第24話
朝起きると、昨日の騒ぎがなかったかのように片づけられていた
そして、置き手紙に、「今日ちゃんと学校こいよ」と翔の字で書いてあった
時計を見ると、時間はもう10時
「んー行かないとダメかなぁ・・・」
俺は準備をして、朝ご飯を食べて、学校に向かった
「あっ 来た」
休み時間の間に教室に入ると、最初に見つけたのが翔だった
「あっ来た・・・ってお前が来いって言ったんじゃん」
自分の席に座って、翔に言った
すると、他のクラスメイトも俺に気が付き寄ってきた
「事故ってお前バカだなぁ」とか「信号は守りましょう!」とか「ナースは綺麗だった?」とか「いいよな〜夏休み増えて!」とか色々言われた。
俺を心配しているやつは誰もいないよ・・・
質問を1つ1つ答えているとチャイムが鳴った
皆が「気をつけろよ」っと最後に言ってくれたとき、ちょっと泣きそうになったよ・・・
俺は久々に来た教室を見渡すと、葵の姿がない
「翔 葵は?」
「ん?あー・・・・ちょっとね」
「は?なんだよ ちょっとって」
「昼休みに話すから・・・」
翔はそう言って前を向いた
授業中、葵にメールをしてみたが、返ってこない
昼前にもメールをしてみたが返ってこなかった
昼休み、俺と翔と優美は、屋上に行って葵のことについて聞いた
「で、葵がなんで来てないの?」
「うん・・・そのことなんだけど・・・」
翔と優美は少し悩んでいた
「俺が入院してるときも、3日ぐらいしか学校行ってなかったよな」
「うん・・・」
「ということは、その3日間の間になんかあったんだろ?」
再び翔と優美は顔を見合わせて、決心したのか優美が話し始めた
「あのね?輝が葵助けて入院したじゃない?」
「うん」
「それがどこかで漏れたみたいなの・・・う・・うぅ・・・」
優美は何か言おうとしたが、泣き出してしまった。
すると翔が代わりに話してくれた
内容をまとめるとこうだ
俺が葵を助けて入院したということが学校中にバレる
そして、それを知った一部の女子生徒が葵に対して嫌がらせをした
最初はちょっとした嫌がらせだったのだが、次第にエスカレートし、3日目には葵のノートなどに、色んな嫌がらせの言葉を書かれていたらしい
話を聞いていると、イらついてきた
「翔・・・・それクラスのやつ知ってんのか?」
「いや、たぶん知らない 知ってるの俺らだけだと思うよ」
「そっか・・・んじゃ嫌がらせした奴知ってるか?」
「まだわからないんだ・・・お前どうする気だ」
「どうするって 犯人見つけて、そいつぶん殴る!」
「ちょ、ちょっと落ち着けって」
屋上から出て行こうとすると、翔に止められた
「んだよ!翔はムカつかないのかよ!葵が学校来れなくなったのそいつのせいだろ!」
「ムカつくよ。でもさ、輝がそいつらを殴ったところで何も解決しないよ!」
「んじゃどうすればいいのさ!」
「だから!今から考えるんだろ!」
「ちょ、ちょっと翔も輝も落ち着きなよ」
俺と翔が言い合いをしていると優美が止めに入った
「とにかくさ、輝は葵を学校に連れてこれるようにしてあげてよ。今の葵を学校に来れるようにできるのは私や翔じゃなくて、輝にしかできないんだから。その間に翔と私は嫌がらせした人を探し出すから。ね?」
「・・っ・・・わかったよ 悪かったな 翔・・・」
「いや俺も・・・」
なんかとその場は治まったが、俺は内心まだイライラしていた
もちろん翔も優美も俺と同じだろう。
でも翔の言う通り、俺が葵に嫌がらせした奴を殴っても葵は学校に来ない
優美の言う通り、まずは葵を学校に行けるようにしないと・・・
昼休みが終わると俺は先生に体調が悪くなったと言って早退し、葵の家に向かった
「あらっ輝ちゃん こんな時間にどうしたの?」
