特別だけど危険だ!
火の魔法でお手玉をし、水の魔法で火のお手玉を消す。
土の魔法でゴーレムを作ってはダンスをさせ、風の魔法……は目視出来ないのでスルー。
極めつけは、何も無い空間からヌルリとダンジョンで手に入れた宝石などを取り出した。
「な、な、なにこれぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「まじか! マジなのか!!」
思わず叫ぶ紬と武。
両親は絶句と言った感じ……いや、どちらかと言えば立ったまま寝ている?
「ん? あれ、驚かせすぎたか?」
そんな四人の反応を見て渡はやり過ぎたか? と思ったが、時すでに遅しと言うやつだ。
まず、両親は寝ているのではなく驚きの余り気絶している。
そして、武はと言えば今までの態度とは打って変わって、目を輝かせながら渡を見ている。
最後の紬は……余りにも現実離れしすぎた内容だったためか、コレは夢では? と言わんばかりに自らの頬を抓っていた。
「う……うぅ、痛いんだよ。コレは現実だったみたいだ」
「大丈夫か? 頬が真っ赤だぞ?」
そう言いながら、渡は紬の頬に手を当て……ドキドキ、これは! と、紬と武が何かを期待し始めた。
だが、其処で何かをするにしても他の人の予想を外すのが渡である。
ペカー! と、渡の手が輝き、その光が紬の頬を優しく照らす。
光が収まると同時に渡は紬の頬から手をずらし、紬の頬を確認すると「うむ」と満足気に頷いて見せた。
「え、えっと、何だったの?」
「ん? あ、頬! 頬が赤かったのが元通りになってる!?」
直接確認出来ない紬からしてみればくえっしょんまーくを浮かべる内容だが、その頬を確認出来る武からしてみれば一目瞭然な訳で。
「今のってアレだよな! えっと、回復魔法ってやつ!!」
「あぁ、それで合ってる」
「うぇ!? 回復魔法!!」
これは凄い力だ! と、その前の魔法関連を見た時点で理解しているのだが、やはり理解するには少し時間が必要だった様だ。まぁ、現実逃避をし、夢ではないかと疑い、古典的な試し方をするぐらいなのだから、今理解出来たのは早い方では無いだろうか。
そして、未だに現実逃避と言うなの気絶をしている両親だが……気絶しっぱなしと言う訳にもいかずに、今の回復魔法の光のお陰なのか、二人は「「はっ!? 今のは夢!?」」と同じような事を言いながら復活した。
しかし、両親の願い虚しくコレは夢ではない。残念ながら現実である。
「父さん……現実を見ようよ」
「おばさま、魔法は有ったんだよ」
あぁ、無常。可愛い息子とお隣のお嬢さんは、魔法と言う現実から目を背けたい両親に対して残酷な現実を突き付けてくる。
しかし、しかしだ。いくら現実逃避をしたくとも、真実は一つしかない訳で。
「あぁ……と言う事はだ。渡が言っていた内容は全て本当だったのか」
「モンスターにダンジョンに暗殺……うぅ、何て世界なの」
頭を抱える両親。そんな二人に事の重大さをほんの少しだけ理解した武と紬。
今までの興奮が嘘みたいに無くなって行き、今出て来ている感情は恐怖だ。
「も、もしかして、自分がそんな世界に行っていた可能性が……?」
「あれ? ちょっと待って。魔法が使えるって言うのが沢山の人にバレたら大変なんじゃ?」
と、この様に様々な可能性と危険性が脳内に次々と溢れ出て来てしまい……あわや発狂するのでは? と言わんばかりに恐怖を覚えてしまった。
「な、なぁ渡! お前はこっちの世界に戻って来れたんだよな。と言う事は再び行ったり来たりする事は出来るのか?」
「行くのは無理だろうな。ただ、戻るのは俺自身やろうと思えば出来るかもしれないが……他の人にそれを伝えるのは厳しいだろう。何せ今俺は此処に居るのだから」
渡が此方に戻って来れた理由。それは狭間のダンジョンにて、最奥地から更に進んだ先に在る隠し部屋を攻略したからだったりする。
そして其処には特別と言える様な扉が有り、それを潜った事で自らの故郷へと戻る事が出来た。はっきり言って原理は……解らない。
「おじさん! 其れよりも魔法だよ魔法! この世界で魔法って!」
「あ、あぁそうか! 普通に考えたら魔法なんて使える訳が無い……渡にとっては普通の事だが、此方の世界の人間にとっては特別と言える……危険すぎるな」
魔法なんて物が使える。それがバレてしまえば危険などと言う言葉では済まない事に合う可能性が高い。
ではどうするか? 隠すしかない。しかし、日常的に使っていたモノを使わないように生活しろと言うのは……余りにも大変だ。
「渡……皆で協力するから、がんばろうね」
「あ、あぁ。こっちの世界ではそれが当然なのだろう。なら……便利な力だけど使わないように努力しよう」
こうして、渡の為の日常生活改善計画を立てる家族会議が、此処に開催された。……約一名、この場に家族では無いお隣のお嬢さんが居るのだが、彼女も知ってしまった人なので巻き込まれて貰う事にした様だ。
ただ、本人も乗り気なので問題は無いだろう。
異世界や魔法に対しての危険視。コレは当然考えるべきことでしょう。