって、数日が経った、俺と葵は一緒に帰る

 葵とずっと一緒にいたから、嫌がらせとかは無い。まぁ葵の隣にはいつも誰かいたからできないだろうけどさ

 

「はぁ・・・今日もだるかったなぁ・・・」

「輝 頑張ろうよ。私たちいっぱい休んじゃったんだし」

「そうだなぁ やばいもんなぁ」

 

 俺と葵はそんなことを言いながら靴を履きかえる

 靴を履き終わって帰ろうとすると、葵は固まっていた

 

「葵?どうかしたか?」

「え?あ、ううん。ちょっと用ができたから先に帰っていいよ」

「お、おい」

 

 急に葵が言って、帰り道とは逆の方へ走っていった

 

 俺はなんとなく、葵の表情がおかしく感じて、こっそりついていく

 しばらくして、公園に着くと、葵と聞いたことのある声が聞こえた

 

 

「ねぇ?北谷くんがあなたのせいで死にそうになったのに、なんで学校来てるの?それとも、自分が悪くないとでも思ってるわけ?」

「べ、別に悪くないなんて思ってない・・・」

「じゃ、なんで楽しそうに学校来てるの?あなた自分がやったこと解ってる?人を殺しそうになったのよ?あなたのせいで。」

「・・・・・・・」

「まぁいいわ。とにかくあなたのせいで北谷くんが傷負ったんだから、あなたにもそれ相応の傷つけてあげるね。あんたら遣っちゃいなさい」

「いいのかよ まぁ俺らは別にいいけどよ。んじゃお譲ちゃん俺らと遊ぼっか」

「や、やめてください!」

 

「おい!葵の様子が変になったと思ったらこれか・・・いい加減にしろよ?」

 

 俺は葵の手を引いて自分の後ろに動かす

 


「あらら、正義のヒーロー登場ってか?あはははー」

 

 バカそうな男たちが爆笑している

 そして、男たちの後ろに見覚えのある女の子がいた

 

「岡村さんだっけ?お前か?葵に嫌がらせしたの・・・」

「お前何さま? いいから引っこんでろ!」

 

 男の1人が俺に殴りかかってきたが、それを避けて顎に軽く殴る

 すると、男は意識を無くして、地面に倒れた

 

「ねぇ?分かんない?俺、今イラついてんの。お前ら関係ないなら消えて。次から手加減できないから」

「な、なんだ こいつ・・・」

「話を聞いてなかったの?関係ないなら消えろ。それとも病院に行きたいのか?」

 

 俺は男たちを睨む

 

「な、なんなんだよ・・・こいつ・・・目がやばいよ・・・」

「い、行こうぜ こいつヤバい」



 男たちは寝転んでいる仲間を担いでその場から逃げて行った


 

「ちょ、ちょっとあんたたち!あとでどうなっても知らないから!」

「お前、自分の立場わかってる?葵を虐めて普通に過ごせるとでも思ってるわけ?」

「き、北谷君・・・いいわ でも残念。北谷くんは大切にしたかったけど、私の友達そろそろ来るから、ぼこぼこになっちゃうね。」

 

 岡村はニコニコしながら俺に向かって言った

 

「だから?別に俺がボコボコになろうが、どうでもいいの。葵にとりあえず謝れや」

「あはは。なんで?北谷くんを死なせようとした子だよ?」

「勝手に俺が事故っただけだっての。葵は関係ない。いいから謝れ」

「あっ 来た こっちこっち」

 

 岡村は俺を無視して、バイクに乗ってきた男の方へ手を振った

 

「お〜由美。どいつだ?殴っていいの?」

「この男。前は好きだったんだけど、今はどうでもいいからボコボコにしていいよ」

「お〜最近ストレス溜まっててな。ちょうどよかったよ」

 

 不良はそう言って俺のほうを見た

 

「お前か? 俺の由美に喧嘩売ったの?」

「だれ?あんた・・・」

 

 不良の方へ睨む

 

「・・・え・・・あ・・・・も、もしかして北谷?・・・あ、いや北谷 輝さんですか?」

「だから何?」

「ゆ、由美すまん。俺無理だわ。すまん!この人に喧嘩売るなんてバカいねぇよ。それに人質取ってて怒らせてるなら尚更だ。じゃあな!」

 

 男は岡村にそう言ってバイクにまたがり逃げて行った

 

「ちょ、ちょっと!なんでよ!」

「はぁ・・・なんだ?お前の友達、根性無しばっかかよ・・・もういい。今度、葵に何かしたら容赦しないから。行こう葵」

 

 岡村はその場にペタンと座りこんだ

 俺は、急な展開についていけてない葵の手を取って公園から出る

 

 しばらくは、俺も葵も話さずに静かだったが、周りに人がいなくなったとき葵が話しかけてきた

 

 

「ねぇ?輝・・・向こうで何したの?」

「え?あー・・・言ってもいいけど引くよ?」

 

 当然聞かれるとは思っていた

 というか、このことはたぶんこっちに住んでいる人は誰も知らない

 と俺は思ってたんだけどなぁ・・・・

 

「んー何から言えばいいかな・・・まず、前に住んでたところは不良が多かったの。そんで、不良と喧嘩しちゃったんだよ」

「へぇ〜、輝が喧嘩か・・・」

「うん。ちょっとあってね。んで、その喧嘩に勝っちゃって、一躍有名になったってわけ」

「輝が?」

「うん 俺が。なんか喧嘩した相手がその地域で一番強かったぽいの。それを倒しちゃったから・・・そのあとが大変だったなぁ」

「ふ〜ん 輝って喧嘩強かったんだね。知らなかった」

 

 葵は信号が青になるのを確認して歩き出す

 

「知らなくていいよ 過去のことなんか。特に中学のころは・・・」

「輝にとって中学時代は嫌だったの?」

「んー・・・・嫌でもあったし好きでもあったな。友達も面白かったし、でも親には苦労させたからさ・・・」

 

 あの頃は俺の反抗期だったから、いろいろ面倒をかけた

 友達が不良だからって心配させちゃっただろうし、“あのとき”にはすごく面倒をかけた

 

 

「そっか。輝も苦労してたんだね 向こうで」

「かなりね。これこっちに来て話したのお前だけだぞ」

「嘘、本当?」

「本当。翔もたぶん知らないだろうな〜」

「そっか えへへ」

 

 葵はなぜか笑っていた

 

「何笑ってんの?」

「ん?なんでもない」

 

 正直、中学時代のことを話すと、大抵の人は俺から離れて行くと思っている

 当然だ。むこうに住んでたときなんて人すら近寄ってこなかったんだから・・・

 でも、葵は知ってもなお、今まで通りに話してくれる

 そのことが俺にとって凄い嬉しかった

 

 

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