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ドライアドさんのお茶ポーション  作者: べべ
第6章:「ドライアドさんと日常生活」
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第83話:小さい秋

どもどもべべでございます!

さて、今回で章を畳み、次からお茶会ですとも!

どうぞ、お楽しみにー!

 

 ノーデさんを手に入れてから、少しだけ時間が経ちました。

 エルフとのお茶会に向けての準備も、ラストスパートといったところ。ピットも、私たちも、持てるアイディアの全てを突っ込んで行きます。

 何故か私のアイディアは全て却下されましたが、そこはそれ。より良い内容になる筈なので、必要な却下だったと思いましょう。

 そんなこんなで、時間が経ち……。


 恵みの季節です。

 あ、火事が多いという意味ではないですよ? それはめ組です。

 ずばり、秋真っ只中だと言うことですね。森の木々はお茶会に向けておめかしムード。ナンパでもされたのか、真っ赤に染まって初々しいったらありゃしません。


 中にはツンデレなレディ(栗)、甘いマダム(柿)、毒々しいヤンデレさん(きのこ)もいらっしゃいます。これぞ、秋の風物詩。


 そう、きのこ。

 きのこです。


 ピチョン、と、水滴が落ちます。

 秋には肌寒さ重点な、日の当たらない空間。秋の夕日に照るもみじすら見えない、岩いわ岩のオーシャンビュー。


「つまり、私は今洞窟にいるのです!」


「いや、まぁ俺が呼んだんだけどな?」


 そう、秋と言えばきのこ!

 きのこと言えばキースさんです。なんのかんの、ぶつくさ言いながらも真面目に頑張ってくれていたようで、ついにきのこが豊作になったみたいですねー。


「というわけでキノコですよキースさん! きのこっきのこっ」


「あーうん、そのきのこについて、話があるわけよ」


 ホワイ?

 改まったようにそんな事をおっしゃるなんて、何かしらのトラブルでもあったのでしょうか。

 やっぱり洞窟内では駄目だったとか?


「いや、生えたには生えたんだけどな……」


 そこまで言って、キースさんは原木地帯に向けて足を運んでいきます。

 この洞窟は、ゴンさんが寝床にしていた場所、山賊の盗品(時効)を詰め込んだ空間。そして、最奥の広場があるのですが、そこに原木を敷き詰めてるのですね。

 ちなみに、ゴンさんぐるみは盗品を置き場に結界を張って封印されていました。ガッディム。


「ん〜? ホントに生えてるじゃないですか。特に問題無いのでは?」


 ある程度奥まで進むと、きのこが生えているのが見て取れました。

 進んでいくにつれて、そのきのこは数を増していきます。これは豊作の気配です。


「……気づいてないみたいだから、言っとくぞ」


 そんな私に視線を合わさず、ただ歩きながら、キースさんは言います。


「ここから、原木まで……まだ、半分近い距離がある」


「……」


 洞窟内のS字カーブをうねうね曲がり、その後、視界が開けます。

 その先は、パンデミックと化していました。


「……なんじゃあこりゃあ!?」


 キースさんが進んでいたであろう足元以外に、所狭しと生えまくっているマッシュマッシュマッシュ!

 え、原木まだ見えないですよ? その段階でここまでって……え、天井すらもきのこで敷き詰まってるんですが。

 手前には、収穫時に使ってくださいって渡しておいた編みかごが3つほど置いてあり、その全てがこんもりと埋まっております。


「あー、また生えてきてるからな……収穫が追い付かん」


「ひいいぃ、ちょっとキモい!」


「こちとらここ最近、きのこしか見てなくて軽く滅入ってるぞ……」


 さっきからやたら元気ないのはそのせいだったんですね!?

 そりゃあそうでしょう。こんなにもきのこを見つめ続けていたら、集合体恐怖症にでもなってしまいそうですとも!


「もう、原木までたどり着く事は不可能だと思っていいだろうな……きのこにまたきのこが生えて、壁みたいになってるんだもんよ」


「ええぇ……なんでまたこんな事に?」


「……お前、それ聞いちゃう?」


「はい?」


 ガシッと、キースさんに肩を掴まれました。

 そのまま壁に追い詰められます。あらやだ壁ドン? いや、今の状況だとキノドンですかね!

