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第22話

 

「いやぁ・・・輝が事故に遭って病院にいるって聞いた時は心配でしょうがなかったけど・・・まさか葵と一晩過ごすとは・・・」

「ね〜 私もびっくりだよ」

 

 俺が点滴を外しているときに翔と優美は楽しそうに言った

 

「違う!お前ら何勘違いしている!」

「北谷君 動かないで」

「あっ すみません」

「あははは〜 輝!看護婦さんと葵に手出したらダメだよ〜」

「優美、輝はもう葵に手出してるよ」

「あっそっか!」

「出してない!!」

「あ〜照れてる〜 私たちこれ以上いたら輝たちのお邪魔みたいだし学校行こっか」

「だね お邪魔しちゃ悪いからね。 んじゃ輝さっさと治して学校こいよ〜。あっもちろんこのことは内緒にしとくから! じゃ」

 

 翔たちは笑いながら部屋を出て行った。が、学校に戻ったら絶対シバく!

 

 俺の点滴を外してくれた看護婦さんは「今日からご飯が出る」と言って部屋から出て行った

 

 病室の中には俺と葵とおばさんだけが残る

 

「輝ちゃん 今回のことで感謝と謝っときたいの」

 

 おばさんは真剣な顔をして、俺の方を見てくる

 

「別にいいですよ もう済んだことだし」

「ダメよ これは葵の母親のけじめみたいなものだからちゃんと聞いてね。 輝ちゃん 葵を助けてくれてありがとうね。それと、こんなことを招いてしまってごめんね。こんなこと言っても許してもらえないと思うけど、これからはなんでも私たちに言ってちょうだい。輝ちゃんのことなら何でもするから・・・・本当に葵を助けてくれてありがとう・・・」

 

 おばさんは深々と頭を下げ、泣きながら謝った

 

「おばさん もういいですよ 頭上げてください。もうそういうのやめましょ いつも通りにしてください」

「ごめんね・・・ほんとにありがとう・・・」

 

 しばらく、おばさんは泣いていて少し治まると、部屋を出て行った

 

 

 

 おばさんが帰ってきて、スッカリいつものおばさんに戻っていて、ベッドで寝ている葵について説明させられた

 

「そっか〜 輝ちゃんは私の葵をそんな大事にしてくれてるんだ」

「んーまぁ助けたぐらいですからね。妹みたいなもんです」

「ふ〜ん」

 

 おばさんはニヤニヤしながら聞いていた。

 なんか雰囲気が嫌だったから話を変える

 

「そういえば、ここって個室ですよね・・・それもなかなか良い・・・」

「あ〜だって一番いい病室だもん」

「なんですか そのホテル感覚・・・」

「大丈夫よ お金は私たちが出すからね 助けてくれたお礼。ほんとはもっとしたかったんだけど輝ちゃんのご両親から止められてね〜。」

 

 おばさんは残念そうに言ったが、ここで一番いい病室なのにその上ってどこに行くんだろ・・・

 

 よくTVでVIPが入っているぐらいの病室で俺はここで過ごしてもいいぐらい広い

 まぁ天井は白いけどね・・・

 

「あっ そうそう輝ちゃんのご両親から伝言預かってるの」

「そうなんですか?」

「えーっとね・・・輝、俺たちはもう帰るよ。葵ちゃんと仲良くな!だってさ。」

「そうですか」

「寂しくないの?」

「んー別に寂しくはないですね〜」

「ふ〜ん そうなんだ」

 

 俺と俺の親はいつもこんな関係だ

 何も言わなくてもなんとなくわかるし、むこうもそれをわかっている

 だから必要以上の言葉は言わない

 

 

 

「輝ちゃん 私ちょっと用事あるから行ってくるね」

「了解です」

「葵!ほら!起きなさい!」

 

 おばさんはベッドで熟睡している葵を叩き起こそうとする

 が、俺が寝ていた2日間ほとんど寝れていない葵はなかなか起きない

 

「おばさん 別にいいですよ ここに置いてっても」

「だーめ 今日学校があるのよ」

「もう昼ですよ?」

「・・・学校はダメでも、せめて家に帰らせないと 輝ちゃんの寝るところがないじゃない」

 

 さっきから顔を軽く叩かれている葵は、まだ起きない

 

「ダメだわ・・・まったく起きないわ・・・」

「いいですよ 別にここで寝かせておけば。俺眠くないし」

「んー・・・そうね・・・お言葉に甘えさせてもらうわ・・・」

 

 おばさんは肩を落とし、深いため息をつきながら部屋を出て行く

 

「あっ おばさん。葵、夕方には連れて帰ってください」

「はーい もちのロンよ。それじゃ夕方に」

 

 おばさんが部屋から出て行くと、また静かになり葵の寝息だけが聞こえる

 

 

 

 本を読み始めて半分ぐらい読んだころに、ベッドで病人のように寝ていた葵がムクっと起き、朝と同じようにキョロキョロしている

 そして、俺を見つけると安心したようにベッドに寝転んだ

 

