日焼け
夏と言えば? 海だ! プールだ! と、渡を除く友人達五名は遊びに行くぞ! テンションを上げていた。
海は狩場でありプールはそもそも入れない場所……と言う認識が渡にはある。その為に一人ぽつんと置いてけぼり。
「ん? 渡どうしたんだい。自分一人だけ解らないと言った表情で」
「いや、何が何だか。一体何をしに行くんだ?」
「泳ぎにだよ。夏と言えば恒例と言っても良い遊びだね」
そうだそうだー! と、紬の言葉に頷く友人四名。
とは言え、泳ぐことの何が遊びなのか良く解らない渡。渡にとって泳ぐと言う行為は、命がけで渡河を行う時に使うモノだ。
此方の世界で言えば……ワニやピラニアが居る川を渡るとでも考えれば良いだろうか。まぁ、脅威度で言えば更に上と言えるが。
なので、泳ぎは渡にとって遊びでは無い。とは言え、世界が変われば……と言う話は様々な場所でして来た事でもある為に、そう言うモノか……と無理やり納得してみせた。
因みに、学校の水泳自体は命を守る為の訓練だと勘違いして居たと言う……実に渡らしい話だ。
「しかし、俺はプールに入れないだろう? どうしたら良いんだ」
「大丈夫だと言っておこう! じゃじゃーん! ラッシュガード! これなら問題は無い」
そう言いながらお調子者の陽一が、どこぞのロボが道具を取り出すかのように、長袖長ズボンのマリンスポーツ用ウェアを取り出した。
そして、そんな陽一を見ながら周りの皆もニコニコ顔。水泳の授業で渡は全て見学をしていたからね! 皆も一緒に泳いでみたかったようだ。
「これなら渡君のソレを隠せるからね。一緒に遊べるよ」
「さぁ、我々にその身体から見せる泳ぎと言うモノを見せてくれ」
ワンちゃん……でなく、健太が楽し気に、楓が眼鏡をクィとさせながら渡に向けてグッと親指を立てた。
と、そんな訳で渡は友人達と初めて、ただ遊ぶためと言う理由の水泳を楽しむ。
途中、このメンバー……主に女の子陣営を見れば何かあるのでは? と思わなくもないが、其処は常に渡が側に控えていた為に、ナンパ目的の野郎共は近づく事すら出来なかった。
何せ、近づこうとすれば恐ろしい殺気がピンポイントで襲って来るのだから……そりゃ、近づけないよと言う話だ。
そして、ジュースやらの買い出しも基本、陽一達が進んで行った為に隙などが出来るタイミングも無かった……有るとすれば、シャワータイムぐらいだろう。だが、其処を狙う者は流石に居なかった様だ。
そんなこんなで、随分と楽しんだと言える渡達。
だが、此処で紬がふと気が付いてしまう。あれ? 渡って日焼け止めとか塗って無かったよね? と。
「ね、ねぇ……渡、君って全く焼けて無いよね」
「ん? 焼けるとは?」
「ほら、他の男子を見てよ。皆の肌が赤や黒になってる」
「あー……確かになっているな」
そう言いながら、渡は自分の手を見る。そして、その手が素晴らしい程変化が無い事を確認。
「腕は隠れてたけど手はそのままだったはずだし、顔なんて隠しようも無いよね」
「んー……焼けると言うのは如何いうモノなんだ? 別に火で燃やしたとかそう言う訳では無いのだろう?」
「太陽の光で炎症を起こしてる事かな」
「なるほど、と言う事は状態異常と言う訳だ」
ソレなら渡が日焼けを起こすはずが無い。何故なら魔力で保護されてしまっているから。
「炎による攻撃と変わらないのだろう? ならば、そう言った耐性が付いているからな」
「うわ……それって魔法?」
「いや、魔力による体質とでも言った方が良いだろうか。強くなればなるほど、毒に熱に寒さにも強くなる」
そんな説明を受け、紬は思ってしまった……。
(無意識で使う魔法よりも、どうしようもない内容が飛び出して来た!?)
何せ、頑張って意識して直す事すら出来ない内容だ。それこそ、身体を特別な改造でもしないかぎりその体質は変化しないだろう。何せ魔力が元なのだから。
楽しく遊んだはずのプールであったが、紬だけは最後の最後で頭を抱えてしまったようだ。
どうしようもない魔力の効果! ある意味羨ましい内容とも言えるかも。




