ちょっとそれ、ズルくなーい?
異世界や魔法に関しての危険視もそこそこに、彼等はもう一つの問題点にぶち当たっていた。
そう、それは渡の学校問題である。
「渡は紬ちゃんと同じ年齢だから……今は中学三年生のハズなんだけど」
「あぁ、高校入学後とかでなくて良かったな」
とは言え、此処から勉強して間に合うのだろうか? その様な疑問が彼等を支配した。
さて、今はどんな時期かと言えば、丁度夏休みを明ける少し前。
そして、このような時期に戻って来たと言う事で、高校入試は推薦どころか学力自体足りるのか? と言う疑問さえある。が、あえて言おう、普通に考えれば無理だ。
今から全ての科目をその脳内に叩き込む? その様な事出来るはずが無い。そう普通ならば。
しかし、少し待って欲しい。此処に居る渡は何者だ? そう、この世界に一人しかいない魔法使いでもある。
「何かを覚えるのか? それならリードの魔法が使えるか」
何気ない顔で、皆が悩んでる中、その様な事を呟いた。
そして唖然とする一同。彼等は渡が呟いた一言が妙に頭の中で響き渡っていた。
魔法が使える? 何それどういう事? そう言った思考がグルグルと駆け巡るのも仕方のない話。だってそれ、どう考えてもずるいじゃないか。
人が、頑張って、声に出しながらノートに何度も書き込んで覚えた内容を、魔法の一つで覚える事が出来る。反則だ! チートだ! 頑張っても覚えれない子に土下座しろ! そう言いたくなるのは人として当然だろう。
ただ、この状況下において、渡がその魔法を使えると言うのは実に助かる話でもある。
そして……渡を除いた四人は葛藤の末、渡に対してゴーサインを出した。
「渡。外で使っては駄目よ? ただ、コレをやれば今からでも十分間に合うから、家の中でのみで特別だからね」
母親の奈々による念押し。
魔法を使うなと言った口で、今は特例として魔法を使えと言っているのだ。念を押さない訳にはいかない。
「えっと、中学三年の教科書は僕が貸すとして、二年のは武が出せるよね?」
「たしか一年の時のもまだ残ってるはずだ」
後は小学生で学ぶ内容の物が必要になるだろうか。と、あれやこれやと渡を放置して四人は渡の為にと学習用の教本を用意。
ただ、その甲斐合ってと言うか、ずる過ぎる魔法のお陰とでも言うべきか、渡の学力は随分とズルい結果になったのは言うまでもない。
渡が魔法で脳内に勉強を叩きこんだ後だが。
「しかし、君は本当にズルいなぁ……」
「まぁ、命を懸けた戦いを生き抜いた褒美だとでも考えてくれ」
「うーん、それを言われたら僕には何も言えないかな。でも、ずるいと思う」
「俺もズルいと思っちゃうなぁ……うーん、やっぱり魔法使ってみたい」
実に仲の良さそうな会話が聞こえてくるのだが、その大半は魔法ズルいなのか、魔法羨ましいのどちらかだ。
未知への恐怖と憧れ。コレはこの時期の少年少女にとっては更に蜜な物と言っても過言ではない。
渡が使える魔法への憧れ。実際に目にした事も有り、恐怖よりも使ってみたいと言う気持ちが湧いてくるのは当然の帰路と言える。
とは言え、魔法を使える恐怖に関して散々と話し合ってはいるので、流石に暴走しだす真似は無いだろうが……リードの魔法みたいな物が有る以上、少々不安要素ではあるかもしれない。
こんな魔法があれば! とどれだけ思った事か。