「おい 寝るな そろそろ起きろ 葵」

「んん〜・・・いや・・・」

「んん〜・・・嫌。じゃねーよ 起きろ」

 

 葵は寝るのをあきらめたのか眠気を払おうと、目をこすり何とか体を起こす

 

「お前今日は家に帰れよ」

「嫌・・・私ここにいる・・・」

「昨日は辛そうだったから、ここで寝かしたけどもう大丈夫だろ?」

「まだ無理」

 

 完全に駄々っ子モードだ・・・

 この駄々っ子モードを夕方までにどうにか解除しないといけない

 

「葵 お前汗臭いぞ 家で風呂入って明日また来いよ な?」

「え!?・・・・別にいい・・・・」

 

 葵は顔を赤くしたが、帰ろうとしない

 

「汗臭いの気にするんだったら、家帰りなって」

「気にしてないもん だからここに居る」

「はぁ・・・・」

 

 今の葵に何を言っても無意味だと感じた俺はもうすぐおばさんが来るから、任せておくことにした

 

 夕方になっても、葵の駄々っ子モードは終わらない

 

「葵!輝ちゃんの寝るところが無いでしょ 一旦家に帰ろ。服も昨日のままだし」

「嫌!輝がこうなったのも私のせいだもん!退院するまで私ここに残る!」

「もう。わがまま言わない!ほらっ帰るわよ!」

「い〜や〜〜」

 

 おばさんは葵の手を取って引っ張るが、それに抵抗する葵

 それにしても、葵が素の状態でもここまで自分を出す葵は珍しい

 俺、翔、優美の前では時々軽く甘えたりするけど、ここまで自分の欲求を出すことはない


「葵!輝ちゃんに襲われるわよ!」

「えっ・・・」

「いやいや、何言ってんですか・・・襲いませんよ。それに葵も何戸惑ってんだよ」

「ちぇ・・・襲ってもいいのに・・・」

「親が娘の前で何言ってんですか・・・」 


おばさんが変なことを言って、俺が注意している間に葵は布団に包まり完全防御体勢に入ってしまった


「も〜輝ちゃんのせいだよ・・・」

 

 おばさんは俺のせいにし、こっちの方を見て助け舟を求めてきた


 そして、俺は葵のために心を鬼にする

 

 

「葵?聞け。お前のせいで俺が入院したのは真実かもしれないよ」

 

 ビクっと葵の体が揺れたが、ここで引いたらダメだ!と自分に言い聞かせ話を続ける

 

「・・・・・・」

「でもな。葵、俺は自分の意思でお前を助けた。その結果がこれだ」

「だから・・・私のせいで・・・」

「違う!これは俺が招いた事故だ お前は悪くない。俺はお前を助けてなかったら、俺は怪我をしなかったし、入院もしなかっただろうな」

「だったらなんで私を助けたのさ・・・・」

「俺は自分が怪我をして入院するよりも、葵が怪我をして入院するほうが俺にとって辛いって一瞬で思ったんだろうな。もしあそこで助けてなかったら俺は、たぶん自分自身を恨んでいただろうな 死ぬほど。だから、俺はお前を助けた。でもお前は自分を犠牲にして俺が退院するまでここにいると言う。それは俺が助けた意味が無くなってしまうんじゃないか? 葵が健康でいてほしいから助けたのにここにいたら結局一緒じゃんか。だから夜は帰ってちゃんと寝ろ。また朝から来てもいいからさ」

「・・・・・・・・・・うん・・・わかった・・・」

 

 なんとか説得できたみたいだな・・・・

 我ながら最高の説得だ

 葵はベッドから出て、おばさんについて行く

 

 おばさんはなんか感動しているのか、していないのか、俺の方を見てグッっと親指を立てて部屋を出て行った

 

 

 

 その後おばさんからメールで

 −輝ちゃん 今日の葵の説得ありがとう

 葵疲れてたのかな?お風呂入ったらすぐに寝ちゃった

 でも、また明日朝から行くみたいだよ

 

 あ、そうそう今日の輝ちゃんカッコ良かった

 葵を説得する「俺は自分が怪我をして入院するよりも、葵が怪我をして入院するほうが俺にとって辛い。たぶん自分自身を恨んでいただろうな 死ぬほど」ってところは私が胸キュンしちゃったわ(笑)

 あー私もあんなこと言われたかったな〜

 それじゃおやすみなさい。−

 と来た

 

 これは褒めてもらってるのかな・・・それとも遊ばれてるのか・・・たぶん遊ばれてるんだろうな・・・

 てゆうか、また俺すごい恥ずかしいこと言ってるじゃん・・・・

 

 返信には

 −いちいち人のセリフ書いて送ってこなくていいです

 おやすみなさい−

 と返しておいた

 

 それにしても、本当に恥ずかしいことを言ってしまったなぁ・・・

 あまりの恥ずかしさで叫びたくなったが、病院で叫んだら大変なことになるからやめた

 

 

 


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