セクハラだ
ラッキースケベなどと言う言葉がある。
物語の主人公が故意的でもなく、ただ助けた際に胸をタッチした。転んだ拍子に抱き着いてしまった等々、アクシデントが発生した際に起きるセクハラ。
しかし、このような事は現実であれば……起こした人物によって結果が変わるのは言うまでもない。
そう、主人公でありイケメンもしくは金持ちだからこそ許されるアクシデントだ。
「むむ……ラッキースケベか。何とも間抜けな話だな」
「そうかい? 女子である僕から見れば結構重要だと思うんだけど。普通に考えてセクハラでもあるからね」
渡の間抜け発言に紬は女子からの視点で返事をした。そして渡は紬の返答に「ふむ……」と一言だけ。
「む、何か納得いかないような顔をしてるね」
「そうか? うーむ……しかしなぁ」
「一体何が気になってるのさ」
気になっていると言うよりも、やはり感覚の違いなのだろう。
渡からしてみれば、冒険者仲間などであればこのようなアクシデントにおけるタッチやハグなど、別に珍しい話でも何でもない。
むしろ、ソレを肴に酒を煽る探索者の多い事。しかもそれは性別問わずだ。
何故か。
そんなものを気にして居たら間違いなく死ぬから。
胸を触られてキャーエッチ! と、頬を叩く? どこにモンスターが隠れているかもわからないのに?
転んだ拍子に抱き着いて何の問題が有る。むしろお礼を言うべきだろう。場所が悪ければ崖から落ちたり階段から転倒なんて場合もあるんだぞ。
と、この様な思考をしているのが渡だ。
「……兄さん」
そんな渡を隠れながら見ている弟君。君はさっさと話の輪に入る勇気を持ちなさい。
と、まぁ、そんな隠れている武は想像してしまった。
この兄は、この手のラッキーをその身に受けた事が有るのでは! と。
結論を言うと無い。
何故なら渡は師匠と死別した後はソロ活動をしていた冒険者だったから。
とは言え武は妄想力豊なお年頃。当然、色々ファンタジーな想像をし……それを微妙な音量で口に出していた。
「……ねぇ、君はそんな事があったりしたのかな?」
「いや無いぞ。そういった話はよく聞いたが、俺はソロだったからな」
「ふぅん……でも、弟君の垂れ流している内容って凄い具体的だね」
「想像力が凄いよな」
今、弟の武が語るストーリー。
何やら、けもみみ女子がどうの、エルフがどうのと実に黒歴史を量産して居ると言っても過言では無い。そして、それをばっちり聞いている渡と紬。
「……本当になかったの? 少しぐらいは有るよね?」
「爺さんと言える師匠と共にいてどうしてそうなるんだ」
「えー一人で行動して居た時もあるはずだよ」
「その場合はソロだな。こうパーティーで行動すると言うのは難しいからな。その場だけなんてのはゲーム内の話だ」
渡は思った。紬のやつラッキースケベが有って欲しかったのだろうか? と。
何せその目が楽し気な光を灯しながら話を聞いて来るのだから。嫉妬じゃないのね紬ちゃん……と霞が居たらそう呟いていただろう。
命の危機がって時にラッキースケベイベントでキャー! は流石になぁと思ったり。
雪山とかで抱き合うのだって当然ですよねぇ。其処にラブだとかエロだとか関係ない。生き残るこれ大事。
って、こんな思考だからラブコメが大変なんだよ!www




