第86話:茶会当日
どもどもべべでございます!
ようやくパソコン届いたよー!
やっぱこれだわ~。かけるわ~。
という訳でご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~
植物を編み込んだ、いつものワンピースをドレススタイルに変更。
葉っぱの髪には、お花を咲かせてアクセントに。
薄い緑の肌は、水をよく吸って艶やかさをキープ。唇だって瑞々しさに溢れています。
最後に、フルーティーな香りを薄っすらと漂わせるよう体を調節して……うん、ドレスコードはバッチリです。
「というわけで、やってきましたピット国~!」
「随分あっさり着いちまったな……」
私とゴンさん、そしてノーデさんとキースさんは、それはもうあっさりとピットの地に降り立ちました。
最近ようやく完成したという、森を突っ切るような石畳の道。それは私達がかつて、初めてピットに出向いた時のルートを通っています。
これなら、ピットの皆さんが私達の元に気軽に足を運べるようになりますし、私達もこうして軽くピットに出向くことができるのですね~。ほんと、フィルボの皆さんのバイタリティには驚かされますとも。
『ふん、此度の一件、フィルボもまた本気で取り込んだようだな。国全体が祭りのようではないか』
「えぇ! 我らフィルボは楽しい事が大好きですからねっ」
ゴンさんがさもおかしそうに鼻を鳴らします。
森経由の裏門から入った私達の視界に広がったのは、国を上げての一大イベントでした。
「さぁ! 森の恵みを堪能しておくれ! ホーンラビットの香草焼きだよ!」
「森の管理者様が毒抜きした、コカトリスの野菜炒めはいかがかな! コカトリスってなぁほっぺが落ちるくらいうまいんだよぉ!」
「おぉっと、そいつにはこの葡萄酒が良く合うよぉ! ヒュリンから仕入れたエールは早い物勝ちさぁ!」
たくさんの屋台が並び、良い香りが辺りに漂っています。食事の屋台から、景品を用意したくじ引き的な屋台。果てはアルコールまで売っているじゃありませんか。
うぅん、活気に溢れています!
「あ~! ココナちゃんだ~」
「ここなちゃん~」
「クマだぁぁぁあああ!!」
「おぉっ、保育園のみんなではないですか~」
屋台の射的コーナーでは、すっかり仲良くなった保育園の子どもたちがパチンコ片手に私達に手を振っています。
うん、まぁこの世界、銃の文化なんてないですからそりゃもうパチンコでしょうね。射的があるだけでも驚きですけど。
「え……お前一応、偉いんだよな? なんで子供にあんなフランクな対応されてんの?」
「え? だってよく遊んでましたし~。ケイドロとか棒倒しとか」
私なんかは、世間樹経由であっさりとピットに来れますからね~。子どもたちの様子を見に行きがてら、遊んで帰ってから森の管理に戻るなんて容易いのです。
みんなと遊んだ日々は、つまりみんなが成長する姿を見守れる時間。子供の変化を見に行くのは、私の楽しみの一つで――――
『ほう……つまり、我に隠れて仕事をサボっていた時間があったのだな』
「…………」
おぅ、のう。
『ちんくしゃ。後で話がある』
「え? それって愛の告白的な……?」
『事ここにおいてその勘違いが出来る貴様には感心を通り越して畏怖すら覚えるわこのたわけが!』
「ぎゃん!?」
おおおぉぉぉ、デコピンがもろに額にぃぃぃ!
ゴンさんの指っていうか爪、面積広いからデコ全体を衝撃が襲うんですよね! めっちゃ痛いです!
流石の私も、脳に近い部分に危機を感じる打撃は気持ちよくありませんとも。これはゴンさん、効果的なお仕置きを日々研究していますね?
