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夏も終わりが近づく頃。渡は机の上に並べたアイテムの数々を前に悩んでいた。
「何を悩んでいるのかしら」
「渡のやる事だからなぁ……しかしあの道具の数々、正直内容を聞くのが怖いな」
両親である修一と奈々が渡を見て……いや、渡の取り出したアイテムを見て慄いている。何せ、如何見ても人どころか象すら殺せそうな剣、見た事のない形をした……呪われそうなアクセサリー。女神と思わしき姿を象った銅像。
その様な物を無象差に並べられでもしたら、そりゃ恐怖に支配されると言っても過言では無いが……。
しかし、そんな恐ろしいと言っても良いアイテムを前に、目をキラキラと輝かせる存在が一人。
勿論そんな目をするのはこの家に一人しか居ない。渡の弟である武だ。
「兄さんそれは?」
「あぁ、コレは俺は使う事の無かった……師匠の遺品の一部だな」
「へぇ……何だか凄そうな物がいっぱいだね」
「実際に凄いぞ? こっちの剣は師匠がダンジョンで手に入れ、一度だけドラゴン相手に振ったらしい。ただ、自分には合わん! と倉庫行きになった剣だな」
「うわぁ……ドラゴンを殺せる剣って実際に有るんだ……でも、ソレすら合わないの一言で終わらせる師匠って……」
「とんでもない人だな」
思い出しながら師匠を語る渡。
苦笑しながら……と言った感じでは有るが、その目には尊敬や感謝と言った光。師匠大好きすぎるだろうと突っ込みを入れたい処では有るが、それはさておき。
「兄さんの師匠は破天荒? で、そっちのアクセサリーや銅像は?」
「アクセは呪い封じだな。死の呪いも一度は撥ね退ける事が出来る。……が如何せん見た目がこれだからな。不人気な品物だ」
「実用性を考えれば凄いんだけど」
「だな。で、銅像は見た目そのままで女神像。これは置いておくと癒しの効果が発動するモノなんだが……こっちの世界だと空気に魔力が無いからな。意味など全くないただの置物」
「癒される事が出来るなら凄いのに……勿体無いなぁ」
どの品も異世界であれば一級品。他にも色々とあるのだが、目についたこの三品以外も相当に価値があるモノだというのが解る。
では、何故その様な物を渡が机の上に広げているのか? 不思議に思った武は渡に質問をした。
「ん? あぁ、これ全部錬金術で鋳つぶそうかと」
「えぇぇぇぇぇ!? 勿体無いよ! だって、相当な品物じゃないか!」
「まぁそうなんだが……こっちの世界にあっても意味が無いモノばかりだからなぁ。それなら潰して素材にしてしまおうかとな」
「素材って……なんの?」
「ミスリルやオリハルコンが足らないんだよ。これらはそう言った金属で作られているからな」
渡は門の作成の為にこれらを潰そうとしている。しかし、どう考えても芸術的にも素晴らしいモノの数々であり、武からしてみれば勿体ないと感じてしまう。
それにだ。これらは師匠の遺品。いわば形見だ。その様な物を潰して良いのか! とすら武は考えた。
「師匠の形見だろ? 兄さんそれ潰しても良いのか?」
「あー……あの人だったら間違いなく「使えないモノに価値は無い! なら使えるようにしろ!」って言う。というか、使わなかったら激怒する」
「……自分は倉庫に仕舞ったのに?」
「それは何時か使う日が来るだろうと思ってしまってるやつだからな」
そのまま使うのか、素材にしてしまうのか。ソレはその時に必要なモノ次第。
「とは言え、これを潰してもまだまだ素材は足らないんだけどな……」
「な、なら量が揃うまではそのままにしたらどう?」
「ふむ……それもそうか。先ずは必要な量を確保出来るかが大切だな」
渡の発言を聞いて「ほっ」とする武。
ただ、その安堵した理由なのだが……どうやら武は異世界の品々に魅了されてしまったようだ。これらの物がまだ量も足りていないのにも拘らず潰されてしまうのは、余りにも惜しい。そう感じてしまった。
とは言え、量が揃えば素材に変換される運命なのだが……武はその事を心の棚の上に置いて放置した。
そして、キラキラとした目でドラゴンを殺した剣や女神像をうっとりと見つめるのだった。
惜しむ心。
弟君は異世界にとらわれちゃってますねぇ。