 目の前には、痩せりゃイケメン間違いナシの素敵フェイス。その瞳は半泣きになっており、声は少し震えています。


「明らかに、原木のせいじゃんかさぁ!?」


「!?」


「あの原木、お前がお茶作る時と一緒の作り方してただろ!? 絶対それが原因だからな!?」


 え、え、えぇと、つまり?

 私のお茶は、生命力を付与する治癒効果があります。

 その原理で、きのこ用の原木を作ったので……。


「きのこに生命力が付与されて、爆発的に増えたんだよ!」


「な、なんですって〜!?」


 まさか、きのこにまでそんな影響を与えるなんて!

 お茶にはしない原木だからと、油断し過ぎていました。まさか、洞窟がきのこで埋まってしまうなんて、誰が予想できましょう。


「……でも、これってそんなに悪いことではないのでは?」


「あぁ!?」


「い、いや、これでしばらくは食べるものにも飲むものにも困りませんよ! きのこパーティ出来ちゃいます!」


 そ、そうです。なんならピットに下ろしてもいいですし、食料問題を一挙解決できる事態なのでは!?

 つまり、私は悪くない! むしろグッジョブなのでは!?


「お前……それ、エルフにも同じこと言えるか?」


「え?」


「サイシャリィでも、お前……畑一面に、原木敷いてただろ?」


「……」


 あ、あわわ。

 あわわわわわわ。

 あわあわあわあわあわあわわわわわわわ!


「はぁ……はぁ……」


「今頃、サイシャリィではきのこが区画を埋め尽くす可能性が……」


「はぁ、はぁ……!」


「つんでもつんでも減らないきのこが、サイシャリィを埋め尽くす可能性が……!」


「はぁ、はぁ、んぐっ、はぁ……!」


 汗、いや、蜜が止まりません。息切れ動悸は、恋煩いでしか発生したことないと言うのに、今は完全グロッキーですとも。

 え、しかもこの事実を知った上で、お茶会あるんです? そこに、わたし出席するんです?


「あ、こちらにいらっしゃいましたか!」


 私が大いなる葛藤に身をくねらせていると、背後から声が聞こえてきます。

 そこには、満面の笑顔を浮かべたノーデさんが。


「管理者様! 例のお茶会ですが、日にちが決まりましてございます!」


「「!!」」


「それとですね、管理者様」


「ヒュー……ヒュー……!」


 あかん、息ってどうやってしてましたっけ?

 あ、私そもそも息、しなくて良かったような気も?


「きのこについて、色々と聞きたい事があったそうですよ?」


 あ、終わった気がする。

 きのこパンデミックをバックに、満面の笑顔でグーパンの準備してる、ネグノッテ様もとい、ねーちゃんが浮かびました。


「わ、私……その、その日は風邪ひく予定が! キースさん幹事役お願いしますね!」


「あ、ずるいぞお前! おい、管理者絶対参加だよな!?」


「いやいやいやいや無理無理。怒られるの怖いもの! 怖いんだものぉぉ!」


「おや、ピットでは最高級の茶葉を準備していたらしいのですが、そこは宜しいので?」


「行きます」


 はぁ! 思わず行く宣言してしまったぁ!?


「では、参加ということでお伝えしてきますね!」


 ノォォォウ!?

 私が止める間も無く、ノーデさんは洞窟の外に走っていきました。

 残されたのは、怒られ確定した私とキースさん、そしてたくさんのきのこ達。


「いや、俺は別に怒られるつもりねぇからな。一人で怒られてろ」


「嫌です! この際キースさんも道連れです!」


「てんめっ、ふざけんな! ただでさえお目あてのきのこちゃんが最奥に埋まって不機嫌なんだよこっちはよ!」


「ははぁん? さてはまたちょっと合法から外れたきのこ栽培しましたね? そういう奴は育たないよう調節したから望みなんてありません〜!」


「クッソふざけんな!? あの菌糸持ち出すのにどんだけ苦労したと思って……」


 結局、その後。

 私たちは、きのこを観客に大乱闘お茶っぱブラザーズを敢行。

 ゴンさんが来て、仲裁という名の無双をするまでの間、低レベルなペチペチ喧嘩を繰り返したのでありました。


 と、言うわけで。

 お茶会は、1週間後です!

 

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