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ライバル

 高校の部活。例によって例の如く、渡達は帰宅部である。なので何のかかわりも無い世界ではあるのだが、相手からしてみたら少し違ったりする。


「鏡宮! 今日こそ部活に入って貰うぞ!」


 とか。


「帰宅部のお前にだけは絶対に負けねぇ!!」


 など、一方的と言える多様なアプローチ。それもそうだろう、渡の身体を見て勧誘するなと言う方が無理な話だ。

 とは言え、渡はどの部活にも入るつもりなど無い。そんな事をしている暇があるなら、少しでも〝界渡り〟の実験を確実なモノにしたいという思いがある。


 しかし、ここに来て少し状況に変化が起きた。何故か?


「君が早朝にパルクールなんてやるから」

「いやいや、アレは紬が少しは筋力を維持しているというアピールが必要だと言ったからだろう?」

「確かにそう言ったけども、君はやり過ぎたんだよ」


 毎朝障害物をピョンピョンと飛び越えながら駆け抜けるその姿は、完全な見世物となっている。

 そして、そんな話を何処からともなく同じ高校の生徒が仕入れてしまった。

 どうやらその生徒曰く「違う高校に通ってる中学時代の子が聞いた」との事。恐らくだが、他校に進学した渡の元同級生か先輩辺りが噂話をしていたのだろう。まさに〝壁に耳あり障子に目あり〟である。


 その様な噂話が渡の高校内でも広く知れ渡ったとなれば……良くも悪くも反応をみせるのは当然の話。

 中でも陸上部関連の生徒は過剰に反応していると言っても良い。


 体育の授業ともなれば、目が変わったかのように渡に絡み始める。

 そして、渡が手を抜けば激怒すると……全く理不尽な話ではあるが、全力で戦え! と注文。いやいや、コレ授業だからねと言う話なのだが、彼等は根っからのアスリートなのだろう。勝利か敗北、それをはっきりさせたいという訳だ。

 まぁ……敗北したらしたで、更に挑戦を! と熱を上げるのだから面倒臭いにも程があるのだが。


「手を抜くのも駄目、勝つのも許せない……如何しろと言うんだ」

「あはは……悪意が無い分本当に大変そうだね」


 紬は思う。渡と言う理不尽な存在相手にどうやって勝つのだろうか? と。

 渡は此方の世界では全力を出す事が出来ない。そんな事をしてしまえば行く先は研究所だ。

 とは言え、渡が有る程度手を抜いたとしても、負けるなんて事は無い。それこそ、渡が譲らない限りは。それを知らないとはどれだけ幸せなのだろう。そう考えると苦笑いしか出来ない紬。


「ま、ほどほどにね」

「散歩程度なんだがな……とりあえず、早朝トレーニングは止めるか」

「ソレは止めない方が良いよ。もう既に知れ渡っているからね。急に止めたら何事かと疑われる」

「それもそうか……此方の都合と言うのも考えて欲しいモノだ」

「その都合が口に出して言えないからね。今までの様にのらりくらりと躱すしかないよ」


 一方的なライバル宣言をされ、授業の度に挑戦をして来る運動部の学生達。

 俺には一体何人のライバルが居るんだ……と、思わず遠い目をしてしまう渡だが、彼がこの受難? から逃れる術は……無いと言っても良いだろう。何せ勝手に彼等が盛り上がっているのだから。

彼等には良い目標なんでしょうけど、渡からしてみればいい迷惑。

勧誘も結構諦めてはいるので……なら、とことん利用使用みたいなノリでしょうか? 言ってしまえば、渡の強さが目立ちすぎるのも悪い。とは言え隠し切れませんからねぇ……。

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