エイリアン
ラテン語で〝余所者〟や〝異人〟を意味する言葉エイリアン。
某映画が有名になった為、地球外生命体的なニュアンスで覚えている人も多いだろう。
そんなエイリアンだが、地球に居るの? と聞かれたらノーもしくは見た事が無いと答えるのが一般的。
ただ、受け狙いや何かあっただろう人は、見た事がある! 俺、昨日どこそこで見たぜ! なんて答える人も居るが。
さて、そんなエイリアンだが、居るかどうかと言われたら実際は解らない。
何せこの広大な宇宙だ。もしかしたら? というロマンを語りだせば限がない話。なのでソレは割愛するとしよう。
ただ、其処で気になるのは、異世界ではどうなのだ? と言う事で、紬達もまた映画を見た事によりふと思ってしまったのだろう。
渡に対してどうなの? と軽く話を振ってしまった。……それが失敗だと知らずに。
「あ……あぁ、あいつ等か。あいつ等は実に面倒な奴等で……」
と、何やら不穏な空気を漂わせながら、紬達の質問に答え始める渡。
そんな渡の態度を不安を感じつつも、既に質問してしまったのだから最後まで聞くべきだろうと、ゴクリと生唾を飲み込みながら渡の語りに耳を傾けた。
そして出てくる、なんとも言えない事実の数々。
「奴等は幾つかの種族に分かれているというか、それぞれ違う星から来たのだろうな。全く見た目も姿も違うし、当然思考なども異質な者だって居た」
見た目がグロテスクなのに友好的なモノ。見た目は近しいのに絶対に相容れない者。様々だったな……と言う渡だが、それだけなら渡の醸し出してる空気は説明がつかない。
絶対何かがあったんだ! と確信をする紬達は、渡が次に続ける言葉を待った。
「でだ、マシな部類……部類なのか解らんが、中にはスライムの先祖では? と言われる、粘着系の者達が居てだな」
異世界では、ヒューマンスライムなどと呼ばれていて……まぁ、現地人に溶け込み、現地人と繁殖し、現地人をキャトっちゃおう! なんて考えている奴等だ。うん、全ては繁殖の為に!
そんな訳で、攫われて種馬及び苗床にされる運命という以外、危険度自体は低い異星人と言う事になる……が、攫われる側からしてみれば碌でもない話。
「危険度で言えばこいつらか? こう、凄く小型の奴等でな。蝉の幼体みたいな姿をしているのだが……これがまた最悪な奴等で……」
人体の穴から入り込み、人に寄生し、最終的には乗っ取りを行うと言う悪魔のような存在だ。
そんな内容を抑揚のない声で告げる渡。
そして、異常とも言える内容の話を聞いた紬達は、思わずと言った具合に自らの体を抱きしめた。まぁ、恐怖しかない話だし。
「ね、ねぇ。それって地球には居ないよね?」
「ん? あぁ、俺が見た感じそいつらは居なかったな」
「そいつら〝は〟!? って事は、他の者が居るって事!?」
「すまん。言い方が悪かったな。エイリアン自体俺は見てない」
言い直した渡の言葉にホッとする一同。まぁソレもそうだ。そんな、人を乗っ取る存在が居ると聞かされた以上、他にもそのようなタイプのモノが居ても可笑しくは無い。
そう考えれば、昨日まで親し気に話していた人が、実は今日既に乗っ取られていました……なんて事を考えてしまうモノだ。
それに、異世界には異星人が襲来して居たとなれば……当然地球でも? と思ってしまうのは人なら当然の話。
「ま、居ないと良いな」
「全く、本当にその通りだよ」
正直、居た場合はどうしようもない話では無いか? と思ってしまうが、渡が居るこの付近であれば大丈夫だろう。
何となくそう考え、不思議な安心感を覚える紬達であった。
魔力がある世界だからでしょうか? 宇宙間の移動が出来るようですよ? ただし、宇宙人側にのみ。
とは言え、そんな宇宙人たちはどちらかと言うと漂流者的なモノで、宇宙に戻る事が出来ない者達。
ただまぁ、エイリアンの語源を考えると……渡もエイリアンなんですよねぇ。異世界人にとって。




