水魔法
季節は夏に。
蝉が鳴き始める。もう夏だなぁなんて感じる七月の初頭。
渡達はと言うと、残りあと少しと言う一学期の登校を……ダレていた。
「あーつーいーよー……」
「中学までは学校が近かったから我慢できたのにさぁ……あぁ、アイスくいてぇ!」
「それ昨日も言ってたな。ただ、その後買い食いしたは良いが腹を下していただろう?」
「いうなよぉ。まぁ、流石にアイス3個一気に食ったのは不味かったな」
ジメジメとした湿度に燦燦と輝く太陽。息をするのがつらい! と感じる程に不快指数が上がって行く。
こんな状況だ。冷たい飲み物やアイスなどに手が出るのは仕方ないのだが……流石に3個は無いだろう。そんな視線がそんな馬鹿な真似をした陽一へと突き刺さった。
「それにしても渡……皆より涼しそうな顔をしてるみたいだけど、この暑さに耐えられるの?」
「あ……あーまぁ、これより暑い経験をした事は有るからな」
紬の質問を受けた渡だが、その際一瞬だけ紬から目を逸らした。
そして、そんな渡の行動に僅かな疑問を覚えた紬。これは何かあるぞ? と考え、そっと渡へと手を触れてみる。
傍から見れば、暑い中にイチャイチャしやがって! とも取れなくない行動。何せ紬は渡の腕を優しく掴んでいるのだから。
しかし、そんな行動をした紬の表情は少し曇った。
(ナニコレ! 渡が少しひんやりとして気持ち良いんだけど!?)
そう、目をそらした理由。それは暑さに対して水魔法でひんやりと自分の周囲を冷やしていたから。
とは言え、それは無意識に発動していたもので、紬の質問を受けた渡がその瞬間に「はっ!? 俺魔法使ってるじゃないか!」とその時初めて気が付いた。そら、視線もそらしたくなるだろう。
紬は何となくその絡繰りに気が付いたのだが……まぁ、此処で突っ込みアイテム〝ピコハン〟を出す訳にもいかない。何せ往来の真ん中だ。そんな事をしたら周囲の人から何事!? と変な目で見られてしまう。
突っ込みを入れたい気持ちを何とか抑え、紬は渡に対してパーフェクトスマイルをしつつ、がっしりと掴んだ手に力を込めた。
「わぉ……大胆」
「あ、暑くないのかな……」
周囲から見れば……と、どう考えても暑いはずの行為。しかし紬からしてみれば、実はひんやり心地が良い。
まぁ、そんな理由は一割から二割程度。実際には、魔法に関する事だから口に出しても言えないので、態度で咎めていると言う訳だ。
そんな紬の視線と行動を身に受けた渡はと言えば……体感温度が数度程下がったとか。
一つ安心出来るのは……渡の周囲でそれに気が付く事が出来る距離にいたのが紬だけだったと言う事だろうか。
天然クーラー良いですよねぇ(*'▽')




