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なんとか伝手をさぐる。

 リンの慌てた声で目が覚めた。


「ユーキ!ユーキ!」


「は?」


 よだれが口の端から出ていた。疲れていたのか、ぐっすりと眠っていたようだった。リンは、わたわたと手を動かしながら言う。


「ララちゃんが戻ってこない!どこ!?」


「はあ!?」


 俺はがばりと起きた。ノアも、部屋を右往左往している。


「いつからだ!?」


「起きたらいなくて、全然帰ってこないの!どうしよう、ユーキ!」


 とリンが、半べそを掻いて言った。ララは意外にも几帳面と言うか、長い時間いなくなるときは書き置きを残す。そして、昨日の件もある。どこ行ったあいつ!?適当にその辺をパンをつまんで急いで宿を出る。


「どこ行くの、ユーキ!?」


 リンが歩きながら、訊ねた。ノアも、横から心配そうに俺を見ている。


「どこっつったって、思い当たるところを」


 と教会の前で立ち止まる。扉が開いており、参拝者がいくらかいた。ララの姿はない。本通に出る。雑然と人通りが多い。本通を抜け、枯れ木の並木道を過ぎる。人通りも落ち着いてくる。堀に囲まれた、お城のような建物があった。門の前には、やはり兵士が2人警備している。


「ララは、ここへ?!」


 と兵士に訊ねる。

 兵士は、無言で俺たちを見ている。


「ララちゃん、ここにいるんでしょ!?」


「すみません。お答えできません」


 ノアが、リンの杖を取り


「ララ、どこ」


 とその大きな瞳ですっと兵士を睨んだ。兵士は、その小さな女の子の鋭い視線とただならぬ気配にうっと怖じ気づきながらも、「お答えできません。通すこともできません」と答えた。ノアの周りに風が舞い始める。


「バカ、やめとけ」


 と俺はノアから杖を取る。

 ノアは目を細め俺を睨んだが、すぐにそっぽを向いた。


「これを、読んでいただきたい」


 俺は、一通の封筒を差し出した。タバコのお爺さん、平田さんに書いてもらった手紙が入っている。前王と親交があるようで、なんとか仲介してもらって城に入ることができればララに会えるかもしれない。

 兵士は封筒の裏面を見て「ヒラタ?誰だそれは。知らぬものの手紙を王族のものに渡すわけにはいかん」と封筒を俺に突き返した。 


「渡してくれ、頼む、親交がある人からの手紙だ」


「王族にそんな簡単に接触することはできない。すまないが、これまでだ」


 と兵士は、少しの憐憫を持って俺たちに言った。

 ダメか。兵士の様子から、ララは中にいるだろう。通すなと言いつけているのもララに違いない。


「邪魔しました」


 と俺たちはその場を後にした。


「な、ユーキ、なんで!?」


「リン、あのまま突っ込んでも捕まるだけだ。違う方法を探ろう」


 俺はパーカーのポケットに手を突っ込んだ。缶コーヒーと、平田さんの封筒と、くしゃくしゃの紙があった。紙を取り出し開ける。あいつ、近くに住んでるんだろうな。

 紙に書かれた住所をもとに、何度も道を尋ねながら、明らかに高級住宅が並ぶ小高い丘へとやってきた。


「ここだ」


 一軒の家の前で立ち止まる。大きな門に、広い敷地。本当に貴族だったんだな。しかし、インターホンのようなものはない。どうやって入れば、と立ちほうけていると「入る」とノアが門を押し開いた。「ノ、ノア!?」とリンが声を上げる。そのとき、開いた門からビー、ビー、と警備音が鳴り響いた。やべえ。

 執事のような格好の男が二人やってくると、少し離れたところから訝しげに俺たちを見て、「何用でございますか」と訊ねた。


「セノ、セノに面通しを願いたい!」


 最後の伝手だ、頼む、と言わんばかりに、俺はセノから渡されたくしゃくしゃの紙を精一杯まっすぐに伸ばし、その執事に渡した。執事は、ふむ、と紙を受け取り、目を通す。「確かにセノ様の字ですな。少々お待ちを」と執事は家へ戻って行った。いくらかたって執事は戻ってくると「こちらへ」と玄関を通される。


「勇者試験以来だね、ユーキ」


 広々とした客間に、いけ好かないオールバックがいた。セノだ。知り合ってみると、裏表のないいいやつに見える。


「セノ、久しぶりだな」


「お連れの二人も、田舎からはるばる。ララはいないんだね」


 と悪気はないんだろうが、セノは言った。いや、悪気はあるか。

 リンはきょろきょろとその豪邸に戸惑い、ノアはリンと俺の間にいながら、堂々として見えた。座り心地の良い高級感あるシックなソファー椅子に座り、セノに言う。


「頼む、王と、いや、ララに面会したい。ララは城にいる。俺たちでは面通しがかなわない」


「彼女は城に戻ったのか」


「戻った?」


 ノアが、ぼうっとセノの言葉尻を捕らえた。


「いや、彼女の口から訊いていないのなら、やめておこう。まあいい、しかしこの僕を持ってしても、なんの伝手もなしに城のものに面会は厳しいな」


 俺は、パーカーのポケットから封筒を取り出す。


「これは、前王と親交のあった人からの紹介状だ。これしか伝手はない」


「ふむ」


 とセノが封筒を手に取る。


「先代の王か。隠居しているが、ふらっと街に現れるような庶民的な人でね。父さんと知り合いだ、なんとかなるかもしれないな」


「セノ!」


 おおお、希望が見えた。

 セノの好意に甘え、セノ宅で一泊させてもらう。気もそぞろで、早くベッドについたが、妙な興奮からか眠れない。うつらうつらと夜が明ける。客人扱いで、執事たちの用意してくれた朝ご飯を、しかしあまり出ない食欲のなか少しずつ食べていると、セノが現れて言う。


「おはよう諸君。朗報だ。今日の昼にも、会うことができるだろう」


「ほ、本当!?セノ、めっちゃありがとう!」


 リンが大はしゃぎで言った。

 ノアは、途端にむしゃむしゃと食べはじめた。


「ありがとう、セノ。助かった」


「いいんだいいんだ、こっちも恩があるからね。腹越しらえはしっかりと。これからが大変だ」


「ああ」 


 と俺はお言葉に甘えて朝ご飯をかき込み、身支度をするとセノに礼を言い邸宅を出た。

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