第80話:小さな贈り物(上)
どもどもべべでございます!
やはり日常パートは楽しい。書いててドンドン心和ちゃんが変態になっていくw
そんなこんなでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~!
ノーデさんの朝は早い。
「今日もまた、こうして目覚めることができた事を、精霊様と管理者様、そして守護者様に感謝いたします……」
日の出と共に目を覚まし、信仰する3人に祈りを捧げるところから、彼の一日は始まるそうです。
実際、こうして見るのは初めてなのですよ~。うぅん、真剣にお祈りするノーデさん、カワイイ……!
「……?」
うわっと!
お祈りが終わって集中が切れ、視線を感じたのでしょう。ノーデさんが振り返ったので、私は慌てて窓から覗かせていた顔を引っ込めます。
日本家屋だから、ガラスが無いなんてナンセンスな事はありません。ちゃんとゴンさんが砂を解かして、窓ガラスを作ってくれていましたとも~。
「……ふむ?」
……どうやら、気付かれなかったみたいですね。軽く首を傾げたノーデさんは、そのまま身なりを整えて部屋を後にしました。
うぇへへへ、それじゃあ後は、このままバードウォッチングならぬ、ノーデさんウォッチングといきましょうかな!
小さなシルエットを追いかけるべく、壁伝いにふよふよと移動。途中で屋内に侵入し、いつもの屋根裏にパイ〇ダーオン! です。
どうしていきなり、こんなストーキング行為に及んだか、気になる方もいるでしょう。そんな思春期の貴方にお答えいたします。
ノーデさんの労をねぎらうために、一日張り付いて彼の欲しいものとかを探したいのですっ。
私がエルフの所にいた間も、欠かさずゴンさんのお世話をしてくれていたというノーデさん。そんな彼の心の癒しを求めない人がいるでしょうか? いや、いません!
是非とも、この素晴らしい働きに見合った贈り物をしてあげたい! そう思って行動しているのでした。
え? だったら休暇でも与えてやればいい?
いえ、それだと私達にお茶を淹れてくれる人がいなくなりますので。
「さて、今日からキース様もお食事との事ですし、張り切って作っていきましょうか」
ノーデさんが最初に来たのは、台所でした。
料理は私もやったりしますが、基本的にはノーデさんがやってくれてます。私の提案したレシピを的確に再現してくれるその実力に、ゴンさんも良い笑顔で頷いてくれていますとも。
「~♪」
水で手を洗った後に、前日から下拵えしていた具材のチェックや、材料の準備を進めて行くノーデさん。
……ショタの手に付着した菌なら、喜んで摂取するのに……。
『邪念を感じたから覗いてみれば、貴様かちんくしゃ』
「ピッ!?」
突如脳内に響いたブリリアントヴォイスに慄き、私は咄嗟に振り返ります。
そこには、大きな体を屋根裏に潜ませたゴンさんが。前々から思ってましたけど、よくゴンさんが屋根裏にいてギシギシなりませんよね。この家凄い。
『ご、ゴンさん、びっくりさせないでくださいよぉ』
咄嗟に念話でお返しします。そうしないとバレちゃいますからね。
『それはこちらのセリフだ。屋根裏から犯罪者特有の粘着質な気配を感じた故、よもや空き巣の類かと入り込んでみたら貴様がおったのだぞ? 少し遠出しただけではものの本質というのは変わらんと見える……』
『つまり、いつまでも変わらない君でいてくれて安心した、と』
『犯罪者特有の粘着質な気配、と我は言ったはずだが……』
あぁ、こうしてゴンさんとお話しするのは楽しい!
しかしいけません、今の私はノーデさん見守り隊のリーダー。ここでノーデさんの欲しい物を見つけないと、ストーキング行為をしている意味が目の保養しか無いです!
(……つまり……2人いれば、目の保養が倍に……?)
『何か言ったか』
我ながら天才の発想としか思えません。
そうです。ノーデさんを愛でつつ、ゴンさんとお話しできれば、このストーキング行為は日課にすらふさわしい清純的ドリーミンワークに昇華されるはず。
今度キースさんに自慢しよう。あまりの天才ぶりに彼も恐れおののくに違いありません。
そうと決まれば、私はゴンさんに自分の思惑を説明いたします。
この行為は決して自慰的サムシングではない。れっきとした市場調査であり、サプライズの為に仕方のない行為なのだと、涙ながらに熱弁しましたとも。
『ふむ……チビ助の日頃の労をねぎらう、か』
『えぇ、えぇ! ノーデさんに直接聞いただけでは、「お二人のお世話ができているだけでこのノーデ、毎日が幸福に押し潰されそうになるのを堪える日々にございますれば!」とか言いそうなんですもの。ここは是非、じっくりネットリぎんっぎんに付きっ切りで見つめ続けて、ノーデさんへの感謝を目で見える物にしようと思いまして!』
『世から犯罪が無くならない理由が何となくわかった気がするが、まぁいい。そういう事なら今回は不問としてやる』
『ひゃあ! ありがたいです! 流石はゴンさん!』
『ただし』
ゴンさんはビシッと私に爪を突きつけて威嚇してきます。その様子に私は、思わず怯んでペロリ
『つ、爪を舐めるなたわけ!?』
『ハッ、あまりに美味しそうでつい……!』
『外に出たらゲンコツだ』
『ありがとうございます!』
あぁ、全力で蔑みの視線を浴びせてくるゴンさん……!
ニャッポリート!
『とにかく、条件だ。厠や風呂を覗く事は許さぬ。よいな?』
『そ、そんな!? 全てを余す事無く見ねばノーデさんが真に欲しいものなどわかるはずもなく――――』
『そろそろ本気で引いて嫌いになるぞ』
『御身の御心の広さに日々感謝でございます!』
『よろしい。念のために我も同行する事とする。貴様だけではどのような暴走をするかわからぬ故な』
と、そんなお話をしている内に、下からいい匂いがしてまいりました。
もうそろそろ、朝ご飯が完成するのでしょう。そうなると、わたしやゴンさんを呼びに、ノーデさんがお部屋や世間樹の所にきてしまいます。
私達がいない事がばれたら、ストーキング行為ができなくなってしまう。という訳で、一旦ここでお開き。続きはご飯を食べてから、という事になりました。
うぇへへ……待っててくださいノーデさん。この心和、素敵な贈り物を準備してみせますとも~!




