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うちに帰るまでが異世界転移です

 行動不能となった王たちを横に、渡と紬は男子生徒三名へと話しかけた。


「さて、今の状況は理解できているな?」

「あ、あぁ……なぁあんた、俺達は家に帰る事が出来るのか?」

「そのことについて会話をしに来た」


 因みに、渡と紬の顔を彼等は正しく認識出来ていない。念の為に渡が、話しかける前に認識障害の魔法を掛けておいたからだ。


「か、帰りたい! 今すぐに! パパとママに会いたい!」

「お、おう。まぁ帰る事は可能だが「馬鹿な!!」……煩いな」


 渡が帰還する事が可能だと言うと、魔導師団長……嘗ての弟弟子が有りえないと叫ぶ。

 なぜなら魔導師団長は、召喚陣について徹底的に調査をし、どうあがいても送還を行える方法など無いと結論付けた。だというのにも拘らず、それを覆すような事を渡がいうモノだから……。


「あり得ない! いや、万が一に出来たとしても、既に召喚陣を吹き飛ばしたでは無いか!」

「吹き飛ばしたのは確かだが、出来る者は出来る。しかしそれをアンタに説明する義務も義理も無い」

「ど、同門だろう!」

「は? 師匠の元から逃げ出した奴がよく言う」


 一月で逃げ出した……とは言え、その一月がこの国で魔導師団長となる為の下地になっているのだから、どれほどのスパルタ教育だったのだろうか。

 だが渡からしてみれば、基礎すら出来て無い奴と言う認識で……同門どころか破門された相手と言うのが正解。


「アンタは師匠から破門されてるんだ。だから俺が何かを教える理由など無い。もう良いな? 邪魔をするなら……そうだな、師匠の十八番だった呪いでも喰らっておくか?」


 呪いと聞き、魔導師団長は顔の色を無くして後退り。壁際にぶつかっているというのに、まだ下がろうとして足をばたつかせている。


「さて、邪魔は居なくなった。で、帰れる訳だが……此処で一つ問題が有る。それは君等の記憶だ」

「記憶……何か問題でも?」

「此方で戦う訓練をしただろう? まぁ、今だと出来たとして火種を熾せるかどうか程度の魔法だろうが……それでも彼方に戻れば大問題だ」

「あ……でも、言わなければ!」

「身体能力も向上し、それらを隠すのが大変だ。さて、君等にはソレを隠し通せる自信はあるか? 少しでもバレたとなれば……実験動物だぞ?」


 渡程の力が有れば、襲って来た者を殲滅する事などたやすいだろう。

 しかし、この世界に来て少し訓練をしただけの彼等は、彼方の世界の人に比べ少し強い程度。身体能力だけで言うなら、アスリートや軍人よりも少し劣る程度だろうか。

 そして、其処に魔法と言う要素が追加されようとも……その魔法は小さい火種を熾せるかどうか。これで身を守れと言う方が無理である。


 そして、そんな説明を受けた三名は……当然言葉を失う。想像してしまったのだ。地球に戻った後の自分達の姿を。


「さて、此処で君等に選択肢を与えよう。全ての力を封印し、記憶を曖昧にした状態で地球へと戻る。そしてもう一つは、地球へと戻らず此方の世界で過ごす事だ……まぁ、後者を選べば彼方では事件になりそうではあるがな」


 記憶を弄られる。その行為は人にとって恐怖である。

 更に言えば、この三名は此方の世界に来て以来、認識やら思考などを弄られていた訳で……渡の提案に対して恐れ無い訳が無い。

 だがしかし、それを行わなければ……地球へと戻った際どんな目に合うのかは先ほど想像してしまったばかりだ。


「ぼ、ぼくは……帰りたい!」

「ま、俺も地元に女の子達を待たせているからな」


 少し考えてから、二名の男子が地球へと戻る事を選択。しかし一名は沈黙を保っていた。


「そっちの君は?」

「……俺には、待ってくれている人など居ない」


 シーン……と、静寂が場を支配した。

 帰りたいという気持ちになる為に必要な物は何か? 待っている人が居たり、美味しい食べ物が食べたいという気持ちが有ったり、便利な環境に居たいと……何かしらの欲がエネルギーとなっている。

 では、そのエネルギーを持たなければどうだろうか?


「俺には、彼方に家族も居なければ友達や恋人と言った存在も居ないからな」

「だが、お前を育ててくれている人が居るのでは?」

「はっ! あいつ等は金の亡者なだけさ。俺の両親が残した遺産が欲しい為に俺を拾っただけで、面倒など見て貰って無い」

「なら、此方に残る気か? この世界はかなり危険だぞ?」

「なんも無い世界よりはマシだろう。ま、お前には意識を戻してもらった感謝の気持ちはあるが……戻りたいとは思わねーよ」


 そう言う彼の目をみて、渡は説得など無理だなと判断した。


「そうか……なら餞別だ」

「ん? あぁ、すまん」


 ただ、折角助けたという事で、渡は餞別にと少し良い程度の武器防具一式と、魔法を学ぶ為にと師匠が執筆した本の写本を彼に渡した。


「さっさと行け。此処に残ってたらまた捕まるぞ」


 シッシッと渡が手で追い払う様にすると、彼は渡に一礼し颯爽とこの場から消えて行った。


「良かったの? 戻ったら結構大変だと思うんだけど?」

「かまわんさ。真実を知って居るのは俺と紬のみ、そして俺と紬は神隠しに遭ったという事実は彼方に残らないからな」


 何の問題も無い。そう渡は断言し、帰る為に作業をさくさくと終わらせていく。


「さて、先ずは封印術……っと、コレで良し。次に記憶の改変は……ま、二人は意気投合して連絡を忘れ遊び惚けていたという事にしておくか」

「うわぁ……なんというか悪の組織みたいだ」

「ま、言ってる事だけをそのまま受け取ればな。ただ、やっている事は全てを丸く収める為の物だから悪では無いな」


 兎に角これで、地球に戻った後も上手く全てが収まるはずだ。ただ一名の神隠しに遭った者を除けば……と、渡は考えながら、帰還に必要な術式を行使する為に移動をする事にした。


「あれ? 此処でやらないの?」

「この場でやったら余計な者が居るだろう……着いて来られても面倒だし、術式を見られるのもな」

「あぁ……なるほど」


 そんな訳で、渡は紬と他二名を連れ転移魔法で王城から脱出。

 誰も居ないだろう外の空間にて、帰還の魔法を行使した。


「さて、先ずは二人を送るぞ?」

「まぁ、その二人の何だか目の焦点が有って無いけど」

「何、向こうに戻って数分すればすぐに元通りだ」


 そう言いながら渡は、マーキングポイントの一つに彼等を転移。

 その後、次は自分達の番だという事で、今度は渡の魔法研究室へと界渡りの魔法を発動させた。


 これにて渡の紬救出作戦は終了となる。

 色々と気に生る点は残ったモノの……渡達にとって最良と言える結果で終わったのではないだろうか。

何となく一人は残してみた。

そういう選択肢が有っても良いかな? って、ただ、その理由付けが問題で……渡が納得しそうなものをは何じゃ裸ほいと考えた結果、この様な形に落ち着いた感じですね。


何というか、そんな彼で短編か何かが書けそうですが……如何するかは考えてなったり。

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― 新着の感想 ―
[一言] 学校に友達とか好きな人とか居なかったんかな? 城から慰謝料貰わんかったね。
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