葵の家に走っていき、家の前におばさんがいた
「ちょっと葵に話があって、います?葵」
「ええ・・・いるわ。そっか、輝ちゃん知っちゃったか・・・」
おばさんは苦笑いをした
「ちょっと輝ちゃんに話したいことがあるから、ちょっと来て」
「え?ちょ、ちょっと」
おばさんに手を引っ張られ、近くのカフェに入る
カフェの中はランチタイムが過ぎているので、人はあまりいなかった
「輝ちゃん、とにかく飲みたいもの頼んでいいわよ」
おばさんはコーヒーを頼んで、俺はオレンジジュースを頼んだ
そして頼んだものが来て、本題に移る
「葵ね・・・昔もこういうこと一回あったのよ・・・」
「えっ?」
「知らないかしら?翔くんと葵が付き合ってるって噂が昔あったの」
「あ〜それは葵から聞きました。優美が誤解を解いてくれたとか」
「そうよ そのときにね・・・葵、今みたいなことになったの。最初は私、ただ恥ずかしいから行かないと思ってたのよ。あの子恥ずかしがり屋でしょ?でも3日ぐらい休んだぐらいにオカシイと思って翔くんに連絡したら、嫌がらせに遭ってるって言われてね・・・」
「それで嫌がらせした奴らは見つかったんですか?」
「いいえ 翔くんと優美ちゃんが探してくれてたみたいだったけど・・・」
おばさんは少し涙目になっていて、来たコーヒーに一回も口をつけていなかった
「でも葵、学校行けるようになったんですよね?」
「ええ そうよ。 毎朝、2人が来てくれてね。次第に行けるようになったみたい。でも今回は2回目だし・・・・それにちょっと傷が深そうなのよ・・・」
「1回目だろうが、2回目だろうが、俺は葵を学校に行けるようにしますよ。あいつのいない学校なんて面白くない。それじゃ俺、葵と話してきます」
俺はそう言ってジュースを一気に飲んで、立ちあがりカフェを出て行く
葵の家の前まで来て、さっきおばさんからもらった鍵で中に入る
そして、葵の部屋の前まで来て、ノックをするが反応がない
でも、ドアのカギはかかってなく、中に入れた
「葵、入るぞ」
葵の部屋に入り、見回すと葵はベッドの上で布団を全身被っていた
俺は、ベッドの横に座り話しかけた
「なんでお前が学校行かなかったのかは、翔たちから聞いたよ。んでこれが2回目ってことはおばさんから聞いた。ノートに何書かれてたか知らないけどさ、気にすんな。俺が勝手に事故ったのが真実なんだから」
「違う!私が飛び出して、それで輝が入院しなきゃいけなくなったの!だから私が悪いの!」
布団越しに葵が叫んだ
かすかに葵が泣いている感じの声がする
「葵 お前は悪くないよ。誰がなんて言おうとお前は悪くない」
「違うもん!私が悪いんだもん・・・・」
「お前・・・クラスの誰もそんなこと言ってなかったぞ。むしろ皆、俺がバカだとか言いまくってた。もちろん事故のことも知っているんだろうな あいつらも。でも誰か葵を攻めたやつがいたか?」
葵は黙ってしまったが、俺は言い続ける
「ノートになんて書いてあったかは知らない。でも、そんなのほっとけ。俺が書いた奴見つけてぶっ飛ばしてやるから、学校行こう?」
俺が言い終わって、葵の反応を見てみるが、黙ったままで動きもしない
すると、葵のおばさんが部屋に入ってきてコソッと言ってきた
「輝ちゃん 今日はもう良いわよ まだ退院したばかりだし、今日は・・・」
「・・・・・わかりました。でも明日の朝また来ますね」
俺はおばさんと葵の部屋を出る
「輝ちゃん ごめんね。こんなことになって・・・」
「いえ、これは俺のせいでもあるから・・・とにかくまた明日の朝来ますね」
「ええ よろしくね」
俺は自分の家に戻って、翔たちにさっきのことをメールして、イライラした気持ちを抑えようとしていた