こいつはどえらい
シミュレーションではなくリアルな渡の技術である。
何が? と言う話だが、今、渡が、家族の前で魅せている魔法の一つにより起きている現象。これがまた、実にその異常性と共に他人様には見せられないと言う事。
それは一体どんな魔法ですか?
「と、まぁ、これが錬金術だな」
「うわぁ……リアルな錬金術が見れるなんて! こう、代償とかは無いの?」
「代償? そんなものは必要無いのだが」
元々、渡の錬金術と言うのは鉱石を弄ると言うよりも、薬や何かの中間素材的なモノを作る。そんな技術であった。
それが……此方の世界に戻って来てから、理系のモノを学び、その際目にした元素配列やら構造に結合など、軽く本などからリードしただけなのだが……それの軽くが渡の錬金術に改革をもたらしてしまった。
一番解りやすいのは何かと言えば……まぁ、炭をダイヤモンドにしてみせた処だろうか。
ちょちょいと魔法を使って構造を弄り、更に魔法を使って整えてやればあら不思議と言うやつだ。
因みに、この結果に一番驚いたのは渡だったりする。
何せ、炭とダイヤモンドが一緒だなんて異世界では、解らないというか教わる事すらない話だから。
「しかし、これまた表に出せない技術だよな」
「えー……コレでお金持ちに! と思ったんだけど」
「……母さん、ちょっと宝石に目が眩んでない?」
魔法の時点で色々とお察しだった訳だが、こうして目に解る形でモノを作り変える事が出来るなど、より危険が大きい話だろう。
それこそどこぞのお偉いさんが、金を採掘できる場所でこっそりと渡に金を作らせる。なんて話になっても可笑しくない。地球の金の価値が一気に変わってしまう話だ。
「ん? まて、よく考えたら元の物質に無いモノは作れないんだよな?」
「あぁ、試して無いけど無理だろうな」
「と言う事は、此方の世界でミスリルとかは……」
「……ノーコメントとしておいた方が良いか?」
あ、その態度と言う事は作れるのではと察してしまう一同。
と言うのも、家族の言うミスリルと渡の知っているミスリルが同じ物なのかどうか別として、渡の知っているミスリルであれば、銀と魔力とちょこっとした素材が有れば作れてしまうからだ。
まぁ、ソレを作るには相当な技量が必要なのだが……渡に関して言えば師匠に仕込まれていたりする。
沈黙。
そして、時は動き……渡が口を開いた事で沈黙は破られた。
「あー……とは言え、モンスターなんぞいない世界だからな。ミスリルなんて作っても意味が無いぞ」
「ん? それはどういう事かな」
「アレはモンスター特攻や魔法の補助に使う金属だからな。何もしなけりゃただの銀だ」
なので、事此方の世界では全く意味が無い金属だぞ。そのように説明する渡。
だが、この説明は実を言うと不十分だったりする。何せ、魔法の補助とは何か? と考えた際、金属を修繕する魔法を使ったら? その場に置くだけで、軽く回復効果のある魔法を付与したら? さて、ソレは此方の世界でも意味が無いと言えるだろうか。
寧ろ世界が狂うと言う意味しかない。
とは言え、そんな発狂しかねない事など言えるはずも無く。渡はふんわりとした言い方でお茶を濁したと言う訳だ。
「ただ、俺自身もこれ程錬金術に現代科学が通用するとは思わなかったが……」
「いや、もうそれ科学の領域を超えているよ」
などと話しつつも、此処だけの事だから思う存分楽しもうと言う空気になる。
そして、渡の誤魔化しもあってか、ちょっとした魔法実験はほのぼのとした流れで終わる事となった。
混ぜるな危険的なお話。
軽く齧った程度でこれなら、徹底的にやったらどうなるのだろう……と((((;゜Д゜))))ガクガク
あ、この実験は周囲に確りと配慮をし、両親監修のもとひっそりと静かにやっております。




