無くしたからこそ
今日の更新は2つです。
カリカリと筆を進める渡の隣で、紬は現状について考えていた。
君って絶対に好意とかそう言うのに疎いよね……と。
ただ、この事で渡をフォローするとすれば、あちらの世界で恋愛の末に! と言うのはまずない。
貴族であれば政略結婚が基本だ。そして、商人でも似た様なモノだろうか。職人であれば? そちらは大抵親方が面倒をみえる。何せ彼等は物を作ること以外に情熱が無いから。
農家はどうだろうか? 此方も基本的に家と家の繋がりを大切にするので、政略結婚に近いものが有る。
では冒険者や傭兵はと言うと、基本的にいつ死んでも可笑しくない。なので、結婚などせずその手の仕事をしている女性で満足するか、もしくは仲間うちや仲の良いパーティーの相手と何となく関係を結び……運が良いのか悪いのか、行き着く先の一つはできちゃった婚だ。
そう、惚れたの腫れたなどと言った話でと言うのがほとんどない世界。まぁ、命の危険が隣にあったからそう言うシステムで、効率よく人手を増やす。守る為に繋がりを強くする。そんな事が常識であった。
さて、そんな世界の常識を持つ渡が、こちらの自由恋愛と言うモノが基本だと言う世界に突如戻り、恋愛をしろ! と言われて出来るだろうか? もちろんノーだと言える。
好意よりも合理性。恋愛よりも家の繋がり。それを優先してしまうのは当然の話。
それゆえに、紬は渡に対して頭を抱え溜息を吐いてしまう。
「むぅ……もう少し構ってくれても良いと思うんだけど」
ボソっと呟く紬の内にあるもの。本人は好意だと思っている……が、実際には好意なのか依存なのか、はたまた別のモノなのか。
ただ言えるのは〝もう絶対に失いたくない〟と言う思いは本物だと言う事。
「何か言ったか?」
「いや、今は何をしているのかなと思ってね。ほら、僕じゃソレに何を書いているのか解らないからさ」
「あー……それもそうか。そうだなこれは……」
呟きの内容を聞かれなかったことでホッとする紬。だけど少しだけ肩を落とす。どうせなら聞かれて気が付いてくれれば……なんて思いが少々。
とは言え、丁度良い機会でもある。なので渡の口が多くなりそうな話題を……と思った時、結局選んだ内容が渡がやって居る事だった。
ただ、それは正しかったのだろう。
渡が紬に対して楽し気に内容を話していく。
紬自体は、内容の半分も理解が出来ないが渡が実に楽しそうなので心の裡が軽くなって行き、紬の表情も明るいモノへと変わって行った。
「む……難しくは無かったか? と言うよりもだ、楽しいか?」
「うん! 解らない事は多いけど、何となくこうかな? あれかな? と考える事も出来るからね。話を聞いていて楽しいよ」
「そうか、ソレなら良かった。俺は師匠に教えて貰っている時に随分と頭を抱えたからな。意味が解らん! と、実際に自分でやるようになってやっとわかった事が沢山あった」
「へぇ……やっぱり実践が大切って事かぁ。でも、僕には魔力何て無いからなぁ」
結局会話の大半が異世界や魔法の事になる。しかし、ソレはソレで楽しい時間だし、他の人(渡の家族以外)とは絶対出来ない会話なので特別感すらあり、こうした時間が有るだけで紬は結構満ち足りてしまっていた。
結局の処……紬もまだまだお子様と言う事だろうか。
ただ一度失ったからこそ大切に思う気持ちが有る訳で……そんな紬の行動はと言うと、基本渡にべったりである。
紬ちゃんがんばれ! としか言いようがない。
そして、この物語の核心の一つが、この渡がどうやって常識以外にも恋などの感覚を理解するのか……と言う事だったりします。ぶっちゃけ難しすぎるwww




