理不尽な
彼はその光景を眺め臍を噛んだ。
視線の先では中の良さそうな六人組。実に微笑ましい光景……とは少し言い難いが、それでも楽し気であるのは間違いない。
ただ、その楽し気と言うのも本人達ばかりで、周囲はと言うと畏怖・憧れ・興味と多種多様な目を宿している生徒達。
そんな中でもこの〝彼〟に関して言えば、その思いが他よりも強いように見える。
「その位置は本来俺の…………ダメだ、その笑顔は……」
ぶつぶつと呟く。一体その言葉は誰に向けて誰を思い言っているのか……。
ただ、その瞳が濁りを見せているのは間違いなく、彼の近くに居る人達が気味悪がって距離を開けているのだが……その様な事にすら彼は気が付かず、ただ呪詛を吐くようにブツブツと呟くのだった。
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「むっ……」
「ん? 如何したんだい?」
「いや、何やら黒い念の様なモノが……いや、此方の世界には魔力など無いからどうと言う事は無いが」
紬の質問に渡は変な気配したと言い、後半は誰にも聞こえない様にぽつりと呟く。
そう、何となく気持ちの悪い視線を感じ、渡は辺りを警戒した。
しかし、その様な視線を送ってくるものは確認できず、一体何だったのだろうか? と頭を捻る渡。
「ふーん……ま、コレだけ目立ってるからね。変な視線を送ってくる人だって居ても可笑しくないんじゃないかい?」
そう告げる紬に、他のメンバーもうんうんと首を縦に振る。
そんな五人の反応に、渡はそんなものか? と思いながら再度周囲を見渡す。すると、さっと目を逸らす者、少し敵意を含んだ目で睨んで来る者、何やらキラキラとした目をしている者。
渡はそんな彼等を確認し、うんと一度首を縦に振った後……。
「考えるのを止めよう」
そう力強く告げた。
「あはは……うん、そうだよね。気にした処でどうしようもないし」
「かすみんの言う通り! こんなの直ぐに収まるはずさ」
女性陣二人が半分笑いながらそう言うのだから、まぁ良いかと思えてくる渡。
とは言え、余りにも黒いイメージがある気配だった為に、少しだけ気を付けるか……と、友人達に危害が無い様に注意せねばと考える渡だった。
「あ、そうだ! 今日は君の家に寄っても良いかい?」
「ん? 別に何時も勝手に来るだろう? 何故許可を取るんだ」
「ほら、ソレは一昨日に弟君が……ね」
「あー彼女を連れて来た所に出くわして、彼女が勘違いした奴か……」
アレは実に不幸な内容だった……と、弟君を憐れむ二人。と言うよりも、弟君彼女作ったんかい! この時期に! あんた、今受験生だろうが。と言う話なのだが、ソレは横に置いておこう。
ただ、そんな話を聞いた友人達はニヤニヤ。もっと話せ! と言わんばかりの態度。
しかしここで、渡は再び黒い何かを感じ取った。
とは言え、他の五人は気が付いていない模様。其処で渡はふむ……と一度冷静になり、やはり気のせいでは無かったか、と結論。
そして、周囲にバレない様な動きで確認しつつ、その黒い何かを発する存在を探る……が、どうやら既にこの周囲には居ない様だ。渡は鈍ったか? と考えながら、次はその存在を捉えらえる様にと更に警戒度を上げるのだった。
モブさんです。