……ん? でも、ぶっちゃけドライアドである私は全身植物な訳ですから、脳とかありませんよね。多分この体全体でものを捉え、考えている訳で。
心和の感覚で考えていましたが、そうなるとデコピンだろうと脅威ではない訳で……つまるところ、この痛みはゴンさんが私の事を考えて編み出した一打と考えられる訳で……
「……うぇへへ……」
『むぅっ、もうこれにも順応してみせたか!』
「流石は管理者様! あらゆる苦痛をその身に受けてなお微笑む姿にこのノーデ、感動せずにはいられません!」
「とりあえず、子供らは向こうに行ってな? 今すっげぇ教育に悪いから。ほらあそこの屋台で飴ちゃん買ってきな」
「「わ~い!」」
「クマだぁぁぁあああ!!」
ハッ。私がトランスしている間に、キースさんが子供たちに交換券的な物を渡して追いやってしまいました。
もう、色々遊びたかったのに。残念でなりません。
にゅにゅっと出来たたんこぶを取りむしゃむしゃしてダメージを回復している私をドン引きした目で見ながら、キースさんが言います。
「ほら、お前もあんまり油売ってないで、行くとこあるんだろ? 俺この国の事全然知らねぇんだから、あんまり脇道に逸れんなって」
「むむ、確かにそうですね。私達には大切な使命があるんでした」
『ふむ、それもそうだな』
私はゴンさんと見つめ合い、頷きます。
一分前にご褒美をくれたことで、私の集中力は研ぎ澄まされうなぎ上りですとも。これならば、目的を違えるという事はありえません。
なにより、このピットをキースさんに紹介するという大任も背負っています。その為にも、必ずなすべき事を成さなければ!
つまるところ……
「さぁ来てくださいキースさん、美味しいヤテン茶の屋台はあっちだとこのパンフに書いてあります!」
『入国時に持たされた羊皮紙が何かと思えば、気が利くものだ。ほれ早う行くぞ貴様ら』
「違ぇだろぉ!? この国の王様ん所行くんじゃねぇのかよって話だよ!」
はっ! そういえばそうでした!
いやでも、デノンさんの所に行ってたら良い茶葉が売り切れてしまう可能性があります。……でも、確かに挨拶は大事ですよね。いつもぷらぷらピットに出歩く感覚で来てました。
「では、ひとまず良さげな茶葉をキープしてから挨拶に行くということで~」
『全面的に同意しよう』
「黙れ茶脳のポンコツ共め! ノーデもなんか言ってやれ!」
「ふふふ、それには及ばないかと」
激高するキースさんに対して、ノーデさんはどこ吹く風の良い笑顔。
私とゴンさん、そしてキースさんすらも首を傾げている中、ただ一言お伝えします。
「我が王が、この流れを予期していないはずがありません。つまりは今頃、ご自身の足でこちらに向かっているはずです」
「その通りだよちくしょう……!」
私達の背後から、声がかかりました。
振り返ると、そこにはげんなりした顔で私達を見上げるショタの姿が。うんカワイイ。
「デノンさん、何故こんな所に~」
「今しがたノーデが全部説明しただろうが! あんたらが屋台見て暴走するのは明らかだから、先手打って迎えに来たんだよ」
「『え~』」
「子供か! ほら良いから行くぞっ。もうネグノッテ女王も来てんだから!」
むむむ、ねーちゃんも来てるんですか?
それだと、確かに今からでも行った方が良いかもしれません。しかし、ヤテン茶が飲めないというのも残念な気分です。
『ふん、面倒くさい会合など貴様らだけでやっておけ。我は茶会の時までエルフと顔を合わせるつもりはない』
あっ、ゴンさんズルい。
そういって自分だけ、屋台のヤテンを堪能しまくるつもりですね!
それだったら、私だってこの場はキースさんに丸投げしてヤテン茶を……
「ここだけの話、一番品質の良い茶葉は客人用として、城で管理してたりするんだが……」
「何してるんですかキースさん、行きますよ!」
『まったくだ。会合に顔を出すのは、上に立つ者の嗜みよな』
「お前らの手首って超高速回転式なの?」
うぇへへ、良いお茶もといねーちゃんに会うのも久しぶりですね。
ヤテン茶もといねーちゃんに会うのが、今からヤテン茶楽しみですともヤテン茶。
「流石です、我が王」
「今既にもう、胃が痛いわ……」
さて、私達はこうして、デノンさんのお城に足を運ぶことになったのでありました。
まぁ、お城って言っても、見た目は一番豪華な木製の御屋敷なんですけどね~。