やばい奴が来た!?
「紬、俺から離れるなよ」
「う、うん」
敵を目の前に自然と二人は腕を組み……。
「貴様ら! 何をいちゃついている!」
どうやら、豪華な装備の指揮官には良い感じで挑発になった様だ。
とは言え、渡がやろうとしているのは接触して居ないと意味が無い。そして、渡がくっ付いてまでやった行動と言うのは……。
「構わん! あの男をヤレ!」
指揮官が兵士達に攻撃を指示。
そして、その命令を受け剣に魔法にと多数の攻撃が渡達を襲う。
「わ、渡危ないよ!?」
「大丈夫だ。この程度なら意味など無い」
そう渡が言うと、渡達の五十センチ手前ぐらいで全ての攻撃はその勢いを静止した。
「な……なんだと」
その光景に目を見開く指揮官。
それもそのはずで、今攻撃を行った者達はこの国において最高レベルの者達だ。その様な屈強の兵達による攻撃を何の被害も無く防ぐなど、彼にとってはあり得ない事であった。
「結界魔法と言ってな、この程度の攻撃ならば簡単に防ぐ事が出来る」
「へぇ……それじゃ、この結界を抜く方法ってあるの?」
「師匠レベルの攻撃であれば可能だろうな」
まるで世間話をするかの様な渡と、攻撃を簡単に防いで見せた事で安堵しそれでも離れる事をしない紬。
彼等はこの場の敵など眼中にないと言わんばかりに、結界魔法を維持しながら前へ散歩をするかの様に進み始めた。
「き、貴様ら!! 全員何としてでも奴等を止めろ!!」
そう叫びながら、自らも剣を手に切り掛かるのだが……ガキィン! と言う衝撃音を響かせるだけで、結界魔法を全く抜く事が出来ず、渡達の進行をまるで虫が移動する車にぶつかるかの様な行動しかとれず、次第に兵士達の心はぽっきりと折れていった。
「師匠が見たらなってないと……笑うだろうな」
「笑うの!?」
「あぁ、それも盛大にな。あの人は理不尽に襲う盗賊を叩き潰したうえで、何度も挑ませ折れていく様を愉快に笑う人だったから」
紬の中で師匠の人物像が成大に崩れた。彼女にとって、渡の師匠と言うのは彼を助けてくれた善人だ。
突如現れた幼子を拾い強者として育てる。その様な行為が出来る者が、まさか……そんな癖の強い人だったなどとは思いもしなかった。いや、ある程度癖がありそうなのは、渡との会話で感じとっていたのだが。まさかここまでとは。
「ま、こいつらは俺にとって紬を攫った盗賊だからな。師匠ルールに反していない」
「あぁ……だから心をぽっきりと折るんだ」
「盗賊の場合は、折った後近くの街の衛兵に突き出して換金していたがな」
その様な事を言う渡に、紬は何処かで読んだラノベの「盗賊に人権は無い。アレはただの資金源だ」と言わんばかりの内容を思い出していた。
「……って事は、この国も資金源?」
「盗賊国家だからな。上層部に人権など無いだろう? 地球では無理だが此方では暴れても構わんだろう。それに、武にお土産も用意しないといけないしな」
ニコニコと笑顔でそんな事を言う渡。どうやら地球のもどかしい法律に鬱憤が溜まっていた様だ。
しかし、そんな会話を楽し気にする渡に、指揮官は恐怖を覚えていた。
「なんだこの化け物は……我らの力が一切通用しないだと? しかもこの女子を侍らせているところを見ると……一体我らは何を呼んでしまったのだ」
ガクガクと震えるが、それでも何とかその歩みを止めようと気合を入れるモノの、体は正直なもので……彼の足は彼の意志とは反対に、遂にその歩みを止めてしまうのであった。
鬼さんきちゃいました。




