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Wish You were here

作者: 流音

Wish You were here.~君がここにいてくれたなら~

“君がここにいてくれたなら”。

なんて、そんな幼稚なこと。そんなこと今更思わないけどさ。

雪の日が近くなると妙に感傷的になって駄目だな。しかもその傍にいて欲しいと思ってしまう人の名前が、「ユキ」。自分でも呆れてしまう。こんな感傷に浸る趣味があったのかと。

ユキとは、「お別れ」を、した筈じゃないか。きちんと、あの日。

だから僕もこの先、ユキのことなんか微塵も思い出さないくらいにがむしゃらに頑張って、某有名商社に勤めて、重要な仕事も任されている。

それなのに。

クライアントとの待ち合わせまでに少し時間があったからと入ったチェーン型カフェで、早々とクリスマスソングなんか流しているから、不意にユキを思い出したんだ。

ユキは自分の名前の通りに雪の季節が好きだった。東北出身の僕等には雪なんてそう珍しいものでもなかったけれど、ユキは雪が降る度に子供みたいに大はしゃぎした。否、実際子供だったんだな。

あのままユキが大人になっていたらどんな女性になっていただろう?

…そう、言わずもがな、ユキは大人になることをせずしてあの世に旅立った。

肺炎だった。最初はただの風邪が長引いているのかと、「バカだから風邪なんか引くんだよ」なんて茶化していたけれど。まさか、だった。

肺炎なんてすぐに治る病気だと思った。けれどユキの病状はみるみるうちに悪化して、次の冬を越せずに、逝った。

僕はユキを思い出したくなくて、早くその地を離れたかった。そうして今僕は東京に居る。

三十路も近くなって、今更17の頃のことを思い出すなんて。本当に馬鹿みたいだ。

でもそんな日があってもいいのかも知れないな。…空からちらちらと雪が舞い降りてきた。都内では初雪じゃないだろうか。

たまにはお前のことも思い出してやるよ。な、ユキ。

スラリと伸びた手足に、真っ直ぐ伸びた黒髪。雪の女王なんてひそかに言われてたお前のことが、俺も好きだったんだよ。お前はどうだったんだ?ユキ。

「みっちゃん!」

大好きだよ、なんて聞こえたのは俺が感傷的になっているせいだな。

さあ、そろそろクライアントとの待ち合わせ時間だ。

いつもとはまた違ったテイストで書いてみました。

冬の、どこか切なさを感じていただければな、と思います。

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