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奇怪な話

 渡と隆治の決闘。

 そう言えば聞こえは良いだろう。だが、実際のところを言えば子供と大人の殴り合い以上の差が有る。

 具体的な事を言うと、隆治の強さを異世界で考えれば、駆け出しの冒険者にも届かないレベルだ。何せ彼方は魔法や魔力がある世界。

 当然ながら、生まれてから体を動かす際に当然魔力を微量ながらも使用している。そう、体のつくりが最初から違うのだ。

 とは言え、幼少時代であれば其処まで差は無い。何故なら体作りの為に制限が掛かっている。無茶は出来ないのだ、訓練するにしても、全力で暴れるにしても。


 だが、そんな魔力の使い方を、渡は師匠から徹底的に叩き込まれた。幼少期の頃からだ。

 体を壊さない程度のラインを見極めながら、体を動かさずに魔力を使う方法を叩き込みながらと、あの手この手で。

 ゆえに、先程の例えは訂正した方が良いかもしれない。大人と子供では無く、人間の子供と大人のドラゴン程に違いが有ると言っても良い。


 では、この決闘如何成立させるの? と言う話。

 それは、渡が全力で手加減して全力を出す……うん、何言ってるんだ? と頭を疑うような真似をする事でソレが可能となる。


 なんて事は無い。渡のやって居る事はと言えば、己に対して魔力で枷を嵌める。それだけだ。

 筋力に作用する魔力や魔法に使う魔力を封じ、さらにはデバフを自分に掛ける。これにより、渡は此方の世界へ適応した状態へと落とし込む事で、全力の手加減を実現化させたと言う訳だ。


 ただ、鍛え抜かれた体と言うのはそれでも健在な訳で……。


「キェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」


 叫びながらの一足飛び。一瞬にして渡の懐へと隆治は入り込み上段からの一閃。

 しかし、幾ら自分のスペックを落としたとは言え、異世界で戦い抜いた渡だ。その剣閃を見誤る事は無い。


「〝流掌撃〟」


 本来であれば、魔力で敵の攻撃を流す掌底の一撃。だが、今回はただの掌底だったりする。

 それが隆治の木刀に触れ……メキッと言う音を響かせた。


「え? だ、大丈夫なの?」


 ギャラリーである家族達に不安がよぎる。よもや渡の腕が折れた音では? と。

 しかし、驚愕といった顔をしているのは渡では無く……隆治だ。


「……木刀が掌底で折れるとか、どんな鍛え方だよ」


 最高速かつ最強の一撃と言っても良い攻撃だった。

 とある時代においては、絶対にその一撃を受けるなと言われた剣撃だ。……というか、そんな一撃を試しで放つなよと言う話だが。

 とは言え、そんな驚きは一瞬。隆治は自分の感覚が間違っていなかったのだと、更なる高みが有ったのだと理解し、思わず笑い始めてしまう。


「はは、あはは、はははははははははは! 最高じゃないか! おいおい渡どうやってそんな力を身に付けたんだ!?」


 その笑みは喜びからか楽しいからか。恐らく両方だろうか。何はともあれ、隆治の中で何かの思いが完結したようだ。

 しかし、そんな隆治とは違い、渡の方はと言えば少し悩まし気な表情。さもありなん、何せ力を手に入れた方法など説明出来るはずが無い。

 いや、紬の兄だ。ソレはもう家族みたいなモノ。ならば、紬の両親も同時に異世界について、カミングアウトするのも悪くないかもしれない。しかし、秘密を抱えるモノが広がれば広がる程、秘密と言うのは秘密でなくなり、何処から漏れるか解らない。


 さて、どうしようか? と悩む渡に、紬が少しだけ首を横へと振った。

 彼女からしてみれば、今の兄のテンションでは教えれない。両親だけならまだしも、この兄であれば徹底的にその力を解明しようとするだろう。


「む……もしや、言いたくないと言うか言えない感じか。ソレなら仕方ないが」

「申し訳ない。まだ色々整理がついてなくて」

「なら仕方ないかぁ……もし話せるようになったら教えてくれ!」


 ただ、どうやら隆治にも配慮という考えはあるようで、今は聞かないと言う選択を取った様だ。

 これにはホッとする紬。しかし、そんな紬の反応を紬の両親は見ており、「あぁ、紬は何か知って居るんだ」と察してしまう。

 ただ、紬が話せるような事であれば既に自分達へと告げているだろう。そう考えた両親は、渡や紬が自分から話してくれるのを待つことにした。




 正月になにしとんねん! と言いたくなるような決闘騒ぎだったが、誰一人怪我をする事なく終わり、此処からはどんちゃん騒ぎだ! と、お酒やら食べ物やらを用意して行く。


 そんな時、ここでもまた爆弾男と言っても良いかもしれない隆治が更なる爆弾を落とした。


「あーそう言えばな。渡が居なくなってから強さを求めた俺だが、別に肉体的な強さ以外にも色々と調べたのさ。情報もまた力と言うだろう?」

「確かにその通りだが。隆治君、君の顔を見るにあまり面白い話では無さそうだね」


 修一の言葉に対してその通りと頷く隆治。そして、口を開き紡いだ言葉が……。


「どうやら渡以外にも、突然消息を絶った子供の事例などが数件あった。それも、渡が居なくなった当日に」


 どんな伝手を持っているのか、隆治は飛んでも無い情報を手に入れていた様だ。

お兄さんの剣術は一撃に全てを掛けるモノ。

そして、そんなお兄さんは割と物分かりも良いようで……ただ、大量のダイナマイト的存在でした。

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