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野原の作り方

 王城を我が物顔で進む渡と紬。

 そんな彼等がたどり着いた先は、王と魔術師団長に彼等を守る為の騎士達……と、目が虚ろとなっている三人の学生。


「貴様! 王の御前なるぞ!」


 威勢よく騎士の一人が叫ぶ……が、渡達にその様な事など関係は無い。


「だからどうした。其処に居るのは貴様らの王であって俺の王では無い。跪く理由など欠片も無いな」

「な、なんだと!?」


 渡の言葉に激怒した騎士が一人、問答無用で渡へ斬りかかる……が、結界魔法は健在であり、騎士の攻撃はその結界に阻まれ……。


「邪魔だ」


 パチンっと渡が指を鳴らしたかと思うと、騎士の胸のあたりで小さな爆発が起きた。

 爆発をその身に受けた騎士は、その衝撃で吹き飛ばされ壁へと激突……そのまま、一切動かなくなってしまう。


「……!?」


 そして、その様な一瞬の攻防を見た魔術師団長が絶句し、そのままガクブルと震え出したでは無いか。


「師団長よ、如何したというのだ!」


 王が師団長へ言葉を掛けるが、師団長は青ざめた顔をしながら震え、何か言葉を話そうとしているのだが……声が余りでないのかカチカチと歯を鳴らしているだけの様にみえる。


「ん? あぁ、ふーんそういう事か。其処の師団長は見覚えがあるな」

「あ、あ、あぁぁぁぁぁ……やっぱりそうか、そうなのか……」


 渡と師団長は顔見知りだったらしい。しかし、師団長の震えようを見るに、碌な話では無さそうだ。


「師団長よ……お主は何を知っている。あの者は何者なのだ?」

「へ、陛下。申し上げます。今すぐ敵対行為をおやめください」

「何を馬鹿な事を。奴は我が城に侵入し、勇者を攫おうとしているのだぞ!」

「それでもです! アレと敵対してはなりません……アレは……天災と呼ばれた魔導士の弟子にございます」

「ん? ではお主と同じであろう。何を恐れる必要がある」


 魔術師団長は、渡と魔術師団長が同門であるという。が、それだけならば此処まで震える理由が全く解らない話だ。

 王もまた、魔術師団長の反応に疑問を持った。が、その答えは渡の口から帰って来る。


「その男は土下座をしてまで師匠の弟子になったが、たった一か月で逃げ出したんだよ」

「だ、黙れ! この黒狼王(ブラックフェンリル)が!」

「おぉ……なんとも懐かしい呼ばれ方だな」


 渡と魔術師団長の会話に全員が凍り付いた。

 それもそのはずで、黒狼王(ブラックフェンリル)と呼ばれた冒険者の事を知らないモノなどこの場には居ない。

 やれ、ドラゴンをソロで倒しただの、最高難易のダンジョンを踏破しただの話題に尽きない謎の人物であったからだ。

 そして、その様な力の持ち主ならば……と、権力者は自分の手駒にする為にあの手この手を尽くしたのだが……一年以上前ぐらいから、全くその活動を聞かなくなった存在。


「生きていたのか……丁度良い! お主、我に仕えよ!」

「断る。誰が盗賊の王なんぞの下に着くか。貴様らは俺の大切に手を出したんだぞ? その様な者に仕えるなどありえないだろう」


 勧誘する王と拒絶する渡。一触即発と言った空気が流れる……が、此処で成大に笑い始めてしまった者がいた。


「くっ……ぷっ……あはははははは! 黒狼王(ブラックフェンリル)って! 黒狼王(ブラックフェンリル)って何さ! 君そんな話しなかったよね。武の事など言えないぐらい黒歴史じゃないか!」


 ゲラゲラと腹を抱えて笑う紬に、渡は何とも言えない表情になる。

 それもそのはず。この話を紬達にしたのなら、絶対にネタにして揶揄って来る事が分かっていたからだ。なので秘密にしていた……して居たのと言うのに、ここに来て紬にバレた。

 この野郎! 紬にばらしやがって! と、渡の怒りを含んだ視線が嘗ての弟弟子へと突き刺さる。


「へ、陛下! 彼等は放置してください! アレは私が一月しか耐えられなかった師の特訓を、五年以上もその身に受けていた者にございます!」

「我が国の兵力を全て投じても勝てぬと?」

「アレと戦うのであれば、ドラゴンと戦った方がマシにございます」


 ガクガクと怒りの視線を浴びながら魔術師団長は王へと願う。このままでは殺されてしまう! と。

 ただ、渡はその話に付き合うつもりなどない。まずやるべきは……と、さっさと行動へ移す。


 パチリと再び指の鳴る音が響いた。

 ビクッ!  と反応する渡と紬以外の者達。しかし何らかの魔法が発動したはずであるのに、何も起きておらず「何事?」と言った感じで辺りを見渡し……異変に気が付いた。


「あ、あれ? 俺達は……」「え、え……なんで? どうして戦う事を……」「う、あ、帰りたい! パパとママ此処から帰りたいよぉ!!」


 意識をしっかりと取り戻した〝男子生徒〟の三名。彼等は現状起きている事を理解した様だ。

 家に帰りたいと言う者、戦う事を自ら選んだ事に疑問を覚える者……と、彼等は魔法の効果から完全に脱したと言える。


「な、何故だ! 洗脳に成功したハズでは無かったのか!」

「魔法が解かれたようです!」


 慌てる王や魔導師団長達。だが、渡は彼等を無視して次の作業へと取り掛かる。


「さて……次は遺跡から持ち出したと思われる召喚陣だな」

「壊すの?」

「当たり前だろう。こんなもの残してたらまた被害者が出る」


 魔法陣が有る場所を魔法で見つけ、その場所に向かい渡は魔法による攻撃の為に狙いを定めた。


「結構地中深くと言った場所だな……なら、あの魔法が有効そうだ」

「……何だか不安になるんだけど?」

「大丈夫だ。コレは地球で学んだものをヒントに作りだした魔法でな、地下にあるシェルターを吹き飛ばす為の物だ」

「って、ソレ兵器じゃないか!!」

「そうともいう……行け! 〝バンカーバスター〟」


 渡が魔法名を告げながら、拳を地面に向かって打ち抜く。

 すると、巨大な杭のような形をした魔法が、地面を抉りながら突き進んで行き……途中で止まったかと思うと、盛大な爆発音が響いた。


「うむ、完璧だな」

「あ、あ、あわわ……噴火したみたいに見えるよ」


 地面を吹き飛ばし、土や石や岩を巻き上げ大爆発が王都から少し離れた位置で起きている。

 その光景を見た者達は……まるで地獄の蓋が開いたのでは!? とすら感じているようで……。


「ま、ま、まじゅちゅしだんちょ……あ、あれはなんじゃ?」

「へ、へいか……わたしにもわかりませにゅ……」


 渡の仕出かした魔法は、異世界において何やら新しい逸話を作り出しそうな気配がするのだが……。


 とは言え、コレで再び地球からの召喚は簡単に行えなくなる訳で、渡は良い仕事をしたと言わんばかりに紬に向けて、グッとサムズアップをするのだった。

師匠と共に渡君もかなり有名でしたと……良い意味でも悪い意味でも。


因みに、二つ名の理由。

黒髪黒目が珍しいという理由がまず一つ。

次に、フェンリルと死闘を繰りひろげ、手名付けたという逸話があるからだったり……合わせてこの二つ名になりましたと言った感じです。

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― 新着の感想 ―
[一言] フェンリルてなづけ・・・ですって・・・。 これは人化犬耳娘が紬と壮絶な視線バトルをする流れですね(違
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