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第21話

 

 

「う・・・うぅ・・・」

 

 目を開けると白い天井が見える

 それもなんか頭がガンガンする・・・

 

 横を見てみると、葵と葵のおばさんがバタバタしている

 音は聞こえないんだけど、葵は泣きながらなんか言っているみたいだ

 

 しばらくすると、頭が活動してきたのか音が聞こえるようになってきた

 

「輝!輝!よかったぁ 私・・・私・・・」

「大丈夫?輝ちゃん? 私わかる?」

 

 葵もおばさんも泣きながら質問してきた

 

「はい わかります」

 

 すると、白衣を着たお医者さんが来て何やら検査らしきことをしてきた

 

「自分の名前はわかるかな?」

「北谷 輝です」

「それじゃここはどこかわかるかな?」

「たぶん病院でしょうね」

「この指は何本に見える?」 

「3本です」

「はい 大丈夫だね。えーっと頭は大丈夫みたいですね。あと・・・・・」

「はい ありがとうございます」

 

 お医者さんは色々おばさんに説明をして、部屋を出ていった

 

 

「おばさん なんで俺ここに?」

 

 よく事情が理解できないからおばさんに説明してもらった

 学校の帰りに葵が横断歩道を赤信号の状態で出てしまい、車とぶつかりそうになったときに、葵を俺が助けたが、俺は車にぶつかってしまった。

 ここまでは俺も覚えている

 

 そして、すぐに救急車に乗せられ病院で治療して、それから俺は2日間寝続け、一時は生死を彷徨ったらしい

 

 

「ほんとにごめんね ほんとに助かってよかった」

 

 最後におばさんはそう言って泣きながら謝っていた

 

 それからが大変だった。

 俺の両親が海外から来て、大丈夫か!と何回も聞いてくるし、車を運転していた中年のおばさんも謝ってきて色々なんか言っていたが、よく覚えていない

 一番覚えているのは、葵が俺に抱きつきながら泣いて、俺は抱きつかれたことで物凄い痛みを感じていたこと

 

 俺が目覚めて一日目は慌ただしく、俺の頭もちゃんと動いていなかったから、気がつけば夜になっていた

 いつの間にかおばさんと俺の両親は帰ったらしく、葵だけがなぜか残っていた

 

「葵はなんで家に帰らないんだ?」

「だって・・・私のせいで・・・こうなったし・・・」

 

 昼間あんだけ泣いていたのにまた泣きそうになっている

 

「ていうか、お前どうしたの?目の下クマができてるぞ」

「心配で・・・寝れなかった・・・」

 

 泣きそうになりながらもなんとか耐えている葵を見ているのはなんだか俺自身も悲しくなってきた

 

「葵?もう俺大丈夫だからさ、家帰って寝ろ」

「・・・嫌」

「嫌じゃない なんか俺よりお前の方が危ないぞ 全然寝てないだろ?」

 

 見た感じ葵は本当に今にも崩れそうなぐらい弱っている感じがする

 これ以上負担をかけると本当に葵の方が危ない

 しかし、葵は頑なに首を横に振り話すら聞こうとしない


「・・・はぁ。わかったよ 帰れとはもう言わないから、ここでとりあえず寝てくれ。俺はお前のほうが心配だよ」

「・・・うん」

 

 葵は素直に頷き、俺のベッドに入ってこようとする。

 

「お、おい なんで俺のベッドに入ってくる」

「え?あ、そっか・・・ごめん」

「い、いや別にいいけど・・・」

 

 戻ろうとする葵を止め、葵が寝れるスペースを空けて寝かす

 だけど、GWで寝た時は海外サイズだった、日本で言うダブルベッドって感じ

 今は普通のベッド、もちろん葵との距離は肩と肩が当たってしまう

 

「輝・・・ごめんね・・・」

「もういいって この通りもう平気なんだから」


 しばらくして、安心したのかすぐに葵はスゥスゥと寝息を立てて寝ている

 さすがに病院のベッドで2人は寝れないから、俺は葵が寝たのを確認して椅子に座る

 しかし、2日間も寝続けていたから、俺はまったく睡魔が来ない

 昼の間に、俺の両親に部屋に置いてある小説を持ってきて、と言って持ってきてもらった本を読んで時間をつぶした

 

「輝ぅ・・・・輝ぅ・・・」

「ん?」

 

 横で寝ている葵が寝言を言いながら震えながら俺の名前を呼んだ

 そして、俺が葵の頭を撫でてやると、安心したように震えが止まる

 俺がいなくなる夢でも見てるのかな・・・

 いや、それは俺の自惚れか・・・

 

 

 結局、1時間に1回は葵が不安がるので頭を撫で、安心したら本を読むの繰り返しをしていると外が明るくなってきて、持ってきた本も殆ど読んでしまった

 

 時計を見ると5時を指しており、点滴交換までまだ少し時間があるからトイレに行った

 

 トイレとしているときにふと『寝ている間、トイレはどうしていたんだろう』と不思議に思ってしまって考えていると、前に見た映画で寝たきりの人がトイレをするときに看護婦さんが尿瓶を使うシーンがあることを思い出し、ものすごく恥ずかしかった。

 

 ベッドに戻ると、さっきまで寝ていた葵がキョロキョロしながら何かを探していた

 

「どうした?葵」

「・・・・・」

「?」

 

 何かうつむいてじーっとしている葵を不思議に思いながら椅子に座り、次の本を手に取る

 

「・・・・・遠く・・・・思った・・・」

「ん?なんて?」

 

 葵が何か言ったのはわかったのだが、何を言ったのが聞こえない

 

「輝がどこか遠くに行ったと思ったの!」

 

 次ははっきりと聞こえ葵のほうを向くと葵はうつむいて泣いていた

 

「ごめんな。もう大丈夫だよ 葵を置いて遠くにいかないから な?わかったか?」

「うん・・・」

 

 今にも崩れてしまいそうな葵を抱きかかえ、しっかりと葵に聞こえるように俺は言った

 すると、葵は俺の腕の中で安心して再び寝てしまった

 

 ちょっと時間が経って俺はさっき葵に言った言葉を思い出していた

『葵を置いて遠くにいかないから』

 よくよく考えてみれば告白だよな・・・これ・・・

 一気に顔の温度が高くなっていく

 

 俺は、心の奥に隠れていたモヤモヤしたものが今にも出てきそうで、それを抑えようとした。


 


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