いったい此処は何処なんだ?
話は帰還の時から。
「ここは……何処だ? 確か俺は狭間のダンジョンに潜っていたはずだけど」
いつの間にかに知らぬ土地へと飛ばされていた。そう感じる少年。
「えっと、この先に見えるのは街で良いんだよな? なんか、すっごいでかいモノが沢山並んでいるみたいだけど……こんな国は何処にも無かったよな」
自分の置かれた状況を必死になって探るが、答えが見つかる気配など一切無い。
何故なら此処は彼の知る世界では無いから。
「いや……何だか懐かしい気もするから知っているのだと思うけど、一体何処で見た光景だ? っと、とりあえず周囲に魔物の気配は無いし、人里へと向かうのに武器を持っていたら国次第では捕まる可能性もあるか……装備品は空間魔法で仕舞っておくとして、とりあえず一般的な服を着てからあの巨大な建物が並んでいる場所へと向かうか」
武器を持たずに移動するのは危険だが、彼にとっては武器を持っていても持っていなくても実はそこまで問題では無い。
そもそも武器を持つのは、彼が接近戦で返り血を浴びないようにするため。実際は格闘戦もこなせるし、そもそも彼には魔法が有る。
武器などは……言ってしまえば見せかけだ。バカ達に対する牽制用とも言える。
「さて、旅人用の服装と言えばこんな感じか?」
そう言いながら彼が着たのは中世時代の行商人と言った感じの物。ぶっちゃけ、現代人が着ていればかなり浮いてしまうのでは? と言える。いや、もしかしたらコスプレとして捉えられるかもしれない。
しかし、この少年にソレを考慮しろと言うのは無理な話である。何せ、この世界の事を全く知らないのだから。
そして、そんな人物が街の中を常にリアクションしながら歩けば……不審人物にも程があると言うもの。
当然だが、彼は警察に職質を受ける結果となった。
「あー、其処の君少し良いかな?」
「縺ッ縺??∽ス輔〒縺励g縺?°?」
「あれ……えっと、どこの言葉だ?」
「縺ゅl?溘??騾壹§縺ヲ辟。縺??縺銀?ヲ窶ヲ縺ゥ縺?@繧医≧縲」
警察からコンタクト。ただ、彼には警察官の言葉が理解できている様だが、彼の話す言葉は相手に通じていない。
「英語やドイツ語でも、何処かの方言でも無さそうだし……どうしよう」
あわあわと慌てている警察だが、ソレを解決するなど出来るはずも無い。なぜなら、少年が使って居る言葉は異世界の言葉だから。
なので、どう考えても言語がバグって聞こえ、この世界の何処を探しても通訳が出来る人物など居やしない。
そして、少年側もまた同じように困り果てている。
言っている内容は解るが、自分が伝えたい事を伝える事が出来ないのだ。困らない訳が無い。
なので少年は、警察官の動かす口、舌、頬の動き、風の揺れなどを観察した。そうすれば、もしかしたら話し方を真似出来るのでは? と考えたからだ。
そして、その試みは成功する。
「a-アーあー……これ、だいじょうぶ?」
「あ、日本語を話せるのかな、これなら会話が出来そうだ」
「えー、なん、とか」
ただ、まだ慣れないのか少したどたどしい感じではある。しかし、先ほどまでの意味不明な言語に比べれば、警察官としてはマシと言える状況だろう。
「それで、君はどこから来たんだい?」
「わからない、知らない間に、此処に居た」
「む……それは事件性が有りそうだな」
よもや誘拐か!? と、警察は訝しむ。それはそうだろう。突如として知らない場所に来たと言う未成年の子が居れば、思い当たるのは誘拐か家出だ。
そしてこの少年は、最初訳の分からない言語を使っていた。であれば、家出よりも誘拐と言う可能性の方が高い。
「とりあえず私に着いて来てくれるかな? 色々とお話しをしながら君がどこから来たかを考えよう」
「わかりました」
警察官の言葉に対して素直にうなづく少年。だが、彼は何となくではあるが解っている。きっと、自分が元居た場所には戻れないだろうと。
日本の様で日本では無い世界。
色々技術とかの発展が違うので、法律などもまた違う部分が有ったりすると思っていただければ。
ま、細かいところはスルーでと言う事で。