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界渡りって何?

 うーむ……と思案顔の渡。

 そんな渡の手元には、見た事も無い文字列や図式で溢れたノートが開かれていた。

 そして、それを見た紬はこれは何ぞや? と思い、その疑問を素直に口に出した。


「ねぇ、ソレは何だい? 僕、そんな文字や図形なんて全く見覚えが無いんだけど」

「うむ。これは魔法に関しての研究と言ったモノだな」


 ふむ……一体君は何を言っているんだ?

 紬の思考は其処でフリーズ。それもそうだろう。何せ、魔法に関して勝手に使わないと約束したのだから。

 しかし渡は、今まさに魔法についてのアレコレを手掛けている訳で。


「君はなにをしとるかぁぁぁぁぁ!」


 紬が解凍された瞬間に噴火するのも、また当然と言えるだろう。


 しかし渡は動じない。

 それもそのはずで、渡は異世界において海千山千といった貴族と言う名の、化け物依頼者相手に立ち回った事も有る。

 であれば、たかだか同年代……それも、平和な世界で暮らしていた女の子が激怒した処で、一体どれだけ心が揺れ動くだろうか。


 そんな怒っている紬を相手にしても、心穏やかとも言える渡は自分がやって居る事は必要な事だと、冷静かつ淡々と説明をしていった。


「落ち着け。コレは何をおいてもやる必要が有る事だ」

「は? 魔法だよね? それって勝手にやらないって約束したと思うんだけど……うーん、でも絶対必要ってどういう事?」

「そうだな。何分コレをやって置かねば不測の事態が起きた時に困る」


 この不足の事態と言うのは、過去に渡がその身で体感した神隠しの事。

 一度有った事だ二度目が無いとも限らない。そして、その時異世界に招かれるのが渡とは限らない。


「これは……僕だけでは判断出来ないかな。うん、皆で話し合おうか」

「ふむ、確かに皆で話す必要はあるか……」




 そして始まる家族会議。

 若干一名ばつの悪そうな顔をしているが……その者自身は渡と未だに上手く話しが出来ていない武。まぁ、そのこと自体は武自身の気持ち次第。なのでこの場では割愛。


「紬ちゃんから聞いたけど、渡の言ってる事は理解出来るけど……でも、勝手にやらずに相談はして欲しかったかな」

「奈々の言うとおりだな。渡何故勝手に始めたんだ?」


 両親による渡への設問。

 確かにコレは相談するべきだった話で、渡もまた少し焦って開始しすぎたか? と考えた。

 なので、渡は素直にそのことについて謝罪。そして、そのままその魔法についての話をしていく。


「界渡りの魔法と言ってな。これは師匠が長年研究していたそうなんだが、全く研究は進んで居なくてな……」


 界渡り。世界を渡る事で、自分の力で神隠しを再現しようと言う話だが、まぁ、普通に考えてその実験が完成する訳が無い。

 だが、完成してないとは言った処で、不慮の事故で異世界に行ってしまった場合、渡であっても再び戻って来られると言う保証は無い。

 だからこそ研究をするのだ。


「古来より神隠しと言うモノは有った。しかし、その内容は自然の災害や獣に襲われた事で遺体が見つからなかったと言う事、またはどこかの国に拉致された可能性……なんて話もあったが、実際に異世界へ行くなんて事例が有ったとはなぁ。そう考えると確かに必要な研究と言える」


 うーむと頭を抱える父の修一。

 実際に、異世界へと連れていかれたなどと言う話は、神話や御伽噺の頃より言われてはいた。それこそ、浦島太郎の竜宮城、輝夜姫の月、それこそ高天原や黄泉平坂なども異世界と言えば異世界と言えるだろう。

 違う世界。それは古来より人の心に住み着くロマンなのかもしれない。


 しかしだ。その異世界が実在した! となれば話は別。

 しかも、その世界は生命の危機がこの世界よりも厳しい訳で。


「しかし、ソレを渡が使えるとしても渡だけが使えるのではどう仕様も無いだろう?」

「うむ、だからその為に全員にマーキングを付ける魔法も同時に使う予定だな」


 位置を理解する為に使うマーキングの魔法。コレは、異世界において貴族がその子供達に、国が犯罪者や奴隷に対して使って居た魔法。

 それ以外にも敵を故意に逃がした時、マーキングをし敵の本拠地を割るなどと言ったモノにも使われていた。


 そして渡はこの魔法を誰かが異世界に飛ばされた時、一早く察知する為に使うつもりの様だ。


「ふむ……GPSみたいな物か」

「じーぴーえす?」

「グローバル・ポジショニング・システムと言ってな、こう宇宙に衛星……まぁ、とてつもない程の上空に疑似的な目を作り位置などを把握するシステムだ」

「なるほど……確かにマーキングの魔法みたいだ」


 異世界帰りでモノを知らない渡の為に、修一はかなり内容を端折りながらも解りやすく説明。

 そして、渡は此方にもマーキングの魔法みたいな物が有るのか……魔法も無いのにと、割と不思議に思っていたりする。


「ま、ソレは今関係無いから今は良いとして、その〝界渡り〟の魔法はどうにかなりそうなのか?」

「それが流石に難しい。師匠すら答えを見つける事が出来なかった技術だから……ただ、師匠と違い俺は実際世界を渡ったし、渡る際に潜った扉も確認して居るからな」


 だから、師匠よりもこの魔法に対しての答えにたどり着く可能性は有るはずだと、渡はやってみせると宣言した。


 ただ、この魔法が完成するかどうかは現状不明である。そして、完成した処で使う事が有るかどうか解らない。寧ろ使わない状況である方が良いだろう。

 しかし保険は必要だと言う事で、渡の家族は渡に対してバレない様にしつつ、可及的速やかに魔法を完成させる努力をする様にと告げるのであった。

界渡りは絶対に必要な技術でしょう。

そもそも、神隠しなどを封じる事が出来れば一番良いのですが、それをやろうと思ったとしても世界を渡る技術を調べなければ出来ないでしょう。

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