不安定な
ぐにゃりぐにゃりと歪む。
力が壁をノックする。
カンカンガリガリと音がする。
削れる壁は形を変えながら、その力に反抗するもののダメージを蓄積して行き……。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
テレビでは大物獲り! と言うニュースが流れていた。
今世間では、大量誘拐の自供! 等といった事で大いに騒ぎ立てられている。
が、その裏を知って居る渡達は、そんなニュースを盛り上がる事も無く「ふぅん」と言った感じで眺めていた。
「それにしても、異世界への転移じゃ無かったんだよね。神隠しの正体が大物による隠蔽だったって」
「だな。とは言え、リストを見たが解決していない神隠しも多数ある」
神隠し被害者リスト。そんな物が有ること自体不思議な話だが、このリストはコツコツと隆治がその友人達と作り上げたもの。
しかし、今回の事で発覚した被害者の数は、神隠しに遭った数と全くイコールでは無い。
「他にもあんなクズみたいな奴が居るのかな? それとも君みたいに異世界へ行ったのかな」
「どうだろうな。ただ、俺と言う前提がある以上はな……」
どちらの可能性も否定出来ないと渡は紬に言う。
「答えを決めつけるのは愚の骨頂だ。もうそれしか無いと思い込み、足をすくわれる事に繋がる。一体どれだけの冒険者がソレで命を落としたか……」
「うわぁ……なんて実感のこもったお言葉」
ただ、紬もそれを茶化すつもりは無い。
命のやり取りに関して、紬はその様な状況を共感も理解も出来ないから。ただ、紬は自分が平和な世界で生き、平和ボケをしていた事を渡との再会後十分に理解していた。ゆえに紬は渡の言葉に対して余計な事は言わない。
「で、あれ以降分かった事ってあるの?」
「無いな。お手上げだ」
何処の誰が神隠しに遭ったかはリストにあるが、何処でと言う場所の詳細が解らない。
結果、虱潰しに探さなければならないのだが……研究の時間、学校の時間、家族や友人達との時間も有るので調査に掛ける時間など余りない。
「リストに残っている者には悪いが、捜査打ち切りにした方が良いかもしれないな」
「時間が無いって事?」
「確かに時間も無いが、自分達の日常を壊してまでやる事では無いからな」
渡はそう言った事を行う調査官でも無いし、それにより給料をもらっている訳でも無い。本来なら今はただの学生だ。
「まぁそうだよね……でもあれだね。こんな事をいったら何処かのラノベに出てくる正義感の塊が激怒しそうだよ」
「あー……出来るんだからやれば良いじゃないか! と言うやつか。なら報酬をよこせと言いたくなるよなアレは」
此方では学生だが、異世界では冒険者だった渡。報酬と言うモノの大切さは十分に理解している。それゆえに、ただ働きなど出来るか! と、その手のラノベなどを見た時、結構な割合で呆れかえっている。
「まぁそれに、色々準備しておかないとな……なんだか嫌な予感がする」
「それって魔導士の勘ってやつかい?」
「冒険者の勘とも言うな。生き残る冒険者はこういった感覚が鋭いし、それにしたがって十分な準備や警戒を行うからな」
「へぇ……なんというか、冒険者って勇敢! ってイメージだったけど、少し違う感じかな」
「勇敢では有るが無謀では無いというやつだな。寧ろ高ランクな冒険者は臆病な方だぞ」
生き残る為ならどんな手でも使うからなと、渡は紬に物語との違いを説明して行く。
そして、その話は生き残って来た渡が言うモノだから恐ろしいまでのリアリティが有り、紬は何だか現実と物語の違いを知り、一つ大人にでもなってしまったかのような表情になった。
とは言え、そんな渡が嫌な予感がすると言っているのだ。一体何が起こるのだろうか? 少々紬が不安に感じてしまうのも当然と言えるだろう。
不吉な足音があぁぁぁぁぁぁっという訳で、フラグをぽーん。




