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ぼくは雷様  作者: ふらののこ
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雷学校と虹

 雷と人間の間に生まれたカイは、いじめられっ子です。

 「ちび!」

 「にんげん!」

 「こぶ!」

 毎日、雷学校の子供たちにはやし立てられています。

最後の「こぶ!」というのは、頭のてっぺんにある一本の角が雷の子供たちの半分しかないからです。カイの小さな角をみんなで笑って「こぶ」と呼んでいました。

 「カイ! こっちこいよ」

 他の子より一回り大きな体をした北海道のエンが呼びました。カイが昔、北海道の人間界に住んでいたことを知っていて、よくしてくれるのです。

父親同士も仲が良く、カイの母親のこともエンは父から聞いているようでした。

「カイの母さんって、すげえ美人だったんだってよ」

エンは父親から聞いた話をよくしてくれます。中でも、カイを産んですぐに亡くなった母親の話を聞くのが好きでした。カイの父は母のことを全く話してくれないのです。父は人間の母と結婚したことを後悔しているのでしょうか。

 「悲しすぎて、話せないんだと思うよ。カイの父さんは母さんが亡くなった時、悲しみのあまり雲の中に閉じこもっちゃったんだ。それで山梨の国が干せ乾びて、心配した神様がカイの父さんを慰めにきたっていう話だよ」

 「神様が父さんのところに?」

 カイは驚きました。そんな優しい神様なら、カイを亡くなった母親に会わせてもらえないでしょうか。

 「神様に頼みに行ってみようか」

 エンはカイの心が分かったかのように言いました。

 「神様の国の入口は虹の先にあるんだって」

 エンは父親から聞いたことを言いました。

 雷学校の授業が終わったら、親が迎えに来る前まで時間があります。その間に皆で集まって雨を降らせればいいのです。虹の作り方も授業で習いました。

 カイは、他の子供たちが手伝ってくれるとは思いませんでした。ところが、あれほど口悪くカイをからかっていた雷の子たちが喜んで集まってきたのです。虹をみんなで作るのが面白そうに見えたのでしょうか。それとも母親に会いたがっているカイに同情したのでしょうか。

 「エン、学校の実験室から、太鼓もって来たぞ」

 一番カイをはやし立てていた長野のシンが協力的でした。シンは太っていて、巨大な大太鼓を一人で運べるほど力持ちです。

 「母さんと会えたらいいな」

 こんなことまで、カイに言いました。

 カイはうれしくて、泣きそうになりました。

 トン、トン、トトトン

 トン、トン、トン、トトトン

 子供たちが代わる代わる大太鼓を叩きます。

雨はなかなか降りませんでした。授業で習ったものの、実際に降らしたことはなかったのです。子供の叩く太鼓の音は小さく、リズムも合わず雨の拍子をなかなか叩けません。まして、虹が発生する拍子は難しいのです。

 カイとエンは、虹が発生しそうな場所の上空で雲に乗って辛抱強く待ちました。虹が出たら、すばやく下がっていくつもりです。

 黒雲の上で、子供たちが必死で太鼓を叩いている姿を学校の先生方や親たちが遠くから見守っていました。帰宅時間が過ぎて、迎えに来ていたのです。

 みんながあきらめかけた頃、勢いある大太鼓の音が聞こえてきました。シンが叩いているようです。リズムがうまく合っています。

 ドン、ドン、ドドドン

 ドン、ドン、ドドドン

 雨がザーと降り始めました。そして、七色の美しい虹が姿を現しました。

 子供も大人も歓声をあげています。

 カイとエンは素早く虹の下に行き、雲から飛び降りて虹を上りはじめました。けれども、徐々に色が薄らいでいきます。

 虹が消える瞬間、雷学校の先生が落ちるカイとエンを雲に拾いました。

 「勝手に学校の太鼓を持ち出して、雨を降らせてはいけません。今回は特別ですよ」

 女の先生が叱ります。

 カイとエンはしゅんとしました。

 「本当に神の国の入口は虹の先にあるのですか?」

 カイの父親がエンの父親に聞きました。

 「まさか。でたらめですよ。でも、見てください。みんな仲良くなったでしょう」

 カイを真ん中に、子供たちがはしゃいでいる光景がありました。楽しそうなカイの顔を見て、父親はカイを雷の国に連れてきて良かったのだ、とほっとしたのでした。


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