行方は?
正月の時に野生の兄……では無く、隆治の話により知ってしまった事実。自分以外にも神隠しにあった人物が居ると知った渡。
そしてその日から、時間がある時は魔法の研究をしつつ渡は考えた。自分以外に神隠しに遭った人は見たっけ? と。
もし同じ場所に転移して居たのならば、自分と同じように師匠に保護されていたはず。しかし、あの場には自分しかいなかったし、その後も師匠が同じような転移者を連れて来る事など無かった。
では自分と同じ様に神隠しに遭っての無いのでは? と考えるも、隆治の突如消えたことや、移動した証拠(映像などの確認)が無かった事など、明らかにおかしい状況だったと言う。
そうなると考えられる可能性はと言えば……転移して直ぐに帰らぬ人となったのか、自分とは全く違う世界へと飛んだのか、同じ世界に転移して居たとしても、遭遇する事のない場所……もしくは時間に飛ばされたのか。
そして、そういえば……と渡は一つの事を思い出した。
「異世界のある国の貴族だが、数代前に黒目黒髪の子を拾い養子にしたと言う話を聞いた事があるな。そうそう、その子は最初全く良く解らない言葉を話していたらしい」
その子が、渡と同じタイミングで神隠しにあった子なのかどうかは謎である。ではあるが、自分以外にも異世界へと渡った子が居る可能性が高いと言う事では無いだろうか。そう考える渡。
「しかし渡。もし渡と同じ時に転移した子がその貴族の養子だというのであれば、時間軸が可笑しくないか?」
同じ日に神隠しに遭う。しかし、転移した先では全く違う時間帯。コレは一体どういう事なんだ? と、そう疑問を覚えるのは当然。なので修一が渡に質問。
「うむ、だから一番可能性が高いのは同じ日の子では無く、それより前の神隠しでという事だろう。実際、様々な文献などにも載っている。だが、同じ日であったとしても場所が違うだけに、時間のソレも別々に落とされるようなことが有っても可笑しくないだろうな」
例えば、こちらの世界で一秒違えば彼方の世界で一年違う。そんな事が有っても可笑しく成灰だろうと渡は告げる。
「いや、しかしそうなると今渡が研究して居る〝界渡り〟は……そもそも渡が此方へと帰って来られたのか」
「奇跡……だろう」
そう、奇跡だ。
その貴族は異世界で血脈を紡いだそうだが、故郷の土を踏む事は終ぞなかったそうだ。そんな彼の遺言は「いつか故郷に伝えて欲しい。自分は満足の行く一生だったと……」と。
とは言え、その故郷ってどこにあるねーん! と、謎が深まるばかりの子孫達には、少しいい迷惑な遺言と言えるだろう。
その様な者が居るからこそ……渡がダンジョン探索の最中に世界を渡れたこと。奇跡、幸運、神の思し召しもしくは気まぐれ。その様な言葉でしか語れない様なものだろうか。
そして、渡はそんな奇跡に挑戦して居る訳だ。
「全く……こうなると、時間の関連もしっかりと魔法に刻まねばならないのか。更にややこしい式になるだろうな」
今でもまともな式も解も無い状況。其処に来て更に難易度がポーンとハードル二つや三つは軽く上がったのだ。渡の頭も痛くなると言う物だ。
とは言え、渡も渡の家族もこの話で確りと理解したのは、今やって居る事は無駄では無いだろうと言う事。
何せ渡以外にも間違いなく異世界に渡った者が居る。その様な根拠があるのだから。
割とこの世界では、神隠しと言う名の異世界転移が起こっていそうです?




