表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/105

夜の廃墟

 夏と言えば? そう怪談だ。

 とは言え、怪談話は暑さに対して少し涼しくなろう的なモノ。大抵の場合は諺にもある〝幽霊の正体見たり枯れ尾花

〟だ。

 ただ、それだけでは証明できないモノもあるのだから、怪談話が無くなるなんて事が無い。……何時か全てが解明される日もあるのだろうか?


 さて、そんな怪談だが渡達の地元には廃墟の亡霊と言う怪談がある。

 夜中にこの廃墟の前を通ると不思議な音が聞こえる、割れた窓ガラスに影が映る、風も無いのにカーテンが揺れる……と、何処にでもあるような話。

 ただ、そんな廃墟なので地元では肝試しの場として使われていて……まぁ、その肝試しをしている人たちが幽霊の正体なんてパターンも有ったりする。


☆★☆★☆★☆★☆★


「で、此処がその廃墟か」

「うん、何か如何にも! って感じじゃないかな」


 渡と紬が目の前の廃墟を見て、なんら普段と変わらない感じで会話をしている。

 ただ、何故こんな場所に居るのかと言うと、いつものメンバーで集まり夜中に肝試し。まぁ、こんな企画をしたのはメンバー1のお調子者の陽一だ。

 ただ、彼は「肝試しやろうぜ!」と言っただけで、日程やら時間など色々調整したのは楓だったりする。楓は陽一の補佐役になってしまったようだ。


「うー……なんかもうすっごく不気味」

「そうよね……あぁ、もう何か動いた様に見えちゃったじゃない!」


 そして、まだ廃墟に入っても居ないのに怖がっているのは健太と霞。

 いつも以上に近い距離でお互いをフォローしながらふるえている姿は……子犬がくっ付いてプルプルしている様にも見える。


 そして、そんな美味しい状況をこの男が見逃す訳が無い。


「わっ!!」


 そんな二人を後ろから奇襲。ご丁寧に背中を軽くトンっと押している。


「「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」


 そして、肝試しが始まっても居ないのに叫び出す二人。それを見てニヤニヤする陽一。


「全く……この阿呆は」


 そこでやれやれと言った態度を取りながら、陽一を回収し窘める楓……と、まぁある意味いつも通りの行動ではある。


「しかし……ふむ、肝試しか」

「ん? 渡どうしたんだい何か気になる事でも?」


 渡にとってホラーと言えば、異世界で討伐して来たゾンビやらゴーストなどのモンスター達。

 古い屋敷や城に墓地などで、夥しい程のスケルトンやリビングアーマーとやり合ったのは、今となってはいい思い出……いいのだろうか?

 と、そんな思いでは今は置いておくとして、そんな〝本物〟を知る渡だ。肝試し! と言われても怖いなどと言った感想が出るはずも無い。


「いや、此方のホラーは可愛いなぁと」

「か、可愛いのかい? えっと、それは何と比較して?」

「ん? あぁ、此方の世界には魔力が無いだろう? だから、その手の類のモノが恐ろしい行動に出ると言う事が無いんだなと」


 ぼそぼそと頬を寄せ合っての内緒話。ただそれを見た友人達はと言うと……何やらもにょりとした顔になった。

 まぁ、これも最近よくみる光景。渡は恋愛を良く解ってないくせに、天然でいちゃつきやがって! と、まぁそんな感じだ。


「ん? ちょっと待って、さっき魔力が無いからって言ってなかったかな?」

「言ったぞ。こう、恨み辛みが籠ったモノはこの場にあるみたいだからな。魔力がソレと一緒になれば、晴れてアンデットモンスターの誕生だ」


 数秒の間紬がフリーズした。

 そして、紬は理解してしまう。あ、この世界にもお化けって本当に居たんだ……と。そんな事を理解した瞬間、紬の正気度は一気に急降下した。


「みゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 不思議な叫びをあげる紬。そして、そんな紬をどうしたんだ? と不思議な表情で見る渡。

 友人達も紬が突如叫んだ事で逆に冷静になり……肝試しは開始される前にクライマックスを迎えてしまい、その場で解散となった。紬ちゃんその場で失神してしまったしね。


☆★☆★☆★☆★☆★


 後日、この廃墟にて新しい怪談が増えていた。

 何やら、猫の様な叫びが聞こえると言うもの。なので、もしかしたら猫又でも居るのでは!? などと、話題があちらこちらで聞こえる様になり、肝試しをする人達も増えているのだとか。


 ただ、その様な話を聞いた紬はと言うと……。


「穴があったから入るね……」


 と、何やら布団に頭を隠して恥ずかしそうにしていたとか。




「いや、紬……それは穴では無く布団だろう?」

「いいの! 気分の問題だからね! と言うより、渡の所為でもあるんだよ!」

「そ、そうか? なんだか良く解らないが……すまない」

「うー……いいけど、いいんだけどぉ」


 もぞもぞと頭を隠して動く紬。その姿は猫が狭い場所に潜ろうとしてる、そんな姿と同じように見えてしまうのだが、ソレに気が付かないのは本人のみだ。

渡と居ると、肝試しすら普通にはならない('Д')

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