夢なら覚めて
悪夢を見る。そんな事がある日は目が覚めても体に疲れが残っていたりする。
誰しもが、夢ぐらい良いモノを見せろよ! と思うだろう。それぐらい悪夢と言うのはご遠慮願いたい。
では、その悪夢が現実で起きたら?
………………
…………
……
とある少年は今目の前が真っ暗になる思いで膝をついていた。
「何で……如何して……」
その言葉を繰り返す。彼にとっては予想外の事だったのだろう。しかし現実は甘くない。彼は自らが失敗したと言う事実、それが重くのしかかっていた。
何が有ったのか。そもそも彼は何なのか。
先ず彼の事を説明しよう。
彼はこの高校でサッカー部のエース兼キャプテン。渡達からすれば二年上の先輩だ。
顔もイケメンと言った具合で、六人から七人はちらりと見るだろうそんな男子学生。ただ、彼の魅力はやはりサッカーをしている時で、彼がグラウンドに居れば女子がキャーと黄色い声を上げるのはもはや見慣れた景色。
が、そんな彼。今までは〝自分自身〟の敗北を知らなかったのだろう。実に自信家だった。
個人で負ける事は無い。女の子も自分に振り向かない子は居ない。そんな自信に満ち溢れる……まぁ、下手をしたらモンスター化しそうな存在。
しかし今はその自信が脆く砕けてい居る。一体何が有ったのか。
なんて事は無い。ちょっと噂になっている一年生に声を掛けたのだ。
「サッカー部のマネージャーにならないか? 後時間があるならこの後遊びに行こう」
そんな彼のセリフと微笑み。此処で何時もなら女子が「は、はい!」と喜色の混ざった声で返事をするのだが……今回は違った。
「あ、ごめんなさい。予定が有るのでさようなら」
「僕も待ってる人が居るので」
袖すら触れない。塩対応? いいえ、毒対応や酸対応と言った方が良い。
その証拠に、この先輩は膝から溶ける様に地面へと崩れ落ちて行った。
初めての失敗、もしくは敗北だったのだろう。まさか自分が!? と言う思いで心が埋め尽くされている。
「いやいや、そんなはずは……きっとこれは夢だ。夢なんだ……」
幾ら夢と願ったところでコレは現実である。そう、覚める事のない悪夢。
とは言えこれは、切っ掛けにもなる。彼自身が更に次のステップへと踏み出す為の。そして、他者の事を駒としか考えないモンスターにならない為の。
ただ、それは良い方向に転がった場合。
悪い方向に彼が行ってしまえば……とは言え、ソレは今はまだ解らない話だ。それに、彼には支えてくれる人達が居るはずである。例えば部活の部員など。
それを彼がどう感じるかは今後の展開次第だろう。
……
…………
………………
「お? 頼まれたジュースは買って来たぞ」
「ありがとう! うん、それじゃ行こうか」
「あぁそれは良いが、何か呼び出しが有ったのでは?」
「ん? それはもう終わったよ。割とどうでも良かった事だったから直ぐに切り上げて来たんだ。僕にとっては渡と買い物に行く方が重要だからね」
「そうか。……と、それは荷物持ちが要るという事か?」
「もちろん! 荷物持ちもそうだけど一緒に行くと楽しいじゃないか」
そんな会話をしている二人の後ろを、いつもの四人が歩いているのだが……。
「ねぇ霞ちゃんや。呼び出しって例の先輩だろう?」
「えぇそうよ。まぁ、私も紬ちゃんも早くこっちに合流したかったから、直ぐに切り上げて来たけどね」
「あー……なんだ、お前は良かったのか? あっちはまぁ言わなくても分かるが、そこそこ良い感じの先輩だったんだろう?」
「んー……あの二人を見てるとねぇ。何というか薄っぺらく見えちゃって」
春名 霞。
彼女は渡や紬と付き合っていく上で、何やら異性を見る目が実にシビアになったようだ。
まぁ、渡達ほど傍に居ると濃く感じ、息がぴったりと言った者もそう居ないだろう。そのお陰とでも言って良いのだろうか? 霞の求める彼氏像は実にハードルが上がっている。
自信が多い程大破して行きますねぇ……(´-ω-`)
えぇ、前話で言っていた基本じゃないパターンの一人です。




