素晴らしき桜並木
卒業式。それは恙なくその行程を終え、今は生徒たちが親御さんやクラスメイトに教師達と、様々な場所で写真を撮ったり話をしたりしている。
「皆元気だな」
「……泣いてる子も居るんだけど?」
「笑顔で泣いてるからな。感情のまま泣けると言うのは素晴らしい事だ」
そんな渡の言葉に紬は、渡は一体どんな人たちを見て来たのだろう? と疑問に覚えた。
しかし、それをここでソレを聞く訳にもいかず、少し悶々と悩む紬。そんな紬の表情を見て渡も「ん?」と疑問を覚えるが、紬が何も言わないのだからと一旦保留。何かあれば後で話を振ってくるはずだと言う事で。
因みに、渡が見て来た人たちと言うのは〝我慢するしかない人達〟だ。
そして、そんな人達がどれだけ多かった事か……いや、むしろ我慢をすると言うより諦めるが正解だろうか。
モンスターの襲撃に対して諦める村人。貴族の理不尽に諦める住民。豪商のやり口に物を売るしかない職人。そして大量の、目が死んでいる奴隷達。
彼等は既に涙など枯れていて……そんな彼等を見た事がある渡は、今こうして笑顔を見せながら泣けると言う事が、どれだけ幸せで大切な事かを誰よりも理解していた。
「紬は泣かないのか?」
「僕が!? 僕の場合は泣くよりも楽しいが先かなぁ。こうして渡と桜の木の下を歩けるんだよ。うん、凄く楽しいよ」
「そうか。楽しくて笑えるならそれも有りだな」
「む……渡は楽しくないのかい?」
「俺か? 俺は……」
うーん……と頭を捻る。
渡の考えと言うのは、自分がこんな争いも無い平和な状況を満喫して良いのだろうか? と言う思い。
それとこの奇跡……家族や紬達と再会でき、今こうして気を緩めて生活出来ると言う事への感謝。
その様な反すると言っても良い思いに挟まれ、シーソーゲームな状況の心情。
とは言え、紬が楽しそうにしているのは、渡にとっても喜ばしい事であり。少し思考した後、渡は紬に返答をした。
「……楽しいのだろうな」
「うん、ならよし!」
その言葉ににっこにこと言った紬。
そして、そんな二人を見た家族や友人達が、黄色い声を上げながら襲撃して来るまで……数秒前。
因みに、この場には弟君である武も居る。そして、そんな武はと言うと……。
「むむむむ……おめでとうと言いたい。けど、どうやって言えば良いんだろう」
まだ壁を造ったままだったんかーい! と突っ込みを入れたくなるのだが、年頃の少年少女などそんな物だ。こればかりは頑張れ! と見守るしかない。
そんな武の心情を理解してか、両親は何も言わずに武を生暖かい目で見守っては居るのだが……「もどかしい! さっさと口に出せば楽になるのに!!」と、修一と奈々は夜な夜な二人で晩酌をしながら呟いているのだとか。
また、その両親の愚痴を……渡も聞いてはいて「これは俺から声を掛けるべきか……いやしかし、父も母も武に解決して欲しいみたいだしな……」と、こっそり悩んでいたりするのはご愛敬。
そして、今武は勇気を出して、一歩前に出て……は一歩下がると、傍から見たら不思議なダンスでも踊ってる様にしか見えない行動中。
どうやら彼が一皮むけるには今しばらくの時間が掛かりそうだ。
と言う訳で、少し足早な感じで中学卒業。
と言うのも、中学編まではメインになるような人物・帰還した事での問題や悩みなどなど、設定的なモノを放出と言った感じ。
話が加速するのは高校から。此処からは地域コミュからの離脱して新天地ですからね。……まぁ、渡からしてみれば中学も周りは知らぬ顔でしたが、紬にとっては知って居る顔ですので。ソレに渡も、此方の世界に適応する時間が必要でしたからね。
ですので、此処からが本番と言っても良いでしょう。二人の関係にしろ、ちょこっとしたファンタジー要素にしろ……です。




